節分の日には、柊の小枝の先に鰯の頭を挿して小口に挿すという風習が有名ですが、これは邪悪な鬼や病魔を追い払う呪いとしての効果があると考えられていました。鬼は鰯の頭から発する悪臭を嫌い近寄らず、もし近づいたとしても柊の葉の棘で目をつつかれて、退散するというのです。平安時代頃から続く風習に起因しているということです。しかしそこから転じて、鰯の頭のようなつまらないものでも、信仰次第では尊いものに転じることから、皮肉を込めて使われる事もあります。
そういう事って世の中には沢山あって、突き詰めていけばその意味も現代においては理解できないものは沢山あります。今ではその存在は全国的にも有名になっている風習ですが、私は実際に鰯の頭を挿した柊を見た事はありません。ある調査によると太平洋側の近畿~関東地方で行なわれている風習のようです。恵方巻きもそうですが、情報が発達した現在、地方の風習があるきっかけで全国的に広がる事もしばしば。その際、そのゆわれや起源が置いてけぼりになる事も多々あります。
生活習慣もすっかり変わった現在、形骸化した起源の風習を今後も継承していくには、セレモニー的な要素も必要になってくるのかもしれません。私の知る限り、この周辺では『鬼ぐい』といって、棘のあるタラの木枝や柊の葉などを割り箸などの先に付けたものが主流だと思うのですが、いずれも匂いと棘による悪霊退散の思いが込められているようです。タラの木はウコギ科の落葉潅木で、全体にわたり鋭い棘があります。新芽の天ぷらは大好物ですが、美味しいものには棘がある!
ウコギ科には、【森のかけら】にも含まれる『栓(せん)』も含まれていますが、柊はあまりに小さくて『かけら』に加えることは出来ませんでした。柊については、先日の『イヨココロザシ大学』や『ふるさとの森林講座』の講座などでも、木の漢字の定番として必ず触れさせていただきます。木偏に春夏秋冬がついた樹木として取り上げているのですが、柊は歌謡曲のタイトルなどにも多い事からほとんどの方が読めます。やっぱりイメージの広がる木は身につきやすく覚えやすいものです。