森のかけら | 大五木材

真弓とマユミ①

★今日のかけら・E029【マユミ/真弓】 ニシキギ科ニシキギ属・広葉樹  別名:ヤマニシキギ(山錦木) 学名:Euonymus hamiltonianus

天下の名園・兼六園よりも、私にとっては金沢城の『本丸の森』の方がワクワクしてしまうのは、マニアックな木と出会えるから。まあ、何がマニアックなのかどうかは主観的な問題で、前日取り上げた『シンジュ(ニワウルシ)』にしても、主要分布が中部地方なので、こういう機会でもないとなかなか立ち姿に出会うことはありません。地域性という意味では、四国・愛媛も分布エリアに入っているものの、なかなかご縁が無くて出会いの少ないのがこのニシキギ科の落葉低木の『マユミ』です。

成長してもせいぜい3~5m程度ということなので、建築や家具の分野で利用されることはほとんどなく、小さな細工物(材が緻密なので最近では櫛や印鑑などにも使われるとか)に利用されるぐらいです。なので用材を扱った木材図鑑に載ることもなく、主に庭木や街路樹、盆栽など分類されてしまう木で、さすがにこれだと芯去りで【森のかけら】を取るのも難しいサイズです。地元でも庭とかに植えられているものを時々目にすることがあるのですが、なぜに金沢の地での出会いをわざわざ取り上げたりしたのかいうと、

このマユミという木には特別な思い入れがあるからです。もう9年以上にブログを書いていると、過去に取り上げたことがあるのかどうかすら記憶があやふやなので、以前にこの話は一度しているかもしれませんが、あえてマユミへの思いを書きます。私にとってのマユミは、樹木のマユミではなく、史上最強の一番打者として実に34本ものホームランを打って日本一に貢献した阪神タイガース真弓明信、その人です。真弓が阪神に来たのは、田淵・古沢との2対5の歴史的トレードでやって来た1978年の事。


当時、田淵の大ファンだった私にとっては大ショックな出来事でした。その数年前にはその田淵と黄金バッテリーを組んでいた大エース・江夏豊も南海ホークスにトレードで放出しており(阪神:江夏豊、望月充、南海:江本孟紀、長谷川勉、池内豊、島野育夫の2対4のトレード)、スター選手を情け容赦なく放出するフロントの体質に怒りを覚え阪神が嫌いになりそうになったものです。ちなみに田淵・古沢との交換要員は、真弓の他には若菜嘉晴・竹之内雅史・竹田和史。古沢憲司投手は、愛媛県新居浜東高校出身です。この話、明日に続く・・・

真弓とマユミ②

昨日だけでは書ききれなかったマユミ、いや真弓明信氏に関する思いについて。世紀のトレードは田淵ファンの私にとって非常に悲しいものではあったものの、阪神・西武の両チームにとってはそれぞれプラスに作用し、後にそれぞれ前チームでは経験できなかった日本一にもなっていますし、球団の顔として新たなファンも出来ました。真弓選手は、首位打者も獲得し、晩年は代打の切り札として活躍しました。引退後は、岡田監督の後を受けて監督も引き受けましたが、残念ながら監督としては芳しい結果を残せませんでした。

それでも1985年に、私にとっては阪神ファンになって初めての日本一を味あわせてくれた永遠のスターのひとりであることに代わりはないのです。そんな真弓氏が監督に就任した年、想像もしなかったスターとのニアミスがあったのです。監督就任の記念として、自分の名前にちなんでマユミの木を使った箸置きを作りたいのだけど、大五木材で作れないかという話が関西の会社を通じて舞い込んだのです。なんという僥倖~!!これはどうしてでもマユミを調達せねばと、当時かなり奔走したものの結局入手出来ず・・・。

泣く泣く断念したものの、その後もマユミとも真弓氏とのご縁もありません。こういう事が過去にあると、その後時期を外した頃に不意に出会いがあったりするものなのですが、不思議とマユミとはご縁がありません。材としての邂逅はないものの、立ち木で出会ったのも何かの縁なので、ここでマユミの木を振り返ってみます。漢字では『真弓』と表しますが、これは『古事記』や『万葉集』にも登場する古名で、昔はこの木で弓を作ったことに由来し、「まことの弓の木」という意味があるということです。

あるいは、秋になると果実が熟して割れ、中から赤い種子が落ちずにぶら下がっている様子が繭に似ていることから、マユ(繭)ミ(実)というのが由来という説もあるようですが、愛媛ではその様子を、巫女の鈴に見立てて、『ミコノスズ』と呼ぶ地域もあります。成長すると幹に縦の裂け目が入り、縞模様になって樹皮に特徴があるので、いつかもっと大きなマユミを見つけたいものです。弓になるぐらいなんで、材質はかなり緻密で弾力もあるしなやかな木ということで、いつの日にか材にも触れてみたいものです。




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