風に戦(そよ)ぐ冬青(ソヨゴ)・・・2
伐採された『ソヨゴ』の丸太を短くカットしてもらい、たっぷりと分けていただきました。【森のかけら240】を最終的に決定する時に、日本の木を120種に絞り込む作業をしなければならないのですが、さすがに日本の木で120種類ともなると建築や家具で使う有用材だけでは数が足りません。一般的な用材として流通していない樹種は、「あれば」安く手に入る訳ですが、縁がなければ入手するのも容易な事ではありません。立ち木としてよく見かける木でも、それが材になって手元に来るかという事はまったくの別問題。
揃うようでもいろいろな条件がうまく揃わなければ縁遠い事も多いのです。このソヨゴにしても、森で見かける事はあっても手に入るとは思っていませんでした。木である事と、材である事は大きな違いなのです。いずれどこかで入手出来るかもしれませんが、解説書を製本化して印刷するにあたって、樹種の取捨選択をしなければなりません。その時点では入手の見込みの薄かった樹種は泣く泣く省きました。それは辛い決断でしたがやむを得ません。そのひとつにこのソヨゴもありました。木工クラフトなどにいろいろな端材をカットして、加工してネットで販売されている会社も多いのですが、珍しい樹種を扱っているショップでも、多くて40、50種類あたり。実際に、国産の木を(特定のサイズで)120種類集めようとすると、木は身近でも、材はそれほど身近ではない事に改めて気づかされました。
ああ、もしもあの時このソヨゴがあれば、ソヨゴも【森のかけら240】の中に入っていたのですが・・・残念!以前に別の丸太を大量に分けてもらったのですが、あまりの多さに加工が追いつかず、しばらく放置していました。木は丸太の状態で置いておくと痛みが早く、樹皮に虫の幼虫がいれば、材も穿孔されますし、腐朽菌に侵されたり、放射状に大きな割れが走ったりして、折角の素材を無駄にしてしまった経験があります。そこで今回は持って帰ってすぐに加工することにしました。綺麗な美白の削り節です。
たっぷり水分を含んでいるのでこの状態だとどの木もとても瑞々しくフレッシュです。これが乾燥すると、水分が抜けてビックリするぐらい色が変わる木もあります。植物図鑑などに掲載されているのは、葉や実、樹皮ばかりで、製材直後の材面の色合いや乾燥後の色合いの変化などは見受けられません。建築家向けの、世界の有用木材の材面を掲載した図鑑もありますが、それも樹種に限りがあります。材になると個体差が出過てしまうので、材の表情を選択するのも難しいかもしれません。
乾燥後の収縮を考慮して、45㎜角ぐらいの大きさに製材します。この状態で桟積みして半年ぐらい天然乾燥させます。芯をはずして小割りしていますが、乾燥中にねじれや反り、割れなどが発生するので、全部が全部【森のかけら】になれる訳ではありません。ひとつでも多くの【森のかけら】が取れる事を祈って、ここから先はひたすら「待つ」ばかり。ただ、ソヨゴを新たにリストに加えるつもりではありません。リストに無い日本の木を少しずつ集めて、『日本の森の多様性を知る36(仮称)』の新商品を作ろうと考えているのです!果たして揃うか?!