森のかけら | 大五木材

今日のかけらプレミアム032

チューリップウッド

 Tulipwood 

マメ科ツルサイカチ属・広葉樹・ブラジル産

学名:Dalbergia frutescens

別名:ブラジリアン・チューリップウッド

ピンクウッド、ジャカランダ・ローズ

気乾比重:0.96

フランス王室が愛した森の宝石・チューリップウッド

今日のかけらプレミアム019チューリップウッドTulipwood マメ科・広葉樹・ブラジル産

宝石のような木ばかりを集めた『プレミア36』の中においても、その美しさにおいて他を圧倒するのがブラジル産の『チューリップウッド』です。材木屋のはしくれとして、その存在は以前から知っていたものの、実際に手にしたのは【森のかけら】を作るようになってからの事です。昔風に言えば、銘木屋さんが扱っていた材のひとつで、建築・家具分野では縁の無い存在でした。「普通の材木屋がそんな場違いな木、持っといてどうするの?」いやいや、うちは普通の材木屋ではありませんから!

この『チューリップウッド』は、ブラジル北東部、パイア、ペルナンブコ州近辺に生育している木で、学名は『Dalbergia frutescens』。花の形が似ている事から別名『チューリップツリー』とも呼ばれる、北米産の『イエローポプラ』とは一切関係がありません。一般的には『チューリップウッド』と呼ばれていますが、頭に産地であるブラジルの名をつけて『ブラジリアン・チューリップウッド』と呼ばれる事もあります。他にもその色調から『ピンクウッド』や『ジャカランダ・ローズ』などの名で呼ばれる事もあります。

この木はねじれながら成長するために通直な材は少なく、杢目は不規則で大きな木は入手困難です。初めて目にされる方は、これが天然の色だとはなかなか信じてもらえません。その鮮烈な色合いと精緻な杢目はご覧の通りで、フランス王朝ルイ15世、16世にも愛され、王室御用達の木材としても知られ、18世紀の古典的な英国家具にも珍重されてきた歴史があります。木の色合いを言葉で説明することの困難さ、無意味さはこの木のためにある台詞のように思われます。

百聞は一見にしかず。まあとにかく手にとっていていただきたい!敢えて言葉で説明するなら、淡桃色の下地に、鮮烈な濃淡の紅色の縞模様が入っているといった感じですが、この自然の造形美の前には言葉が足りません。その美しさに魅せられたルイ15世、16世は、この木のグラデーションを巧みに使って、腕利きの職人に模造のチューリップを作らせ愛でたという事ですが、それがこの木の名前の由来ともされています。歴史上、どれだけ多くの人がこの木に惹きつかれたことでしょう。

ねじれて成長す事から、乾燥中に割れや反りが発生し、クラフト細工などに使用出来る部材にすらも限りがあるとされていますが、気長に自然乾燥で乾かせたのが幸いしたのか、結構コンディションの良い板が取れたので【森のかけら・プレミア36】と『森のたまご』、『森のりんごにも加工してみました。ヨーロッパ家具においては、その際立った色彩を活かして装飾的な象嵌細工や宝石箱、あるいは硬度を活かしマリンバなどの楽器にも利用されているようですが、産出量も極めて少なく、高価で大変貴重な木です。

その存在そのものが『宝石』のようなもので、ベルサイユ宮殿の家具や調度品にも使われ、高貴な方々の目も楽しませてきましたが、今やブラジル政府が出荷を規制しており、そう簡単には入荷できないレアな木となっています。その出口として、【森のかけら】以外に何かないものか探ってきましたが、色合いとともに手触りのスベスベ感も体感していただきたい要素のひとつです。どうぞ、遥かフランス王室の一員になったつもりで優雅な気分で『森の宝石』をご堪能下さい チューリップウッド』の『森のりんご』と『森のたまご』はこちらで販売中森のかけらオンラインショップ

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美の神に選ばれしチューリップ*

プレミアな木の出口商品として開発した『森のりんごですが、地味ながら少しずつ売れています。当初、そんな価格設定で売れるか!と呆れられたものの、『森のかけら』で培ってきた体験がマニア鉱脈の匂いを探し出すアンテナの精度を高めてくれたのか、最近大きなマニア鉱脈のすぐ傍にいるような気がして仕方ありません!そう思い込んでいるうちが花ともいいますが、基本的には楽観主義でなければものづくりなんて出来ないと考えています。悲壮感は伝染しますから。

その『森のりんご』は、レアで重量感があって、触感が滑らかな木を使って作るようにしているのですが、中でも一番人気があるのがこちらの『チューリップウッド』です。木の特徴や物語については、『今日のかけら』をご覧いただきたいのですが、詳しい事を知らない方でもひと目惚れしてしまうほどの強烈なインパクトのある色彩。まるで人工的とも思える色調とその触感にすっかりはまってしまい抜け出せられなくなってしまう人続出で、実は現在品切れ状態なのです。

当然機械で作っていくのですが、あまり1つの樹種ばかり偏るのもどうかと思い(かけらの王としては、どの木も公平に、かけらに貴賤なし!というのが大前提だと勝手に考えているため)、一度に同一樹種はそれほど大量に作っていませんでした。ところが販売を初めてみると、どうしてもお客さんの好みで偏りは出て来てしまうもの。結局、チューリップウッドばかりが売れるのです。そこで慌てて追加の準備に取り掛かっています。おが屑だってこんなに鮮やか!捨てられません。

何か塗っているのではと疑り深い人がいますが、これを見てもらえば分かってもらえると思いますが、カットした小口もご覧の通りピンク色!そもそも【森のかけら】のプレミアシリーズを作ろうと思って購入していたものなので、大きな材はないのですが、『森のりんご』を取るには充分なサイズです。仕上がりサイズに合わせてここから細かく割っていくのですが、当然なるべく無駄のないように細かく木取りを考えます。それでもどうしてもわずかな端材は発生します。

その端材の端材すらも捨てるなんて気分にはなれません。なにしろこの色彩美!私以外の誰の目にも留まらずこの世から消えてしまうなんてあまりに理不尽、あまりにモッタイナイ!スギやヒノキと見比べた時に、どうしてこの木だけがこれほど木の神さまの寵愛を受けたのか妬みたくなるほどの美しさ。いつもながら惚れ惚れしてしまいます。たっぷりと目で楽しませていただいた後は、加工に移ります。6月末頃には順次『チューリップウッドのりんご』が出来上がってくる予定です。




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