森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・#018 【土佐栂/トサツガ】 マツ科ツガ属・針樹・日本産(高知産)

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 本当は、昨日の『母の日』に合わせてアップするつもりだったのですが、ちょっと慌しいことがありましたので1日遅れで、本日この木を取り上げさせていただきます。木偏に母と書く【】の木です。

20090512-e981a9e69d90e981a9e68980弊社で毎月発行している『適材適所』でも、今までに何回か取り上げてきましたので、一部内容が重複する部分もありますがご了承下さい。私が本格的に【】に出会ったのは、『木童』の木原巌さんと知り合ってからです。もう何年前のことになるか正確な数字はいま思い出せませんが、かれこれ前のことです。木原さんは当時、全国各地のこだわった産地の内装材を広めんと、『木童』を立ち上げて間もない頃でした。初対面の印象は、火傷しそうなぐらい熱々の情熱の塊が、関西弁でまくしたてる!という感じでした。そういうタイプの材木屋さんに会ったのは初めてだったので、正直圧倒されました。しかし、話をしているうちに、今まで自分の中でモヤモヤして今にも喉から出てきそうなのに、空気に触れると途端に萎縮してしまう「何か」が、これだったのかと目から鱗が落ちていくのが実感できました。心もモヤモヤが吹き飛び、雲ひとつない晴天のような心境になり、その後はどっぷりと『木童教』に入信することになるのですが・・・

 

title1そんな木原さんに連れられて全国各地の工場を訪ねました。北海道から九州まで各地で熱い親父さんたちの話を聞きつつ酒を飲みつつ・・・。いろいろな衝撃を受けましたが、その頃の事が今の私の血であり肉であることは間違いありません。その中で、灯台下暗しだったのが、徳島県の伊原製材所さんの挽く【土佐栂】です!

東日本では、「つが」と発音しますが、西日本では「とが」と発音するところもあります。このあたりでも、年配の大工さんや宇和島など南予の辺りでは「とが」の方が通りが良い地域もあります。

】という木は非常にデリケートな木で、環境汚染に弱いとされています。そのため空気が清浄なかなりの高地でなければ生息しません。また成長も非常に遅く、立派な大木になるまでには100年以上も要します。つまり林業の対象としては適さない木ということになります。しかしそれが良いとか悪いとかは、勝手な人間の評価で【】には何の関わりもありません。伊原製材所さんは、その栂にこだわる数少ない製材所のひとつです。全国的にみても、栂にこれほど執着する工場はないと思います。そもそも、日本の【】が今でもあり程度供給できるところと言えば、四国の徳島~高知の剣山~魚梁瀬周辺、九州の霧島一帯、長野の一部ぐらいだと思われます。それぞれに『土佐栂』、『霧島栂』、『信州』という名称が冠されて取引されたりもするほど、価値のあるものですが、九州も長野もかつてのようには産出されてはいないようです。

1. 今日のかけら

昨日の続きです!

20090512-e59c9fe4bd90e6a082e38395e383ade383bce383aae383b3e382b0efbc93全国的に伐採可能な【】の木が少なくなったこともありますが、今の住宅事情を考えると希少で高価な高齢木が市場に出てくる可能性は自ずと限られてきます。また出てきたとしても、ほとんどが高地で育った高齢の天然林のため、【アテ】や【ウロ】、【目回り】、【腐れ】などが多く、製材ところで割ってみないと、中身が分からないリスクの大きい木でもあります。高地の荒々しく険しい傾斜地で育つことが多いため、ある一定方向から強い力が加わり続けることで、成長の過程でキャラメル色の強い「クセ」がつくことを【アテ】と呼びます。この「アテ」があると、製材したり加工した時に、その部分から急激に反ったりねじれたりします。何十年も強い圧力を受けていたのが一気に開放されるのですから当然といえば当然でしょう。

 【ウロ】は、木の生長が終わりに近づいたり外部からの影響などで、中心部分が朽ちて空洞になってしまい事です。「洞」と書くと分かりやすいかもしれません。【】の【ウロ】は半端ではありません。大きな穴がすっぽり開いているものもあります。年輪に沿って出切る割れ目の事を【目回り】といいますが、これは建築材料としては致命的で、深く【目回り】が入っていると、製材時に破断してしまい何にもならなくなってしまいます。【腐れ】は読んで字の如し。他にも、外部からの傷などで雨などに晒され、腐朽菌によって青色に変色する【アイ】(地域によっては、アオとも)の影響も受けやすい木でもあります。

ここまで読むと、良いことがひとつもないような木に見えるかも知れませんが、実はとてもデリケートな木だという事です。成長が遅いという事は、しっかり目が詰まっているという証です。実際に見てもらえれば分かりますが、【土佐栂】の年輪はとても緻密です。そのためとても硬く締まっています。粘りもあり、かつては梁材としても大いに利用されました。また【アテ】や【ウロ】などの出やすいために、製材すると想像もしないような野趣溢れる杢が現れることも多くあります。【土佐栂】の魅力は何と言っても、引き締まった硬さとこの杢目の妙味でしょう。とりわけ、厳しい環境で育まれた杢目は芸術的ですらあります。欅や高齢の杉など銘木として味わい深い杢目を生み出す物もありますが、個人的には【土佐栂】の杢の美しさには遠く及ばない気がします。

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ca4nr0qgアテ】や【ウロ】がある物は、業界では『欠点』と呼ばれ、著しく低い評価を下されますが、【】の場合、超個性的な杢といわゆる『欠点』は、背中合わせです。そういう木ですから、大きく無傷の板は望むべくもありませんが、傷や【アテ】などの周囲には非常に珍しく、面白い個性的な杢が現れます。

それも珍しいことではなく、そういう表情がバンバン顔を出します。しかし従来の価値判断ではそれらも全てふるい落とされ、消費者の手元に行くことはありません。例えば6尺(約1.8m)の床板で、まったく節のない物を、【】に求めても無理な相談です。もしそういうものが揃ったとしたら、坪10万円とかの床になってしまいます。

20090512-e59c9fe4bd90e6a082e38395e383ade383bce383aae383b3e382b01アテ】も【ウロ】も節も全てがその木の個性であり、生きた証です。使えるものは短くカットしてでも大事に使う。木の特性を認め、許容できるところは譲る。そういう姿勢がなければ【】は使いこなせません。普通のヒノキやスギと同じ感覚で考えられると到底無理です。【木童】さんでも独自のスペックで、フローリングを生産してもらっていますが、しっかりと【】の個性が取り込まれています。弊社でも扱わせてきましたが、結構通好みのお客さんが選ばれる事が多いです。そんな【】にこだわる伊原製材所、恐るべし!心から敬服いたします!

1. 今日のかけら

更に昨日の続きです。

e38384e382ac】はとても奥深い木で、エピソードも多彩です。まずその名前の由来ですが、葉が並ぶ時に下側に長い葉、上側に短い葉が並ぶ様子が「継ぎあう」とか「番(つが)う」ところから、きているといわれています。これによく似ているのが【樅(モミ)】です。同じような生育環境を望み、よく一緒に混じって生えていることから【モミ・ツガ】としてまとめて市場に出される事もあるほどです。立木の時の見分け方のポイントは、葉の先が二股に鋭く尖っているのが【樅】で、葉の先端が丸みを帯びているのが【栂】です。

材木屋といっても実際に山に入って立木を見て、これが何の木かを言い当てれる方は多くありません。樹皮や葉に特徴のある桜や、建築材として利用される事の多い杉、桧、松などは誰にでも分かりますが、広葉樹は似たものも多く難しいです。材木屋は大体が板にした状態の特徴しかが頭に入っていないので、立木は案外分からない物です。私も立木はさっぱり分かりませんでした。愛媛大学農学部が毎年実施している『樹木博士養成講座』に参加して、大学の先生方にいろいろ教えていただき、ほんの少し分かるようになりました。これが分かると実に楽しいものです!山を散策していて、これが何の木、あれが何の木と分かれば楽しいです。しかし真の樹木博士の道は厳しく遥かに遠いのであります~!

【栂】の話に戻ります。木偏に母と書く漢字の由来は、諸説あるのですが私が聞きおよんで気に入っているのは、①ちょうど母指(おやゆび)ぐらいの大きさの実がつくから ②樹皮から白っぽい樹液が出ることがあるが、その様子が母親のお乳に似ていることから ③栂の葉は落ちると堆積しちょうどよい肥となり、母のごとく豊穣大地を育むからの3点です。勿論異論反論もあるでしょうが、もともとアカデミックな話をするつもりはありませんし出来もしません。

】という材の特徴を考えた時、上記のどのエピソードも実にしっくりときます。この種のエピソードは、語り伝えられるうちに尾ヒレ背ヒレがつくものです。小さな話が大きく膨らんで、全然違う木の話も巻き込んで転化して伝えられたりすることも少なくありませんが、それはそれでいいのではないでしょうか。今のネット時代、調べようと思えばキーボードひとつで簡単に検索できます。しかし、だからこそ真実かどうかも分からないあやふやしたエピソードが人の記憶や心の中に生き残ってもいいと思うのです。木という媒体を通じて、人は自分の人生や思いを投影し、納得してり心の支えとするのではないでしょうか。

私はアカデミックな話はまるっきり弱いですが、こういうエピソードは大好きです。というか偏屈者の私としては、全てが理路整然と解明されてしまっては面白くないのです。「え~ホント?」と思わせる遊び心もあっていいと思うのです。自然は偉大です。何でも分かると思ったら大間違いです。謎あるからこそロマンがある!

e382b7e383bce3839ce383abe38388e5838f1いつものごとく話が脱線しましたので軌道修正します。【】という木は、日本固有の木で、学名は『ツガシーボルディー』といいます。これは幕末の頃に活躍したドイツ人の医師、博物学者シーボルトを讃えてのことだといわれています。学名に個人の名前が使われていることは非常に珍しい事です。シーボルトの名前は、長崎に鳴滝塾をつくった事や、日本における妻お滝たきさんにちなんで、アジサイの学名を「ハイドランゲア・オタクサ」と名づけたことの方が有名かもしれません。

 よく【米栂(ベイツガ)】と混同されますが、こちらは本来は【ウエスタン・ヘムロック】という木で、ツガの名前がついているのでややこしいのですが、材質としてはかなりの差があります。輸入された時に、その特徴が【】によく似ていることから、アメリカのツガという意味で【米栂】と名付けられましたというのですが、正直比べるのは酷な気もします。確かに【】も【米栂】もどちらもマツ科ツガ属で、色目は白っぽくて似ていますが、時間が経つとその差は顕著になります。【栂】は時とともに渋い艶がでて鈍い光沢を放ちます。植物性油を塗っておくと、まさに黄金色の趣きになります。対して【米栂】は、挽きたてこそ淡いクリーム色で美白ですが、経年変化でややくすんで黒ずみます。また強度の、粘りがあって硬く締まった【】に比べて、【米栂】は軽軟でただしこれはそれぞれの木の特徴ですから、だから【米栂】が劣っているとかという事ではありません。木にはそれぞれの特徴があるという話です。

cax8bxpx最近【土佐栂】のフローリングに、【アオ染み】や【小傷】のある物に、植物性油塗料で黒っぽい塗装を施し店舗などに使われるケースが増えています。黒く塗ると一層杢目の妙味が際立ち、通常B品扱いされる材が低価格でより魅力的に使えます。黒は黒でもどの配合の黒がいいのか、試行錯誤しました。

土佐栂】は、冬目と夏目の年輪差が明瞭で、黒く塗ると反発して白くなります。そのため白と黒とのコントラストがくっきりと浮き上がってくるような表情が生まれます。店舗以外にもシックな雰囲気を求める空間で使われると面白いです。【アオ染み】も全然気になりません。これだけ立派な木を、ただアオ染みがあるから使えないなんて言ったら罰があたります。骨までしゃぶるつもりで大切に使い、木の醍醐味を堪能しましょう!

土佐栂のエピソードはまだまだありますが、あまりしつこくなるので後はまた改めていつかアップします!




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