森のかけら | 大五木材

20121105 1先日の『夢のかけらローラー大作戦』で、眠っていたかけらの在庫が久し振りに現れました。その中には、ただのB品(傷や虫穴、割れ、変色、加工ミス、欠損、収縮等)だけでなく、『森のかけら240』のリストから泣く泣く漏れたものもいくつかあります。それらの樹種については、今までにも何度かこのブログでも触れてきました。もうこれから新たにリストに加える事はないのですが、どうしても『モッタイナイ』感を割り切れずに、どうするつもりでもなくとりあえずストックしていたものも幾つかあります。

 

20121105 2今回の『夢のかけらローラー大作戦』では、そのかけらたちにも英断の鉈をふるいましたが、それらだけを集めてみると、1個1個ではそれほど魅力は感じないものの、10数個が集まるとそれだけで何やら「数の力」が現れてくるのか、不思議な面白さが生れてきます。例えば、この『杉の黒味』。初期の【森のかけら120】ではリストアップしていたのですが、240種にモデルチェンジした時にレギュラーの座から滑り落ちました。私のさじ加減ひとつではあるものの、戦力外通告を伝えるのは辛いもの・・・。

 

2012105 3せめてここで取り上げる事でお詫びに代えたいと思います。杉には、芯に近い部分の赤身と、その周辺の白身部分の辺材に分けらます。その混在する色合いの違いを、源氏と平家の旗の色に例えて、『源平(げんぺい』とも呼ばれています。私が【森のかけら】で加えたかったのは、その『源平』の杉ではなく、赤身は赤身でも、俗に『カラス』と称される真っ黒い赤身のかけら。赤黒い杉『カラス』は、雨の多い湿地帯や谷間に多く、鉄分が混じったような濃い赤黒色をしていて、その重さも鉄並み!

 

20121105 4乾燥しても普通の杉ほど赤身が褪めないのですが、一般的には見た目の悪さと重たさから建築材としては敬遠されます。ただしものは使いよう、ある地域ではこの強さに着眼して土台としても利用されています。また腐食に強いことからも船材としては重宝されます。これが、要らない時は沢山あったのに、いざ探すとなるとなかなか・・・。原木を挽きたての時は真っ黒でも乾かせるとどれもこれも、ちょっと濃い目の赤褐色になってしまいます。それで結局【森のかけら240】のリストからは外してしまったのです。

 

20121106 1昨日に続いて、『杉の黒味』の話です。【森のかけら240】のリストから外れたのは、思惑の黒味が揃わなかった事と、『』が複数含まれていてかぶってしまうからです。杉としては、ごく一般的な愛媛県久万高原町の『』、日本三大美林の一角『秋田杉』、埋没林の『神代杉』、世界遺産屋久杉』、高知の県木魚梁瀬杉(やなせすぎ)』の5つがあります。それだけでも、ちょっと「杉おお過ぎ」(!)かとも思ったのですが、この5つはそれぞれに特徴や物語が確立していてどれも外せません。

 

20121106 2それで『杉黒味』が泣く泣く落選してしまいました。上記の5つは、ある程度大きな材で見た場合その特徴は一目瞭然なのですが、『かけら』サイズになってしまうと、その差が分かりづらくなってしまうのは悲しいところなのです。『屋久杉』は小さくともその香りに特徴がありますし、『神代杉』は緑がかった灰褐色になっているので見た目で分かります。あとの『秋田杉』、『魚梁瀬杉』、『杉』については、それぞれのかけらを取った材次第、部位次第で材の質感、色合いがかなり偏ってしまいます。

 

20121106 3これは杉に限らずどの材にも言えることなのですが、常日頃から見慣れている材だけに、「これが秋田杉?」、「本当の魚梁瀬杉は違う」などと言われることもしばしば。梢から木元まで3,4メートルの大きな材として並べれば特長も分かりやすいものの、個性の強い材の場合、辞典に載っているような特徴が、35mm角の中に確実に現れるわけではありません。『杉の黒味』などは、かけらにしてしまうと色合いの美も重要感もうまく反映されません。黒く水を手にすくってみると、透明に見えるようなもの。

 

20121106 4それでも、色合いが淡すぎて落選したこの『杉の黒味のかけら』とて、こうして並べてみれば不思議な魅力を感じるではありませんか。【森のかけら】には、植物性オイル『オスモカラー』を使っていますが、杉にこの塗料を塗ると赤身部分と反応して赤紫色になってしまいます。それが数年の在庫期間でやや経年変化して独特な色合いに変化。これはこれで30個集めて『杉の黒味のかけら30』にしてしまうおうかとも考えたのですが・・・結局収拾がつかなくなるので『夢のかけら』の中で活躍していただく事になりました。




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