森のかけら | 大五木材

今日のかけら225

シルバオ

MERBAU

マメ科・広葉樹・東南アジア産

学名:Intsia bijugaおよびIntsia palembanica

別名:メルバウ、クイラー(Kwila/パプアニューギニア)、

イピル (Ipil/フィリピン)、太平洋鉄木

気乾比重:0.74~0.90

 

 

太平洋鉄木・メルバオとクイラー①*

今日のかけら♯225【メルバオMerbau マメ科・広葉樹・東南アジア産

別名はクイラー(Kwila)で、昔はこの木に着色した床柱があったのですが、とにかくやたらめったら重たくて、扱うのが嫌だった記憶があります。当時は、何か別の商業名もついていたと思うのですがそちらは失念しました。メーカーの人に、本来の木の名前はと尋ねると「クイラー」だと教えてもらったので、私の中ではずっとクイラーという認識でした。その後、和室の減少に伴い床柱の需要も激減して、クイラーの床柱を見かけることもなくなりました。あれだけ持つのも嫌だったクイラーの床柱も無くなってしまえば妙に懐かしく思ってしまうものです。

それから月日は流れ、【森のかけら】を作ることになって久しぶりにクイラーを扱う事になります。かけらにに使っているのは、昔加工ミスした床柱の一部です。かまぼこ型に加工した表面をガチガチにウレタン塗装で固めているのですが、そこに鑿を入れると、塗装面が弾けたりして使い物にならなくなってしまった床柱の欠品が残っていて、それを転用してかけらを作っています。なので日々かけらとしては目にしたり、触る事があるのですが、角材や板材としてクイラーに出会う事はすっかり無くなってしまいました。

【森のかけら】を作る際にいろいろ調べていたら、一般的にはクイラーではなくて『メルバオあるいはメルバウ)』の名前の方が浸透しているようで、全国各地の木材関係者に訊いてみても、多くの人が『メルバオ』で認識されていました。もの本によると、メルバオとは『マレー語地域におけるIntsia 属の樹種の総称』らしく、元来はIntsia palembanucaという樹種につけられている通称名で、それ以外はメルバオ〇〇などのように呼ばれていることが多いとありました。クイラー(Kwila)というのは、ニューギニアで使われる名称。

フィリピンではイピル(Ipil)と呼ばれるようです。それで、【森のかけら】を作る際に、日本では一般的に認知度の高いメルバオ(Merbauの方に改めることにしました(メルバウとも表示されますが)。業界の中では、『太平洋鉄木』の和名で呼ぶ方も多いかもしれません。気乾比重が0.74~0.90もあり文字通り鉄のように重たい事が名前の由来です。その名が示すように、タイ、インドシナ、アンダマン諸島、マレー半島から東南アジアの島々を経てニューギニアまで広く太平洋に面した国々に分布しています。続く・・・

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太平洋鉄木・メルバオとクイラー②*

昨日の続きです・・・東南アジア産のマメ科の広葉樹、『メルバオ(Merbau』が含まれるIntsaia属という種類には、12種類の木が含まれているそうで、私が認識しているメルバオがその中のどれに当たるのかは分りません。製材されて板になったり床柱やフローリングなどの商品になったものしか見たことがないので、大きな板材の状態で見たことはないのに、見たり触った経験は多いという木の1つです。材木屋仲間では、昔からメルバオといえばこれが見極めるポイントというのが伝えられていて、その特徴が分りやすいので、その特徴のある木はメルバオだと認識してきました。

木の材面を見て、黄色いチョークみたいなのがあったらメルバオや、というもの。左の写真は材面をアップで撮ったものですがところどころに黄色い筋状のものが見えると思いますが、これの事です。専門的に言うと、道管の中に黄色のシュウ酸石灰を含んでいる状態なのだそうですが、私には詳しい事は分りませんが、とにかくこれがメルバオを見極めるポイント。とはいえ、35㎜角の【森のかけら】にしてしまったら、そのサイズの中に都合よく「見極めポイント」が入っているものだろうかと、改めてメルバオのかけらを引っ張り出して観察してみると、

わずか35㎜角の立方体の中すべてにちゃんと「見極めポイント」が入っていました。シュウ酸石灰シリカなどの鉱物質が含まれている木は結構多くて、南洋材においては大きな特徴の1つにもなっているほどです。代表的な例で言えば、アピトンレンガス、ホワイトメランチ、チーク、タンギールなどなど。チークなどは、シリカの影響ですぐに刃物が切れなくなるので、なるべく刃物を替えたばかりの時には加工しないようにしています。メルバオについてはそういう話を聞いたことがないのは、板として加工する頻度が圧倒的に少ないためか、含まれる好物質の違いか?

科学的な話は分かりませんが、前述したように荒板などの素材で流通しているケースが少ない(特に愛媛ではほぼ皆無)ため、メルバウを鉋で削った経験値が少ないので、話題にならないだけかもしれません。最初に床柱で加工ミスがあった(それをかけらに転用している)と書きましたが、もしかしたら塗装の問題だけでなく、シュウ酸石灰の影響もあったりしたのかも?ルーペで小口から導管を覗いてみると、黄色いシュウ酸石灰がしっかりと詰まっているのがよく分ります。明日は久しぶりに『かけら』以外のメルバオに会った話。続く・・・

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太平洋鉄木・メルバオとクイラー③*

今まで床柱やフローリングでしか扱った事のなかった『メルバオ(Merbau』ですが、海外ではどういう用途に使われているのでしょうか。まずその特徴ですが、気乾比重が0.74~0.90と非常に重たく沈木である。その硬さの割りに加工性はよくて、乾燥による歪みやねじれも強くない。耐久性も高くて、シロアリなどの虫に対しても高い防蟻性を持つ反面、防腐剤の注入は困難であるというもの。床柱、フローリング、かけら以外での利用実績が無いので、書いていてもいまひとつ実感が湧かないのですが、典型的な硬質系南洋材の1つです。

こういう木の用途として木材事典などに記されている用途は、主に床材、キャビネット、パネル、家具、楽器、挽物、柄、指物、重構造用材など。つまり、メルバオでなければならないというマストな出口は定まってはいないようです。大きな材加工したから際に、黄色いシュウ酸石灰がどれぐらい刃物に影響を与えるのか分りませんが、いろいろ試してみたもののその事がネックとなって用途が広がりきらなかったのかしれません。折角、この木はメルバオだと断定できるポイント付きなのだから、何かもっと『ならではの用途』があってくれると嬉しいのですが・・・

なんて思っていると、先日思わぬところで違った出口に形に加工されたメルバオに出会いました。それがこちらの太鼓の撥(バチ。まあ、これもいわば先日の『シラガシ(白樫) 』からの引き寄せのようにも感じる撥繋がり。これはメルバオが太鼓の撥に向いているから作ったというよりは、たまたまメルバオがあったので、重たくていい音色が出そうなので作ってみたという事でしたが、持ってみればズシリと重く、叩くにもかなりの力が要りそうで、腕っぷしが強い人向き。サイズにもよりますが持った感覚では白樫よりも重く感じました。

増え琴に撥と音色を出す出口繋がりながら、音の良さなどまったく分らない無粋な人間なので、その有効性が見極め出来ませんが、相当力強い音が出るのは容易に想像できます。その太鼓の撥を扱っていらっしゃるのは松山市内で、太鼓や撥、笛、提灯などなど祭りに関する道具を扱っているお祭り道具専門店『まつり屋 田内』さん。店主の田内さんが防災士の資格をお持ちだという事から、昨年店舗を改装されて店の一角では防災用品や非常食、防災無線などの防災用品などの販売も行われています。

このブログでも何度か書いた『ラミンの丸棒』も残った分はすべて田内さんがお買い上げいただき、練習用などの太鼓の撥として販売していただいています。変わった材を売るには、変わった人と変わった出口とのつながりが不可欠!そこで拝見したメルバオは、メルバオならではの出口というわけではないでしょうが、重硬材の用途を考えるヒントになりました。こういう出会いでもないと『今日のかけら』で取り上げにくいのですが、まさかこんな身近なところでメルバオが使われていたとは。常に高い意識で出会いを求め続けることの必要性を痛感しました。メルバオが招いた僥倖。




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