★今日のかけら・#015 【アスペン】 Aspen ヤナギ科・広葉樹・北米産
本日は、無垢の耳付板で作った手洗いカウンターを納品させていただきました。最近特にこの注文が増えています。やはり耳付き板は人気があります。少し前まえでは「無垢っぽい合板」でしたが、それが「とりあえず無垢なら何でも」になり、今は「形や色に少しこだわった無垢」になってきました。住宅業界全般の話ではありません。あくまで弊社の周囲の話です。
雑誌でこんなの見たけど同じような物とか、●●●という木を使いたいとか、●●●のような雰囲気の木、といったような具体的な要望が寄せられます。面倒な注文になればなるほど、闘争心に火がつきます!100%要望に応えられなくとも、少しでも要望に近づきたいと思います。こういう事を書くと、さらに無茶な事を言ってくる人がいて困るのですが(笑)、まあ出来る範囲の事で最大頑張ります
今回の要望は、なるべく厚みのある物を使いたいという事でした。これは簡単なようで実は難しいです。通常、耳付板というのは大体40~60㎜ぐらいに挽いています。大きく(厚く)挽けばいいという物ではありません。荒挽きからねじれを抜いて仕上ますが、精々5~10㎜も落とせばいいほうです。当然ながら、厚いと乾燥にも時間がかかります。なるべく仕上に近いサイズで乾かせるのが理想です。なにより、厚いと重たいので加工も施工も大変な労力が必要になります。アフリカ産の広葉樹などは、2,3㎜削るだけでも大変です!それが3mとか4mになれば、とても一人で持てるようなものではありません。
そういう木の特徴を踏まえた上で、どうしても厚いものを使いたい!・・・やるしかありません。厚み100㎜のアスペンの板(もはや板というレベルではありません、塊ですね!)のよく乾いたものがあります。我ながら、よくぞこういう物を持っていたものだと思います。長さは2mで、幅700㎜、厚み100㎜という、とんでもないサイズです。こんな物が売れるのか?と思われるのでしょうが、これで2枚目が決まりました。どちらも手洗いカウンターです。
厚みのある板は、叩くと『ペタペタ』と音がします。普通の板ではこういう音はしません。普通『ゴツゴツ』とか『コンコン』という音がしますが、100㎜もあるとどの木でも『ペタペタ』という何とも言えない楽しい音がします。いいです、こういう『馬鹿みたいなサイズ』の板を使えるのは楽しいです。多少ねじれがあったので、結局仕上がりは85㎜ぐらいになりましたが、それでも据え付けると、見付けにその厚みが出てきて大迫力です!
なぜ『アスペン』をこんなサイズに挽いてあるかといえば、この木はとても柔らかく軽いからです。加工は容易に出来ますが、削ると表面は毛羽立ちが出やすくパサパサした印象です。主な用途としては、その特徴を利用して箱物やマッチ棒の軸木、家具の内装、木枠、果物籠、パレット、パルプなどの製紙工業の原料などに使われています。また熱の遮蔽率が高いことから、サウナの内装などにも使われています。初めてこの木を見る人には、『ヤナギ科』であるといえばイメージが湧き安いかもしれません。カナダアメリカ北部に広範囲にわたって分布しています。
軽軟いという特性から分かる通り、強度や耐久性はそれほど高くありません。今回は水回りに使うということで、通常の植物性オイルではなくウレタン系の塗料で固める必要があります。水回りに木材を使う場合は、ただ木が硬いというだけでは耐えられません。長期間の枝葉により水分が浸み込み腐朽してしまいます。不本意ではありますが、水回りに木を使う場合は、しっかりと固めて使わなければなりません。耐久性は高くないが、塗装による保護をするという前提条件があったからこその、厚みのある『アスペン』という選択です。
この世に存在するもので意味のないものなどないひとつありません。『適材適所』に特性をうまく引き出して使えば何でも利用できます。まだまだ工夫も智恵も足りませんが、いろんな木に触れるのはそれだけでも世界が広がり楽しいです。アスペンの手洗いカウンターも現場で取り付いた姿が楽しみです!