森のかけら | 大五木材

今日のかけら078

トドマツ

椴松

マツ科モミ属・針葉樹・北海道産

学名:Abies sachalinensis

別名:アカトドマツ、アカトド、オオシラビソ、アオモリトドマツ

 英語名:Todo fir,Sakhalin fir

気乾比重:0.32~0.48

北海道の巨人・トドマツ①*

#078【椴松/トドマツ】マツ科モミ属・針葉樹・北海道産

折角、北海道からわざわざトドマツ王子こと吉田良弘さん[㈱ヨシダ:代表取締役]がご来店されたので、本日は『トドマツ』にスポットをあててみます。トドマツはマツ科モミ属の常緑高木で、エゾマツと並んで北海道を代表する木のひとつで、【森のかけら】にも含まれていてその知名度から考えればもっと早くに取り上げるべき木なのですが、四国に住む私にとっては馴染みの薄い木なのです。全国的な視点で日本の森を見た時に、北海道のエゾマツ、トドマツは当然外せない重要な樹種でした。

ところが個人的には【森のかけら】を作るまで北海道産のトドマツを実際に見たことも使ったこともなかったのです。勿論写真や画像では見ているし、情報としては知っていたものの、そのものに触れた事がありませんでした。エゾマツのほうは、たまたま昔目にする機会があったのと、『木のもの屋・森羅』で家内が仕入れた全国各地の木工品の中にエゾマツ製の経木(きょうぎ)懐紙とかがあったので、見たこともないわけではなかったのですが、いずれにせよ大きな意味での「材木」としては見たことがありませんでした。

トドマツは、マツ科であるもののモミ科ということで、アカマツやクロマツなどのいわゆるマツよりもモミに近く、色合いもモミのように心材と辺材の差が明確でありません。北海道全体の森林面積のおよそ3割がトドマツという事(人工林の蓄積量の中のおよそ4割を占める)で、資源量も多い分、その用途も広く、軽量で色白で加工性もよいことからさまざまな分野で利用されています。中でも卒塔婆などの葬祭具経木漬物樽、米櫃、茶道具箱、食品の保管箱など有名で人々の暮らしを支えてきました。

吉田さんのところでは主に土木資材、建築材、梱包パレット材などに利用されています。圧倒的な資源量がそれを支えているようですが、集材は周辺100キロにも及ぶのだとか。本州でのスギやヒノキの役割を担っているように思われます。【森のかけら】のラインナップに加えた際は、他の北海道産の広葉樹も欲しかったので、別の製材所に依頼したのですが、数年前から吉田さんにお願いしてトドマツを送っていただいています。そうして届いたのがこちらのトドマツ。開封すると北海道の香りが?!続く・・・

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北海道の巨人・トドマツ②*

本日もトドマツの話ですが、今日はその名前について。私が初めてその名前を知ったのは小学生の頃。当時人気があって、コミックを集めていた漫画『おそ松くん』に登場する一卵性の六つ子の名前から。顔も見た目もそっくりの六つ子がイヤミチビ太と繰り広げるギャク漫画で、天才・赤塚不二夫の人気を不動にした作品です。六つ子の名前は、おそ松、一松、カラ松、チョロ松、十四松、トド松。設定では長男がおそ松で、末っ子がトド松となっていて、そこで初めて『トドマツ』という名前を知りました。

当時はそれが実在する木の名前だとは知りませんでしたし、漫画の主人公の名前としてしか認識していませんでした。六つ子自体見たこともありませんでしたが、その後自分が双子の父親になったり、トドマツを扱うような仕事に就こうとは・・・。赤塚先生もトド松の名前の由来は木のトドマツと記されていますが、では本来のトドマツの名前の由来を探ってみましょう。諸説あるようですがもっとも有力なのは、アイヌ語の『totorop (トドロップ』(山・内・に群生している・ものの意)からきているというもの。

ちなみに青森県植物図譜(細井幸兵衛氏解説)によれば、昭和8年に以下のような記述が残されているそうです。「昔青森付近の人々はアオモリドマツのことを単にトドマツと呼んでいたが北海道に出稼ぎにいって、そこに生えていてよく似ている木をもトドマツといった。これが遂には主客転倒してトドマツの名は北海道の今のトドマツの方に残され、本来の八甲田のトドマツに新しくアオモリトドマツの名が与えられた。」ではその青森で使われていたトドマツの由来はというと、これが無限ループに陥りそうになるのですが・・・

当時八甲田周辺では、トドマツの古い呼び方として、ととろほ、ととろふ、ととろつふ、などトトロ系の名前が使われていたのですが、東北地方にはかつて多くのアイヌ人が暮らしていたのでアイヌ語由来の地名やものの名前が入り混じったようです。古い記録にはトドマツの表記は無く、八甲田では単にトドと呼んでいたものが、明治の初め頃になって杣人たちの間で自然発生的に、マツという言葉が重箱式に重ねられて、現在のトドマツという名前で呼ばれるようになったと考えられているそうです。明日に続く・・・

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北海道の巨人・トドマツ③*

現在では青森のトドマツは、同じマツ科モミ属で日本特産の『オオシラビソ』だと分類されていて、青森市の市木にも指定されています。いろいろ木の名前の由来に関する本を読んでも、北海道という土地に馴染みがないうえに言葉や文化も独特で、なかなか理解の及ばないところもあるのですが、平成の現在こうして北海道産の木が簡単に愛媛にまで届くようになってくると、後世のひとがモノのルーツを探る旅は相当に難しいものになるのではと余計な心配をしたくなるようなトドマツの名前の由来でした。

ちなみにですが、オオシラビソ大白檜曽、別名:アオモリトドマツ、学名:Abies mariesii)の松ぼっくりは作り物かと見まがうほど紫は色でビックリ!冬になると幻想的な風景を作り出す樹氷を作る樹として有名です。写真は岩手の八幡平の樹氷。日本人はなんでも『三大』を名乗りたがるのが大好きで、この樹氷にも『日本三大樹氷』というのがあって、それは山形県と宮城県にまたがる蔵王山、青森県の八甲田山、秋田県の森吉山(もりよしざん)がそれ。樹氷の別名は「アイスモンスター」!

何の木でもアイスモンスターが生まれるわけではなくて、気温がマイナス5℃以下にならなければならない、強い北西の風が吹く、ほどほどの雪が降る(降りすぎない)、山の斜面が西か北西向きなどいろいろな気象条件が揃わなければ出来ないのだそうですが、中でももっとも大切なのがオオシラビソが自生していること。トドマツから話が広がりましたが、いずれ【森のかけら】よりもっと大きなサイズのトドマツを扱ってみたいと思っています。思わぬ用途が見つかるかも?!

明治時代末期の北海道を舞台にした人気のサバイバル漫画、野田サトル著『ゴールデンカムイ』は、元陸軍兵とアイヌの民が金塊を探す旅に出る物語ですが、その中ではアイヌの暮らしぶりや文化、言葉などが出てきて非常に興味深く読んでいます。その中でトドマツの描写があるのですが、アイヌの少女がトドマツの葉先の事を「フプチャ=トドマツ」と呼んでいました。アイヌ語辞典によると、トドマツの事は「フプ(fup)=茎」と呼ばれるそうなので、フプ+チャで「トドマツの葉先」の意味なのでしょうか。北海道の樹木にはアイヌの言葉が語源となっているものが多いので、いろいろ調べているのですが、独学で識るにはあまりに難しすぎる!

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北海道の巨人・トドマツ④*

トドマツの話、昨日で終えるつもりだったのですが、書き忘れていたことがあったのでもう一日。呼び名としてのトドマツの由来はおおよそ分かったものの漢字表記の方の由来はどうなのか。木編に段で『椴松』となっていますが、これはトドマツの枝が毎年階段のように増えることに由来している言われています。しかしそもそも「」という漢字は中国で生まれ、日本のトドマツとは別の樹を指すものでした。それが日本に伝わり日本ではトドマツの事を表すようになったそうです。

そういう例はセンダン(栴檀)カエデ(楓)をはじめいくつも見受けられますが、いずれも樹形や葉の形が似ていたなどその特徴の相似性から誤解が生まれました。トドマツについても、中国で椴と呼ばれたのはシナノキ科の樹だったそうですが、互いに共通するのはそのいずれもが紙の原料になったという事。トドマツも製紙用パルプの原料として使われています。段という漢字には叩くという意味もあるそうなので、叩きのばして紙にするという意味で考えると広義ではいずれも椴の樹とも言えます。

ところで、北海道の人工林としては最大の蓄積量を誇る豊富な資源でありばがら、梱包材やパレット、製紙原料と決して付加価値が高いとは言えない用途が主流となっているトドマツに対して、新たな出口戦略を探ろうという動きもあるようです。やはりどこにも同じような感覚のひとはいるものです。しかしスケールは桁違い!トドマツに目をつけたのは、町の面積の9割を森林が占め、環境に配慮した持続可能な循環型森林経営を実践する「北海道下川町」。そこに民間企業最大の社有林を保有する王子ホールディングス。野縁などの小割の羽柄下地材などにしか利用されていなかったトドマツを構造材や化粧材にも使って家を建てようという試み。その挑戦が本になっていたので早速買って読んでみたいと思います。「トドマツで、建てる」 ~林業と建築をつなぐ「やわらかな木造オフィス」~ 発行:トドマツ建築プロジェクト(NPO法人team Timberize・北海道下川町)

そうやって地元の貴重な森林資源に新たな価値を見出そうとする動きもある一方で、北海道ではトドマツの丸太を韓国や中国へ輸出する試みもされているようです。愛媛でも同様に地元のヒノキが原木で輸出されていますし、これはこの数年の全国的な動きです。お上の高邁かつ壮大な理念など、弱小零細材木屋には知る由もありませんが、わずかな端材にも手を加え物語を盛って宝に変えて直接届けたいなんて思っている絵空事を本気でやろうとしている馬鹿な材木屋には雲を掴むような話で、その出口は私にはあまりに遠い・・・。

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椴、海馬、鰡?トドのつまり!*

樹木としてのトドマツ(椴松)の話は昨日で終わりですが、トドマツの事を調べていて気になったことがいおくつか出てきたので、樹木とはまったく関係の無い余談なのですが・・・。まず1つ目が、同じ『トド』でも生物のほうのトド。漢字では海馬とか海象、胡獱、魹などと表すようですが、実はこちらも名前の由来はアイヌ語からきているようです。「なめし革」を意味するアイヌ語の「トント(tondo」が語源だそうで、太古の昔よりトド漁は行われていて、貴重なたんぱく源となっていたそうです。

またその革を使って生活用品も作られていたそうで、それが名前の由来となっているようです。しかしその後、交通の便もよくなり、全国的な流通網が整備されるにつれ、トド漁は下火となったものの、それによってトドの生態数は増加して現在では魚網を破るなど北海道だけでも年間10数億円もの被害が発生していて、害獣駆除としてトド漁が行われているそうです。世界的にみると準絶滅危惧種にも登録されている国もあって、日本のトド漁が批判されることもあるようですがそれぞれの国にそれぞれの事情があります。今でも北海道などではトドの大和煮やトドカレーが販売されているようですが、これぞジビエ料理。

外国がどうだからという基準でばかり考えると、地域の暮らしや事情が見過ごされてしまうのは木の世界ばかりではないようで、感情的ななりすぎるとものの本質を見失ってしまいます。その次に気になるトドは、「とどのつまり」のトド。私はてっきり度々(たびたび)、つまり何度も繰り返してその結果、という意味だと思っていたのですが大間違い。こちらのトドは、魚のトドからきていました。ときどき、都会の川などで恐ろしいまでに大量発生してニュースになることのあるボラの最終的な名前がトド。

出世魚といえばハマチ→ブリが有名ですが、ボラもそうらしく、地域によって多少の違いはあるようですが、関西だとハク→オボコ→スバシリ→イナ→ボラ→トドと呼び名が変わっていって、最終的にトドで落ち着くそう。という事はあの大量発生しているのは、まだ最終形態ではないという事。ということから、「とどのつまり」は「最終的に」という意味を持つ言葉として使われるようになったようです。漢字で書くと鰡、鯔、鮱など。トド(マツ)のとどのつまりはチップでもいいけど、その間にまだ何態か変身出来そう

今日のかけら098

ポプラ

白楊

ヤナギ科ヤマナラシ属・広葉樹・北海道産

学名:Populus nigra. var. italica

別名:セイヨウハコヤナギ(西洋箱柳)、

               イタリアヤマナラシ、イタリアクロポプラ

 英語名:Lombardy Poplar(ロンバルディポプラ)

気乾比重:0.45

ポプラとはナニモノなのか?①*

★今日のかけら・#098 【白楊/ポプラ】 ヤナギ科ヤマナラシ属・広葉樹・北海道産

昨日のブログで、オランダといえば木靴と私の貧相なイメージをさらけ出しましたが、それでふと思ったのですが、オランダの木靴の材料って何の木なんだろう?昔、誰かがヨーロッパに行った際のお土産にミニチュアの木靴をもらいましたが、その頃はそれが何の木で作られているかなんて気にも留めませんでした。自分で最終商品まで作り出すようになって、そういうものに注意を払うようになりましたが、従来の流通型の材木屋のままだったらこういう事に気を向けることもなく終えていたのだろうと思うとゾッとします。材木屋の原木知らずどころか、材木屋の木製商品知らず
さて、主題のオランダの木靴の原料ですがは、ポプラの木多く使われているそうです。ポプラだったか・・・そう知ってこの事をブログに書くかちょっと悩みました。材木屋なんだからすべての木の事を知っている、扱っているなんと事は当然無いわけで、全国的に知名度があってもその地域ではほとんど流通していないような木であればご縁がない事もありますし、その材を仕入れる理由(つまり売れるかどうか)が無ければ、あえてリスクを冒してまで仕入れてみようなんて考えるのは、変わり者のビーバーの一派ぐらいのもの。生涯巡り会わない、会えない木の方が多いのです
240種プラスアルファの多樹種で構成される森のかけら】なんてものを作ったお陰で、たぶん一般的な材木屋さんよりは、少しだけ多くの樹種に巡り合っている機会が多い方だとは思いますが、それでも一瞬のすれ違い程度の縁しかない木とか、二度目の再会がなかなかやって来ない木もあります。一応は【森のかけら】として一度は手に取って加工しているものの、それ以外の場面ではこちがいくら欲しても出会えないご縁の無い木がある一方で、ご縁はあるもののこちらがなかなかその気にならない(関心が薄い)木というのもあったりします。
いまひとつ興味が湧かない理由としては、愛媛において接点が少なく実用実績も乏しい。しかし偏屈材木屋としては、こういうケースではむしろ、ならば俺が広めてやろうと反骨心に火がつきます。それよりも大きいのは、その木の生い立ちや家族構成が複雑で分かりにくい(植物学的な分類とか)と、興味が急激に下がります。木の事を知りたいのは、知的好奇心という側面と、材木屋という仕事の営業ツールとして使いたいという側面があって、語りにくい(人に伝えにくい)話は自分的にはどうしても乗り気にならないのです。明日に続く・・・

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ポプラとはナニモノなのか?②*

昨日の話の続きですが、私が乗り気にならない木というのは、面倒くさがりで複雑な話が苦手という私の個人的な感覚だけで、木には何の罪もありません。それについてはただ申し訳ないと思うばかりなのですが、何かのきっかけで急激に興味が湧くようになるかもしれないので、これもご縁。さて、今回取り上げた『ポプラ』という木が、私にとっていまひとつ乗り気になれない、関心薄き木のひとつなのです。ポプラとご縁が少ないというわけではなくて、今までにこのブログにも何度か登場してきました。
しかもブログを読み返してみれば、かなり早い時期に『ルイ・ヴィトン社の鞄の素材ビーバーの好物の木』としてポプラは登場してきています。しかしその際にもそこで『今日のかけら』として取り上げることは避け、先送りにしてきました。これはたまたまではなく意識的にそうしたのです。ポプラという木が大五木材に無かったからというわけではありません。森のかけらを作り始める際には、少量ですが既に数枚のポプラの耳付き板の在庫はありました。にも関わらずつれない態度をとってきた理由。1つは、やわらかい事。もう1つは生い立ちがややこしそう
まさにポプラにとっては全人格を否定されたような失礼な話で本当に申し訳ないのですが、こういうのって感覚的なものなので、前述したように何かの契機で劇的に好きになってのめり込むかもしれないので、その時にはよろしくねの心境です。まず、あまり軽い木というのは、出口がありそうで少ない。ポプラはかなり軽軟なのでその特徴を生かして(肌目が白いというのも利点)、マッチ棒の軸木爪楊枝などにも利用されてきました。しかしいずれも近年急激に生産量が減っているうえに、大五木材ではその加工をすることは出来ません。
ポプラには独特の『瘤杢(こぶもく)』が出るので、カウンターやテーブルなどの家具に使われますが、材質的には軟らかいので、オイル仕上げの場合にはそれなりの覚悟は必要になります。その点については弊社にはライトウッド・フェチさんも多数ご来店されますので、そういう場面で活躍してもらいます。しかし瘤杢はある程度の面積あってこそ。小さなノベルティ商品に加工するには、軽軟すぎる木は毛羽立ちが出やすく、瘤杢はあまり小さくなると魅力半減。とはいえ材としては出口はあるし、使い方次第では面白い木です。問題は・・・

 

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ポプラとはナニモノなのか?③*

ポプラが私を疎遠にさせる最大の理由は、今までのポプラに対する馴染みの薄さと、そこからくる生い立ちの煩雑さ。そこまで複雑ではないものの、その立ち木や材を見た経験が、他の木に比べたら圧倒的に少ないことに起因してます。ポプラは、ヤナギ科ヤマナラシ属に分類される落葉高木ですが、その仲間にはおよそ30ほどの種や亜種があります。【森のかけら】の240種の中に加える際にもポプラをどう扱うかについてはかなり悩みました。私がここでいうポプラは、学名Populus nigra. var. italica(ポプルスニグライタリカ)、和名だと『セイヨウハコヤナギ(西洋箱柳)』。

欧州、中央アジアが原産地ということで、別名は『イタリアヤマナラシ』。「ハコヤナギとヤマナラシ?」と既にここで何か違和感を覚えるのですが、更に一般的には『ポプラ(白楊)』と呼ばれることが多い。???愛媛に住む私のイメージだと、ヤナギといえば『シダレヤナギ(枝垂れ柳』なので、そもそもハコヤナギがイメージしづらい。しかもその樹形が似ているとかならともかく、樹形もまったく違います。ポプラといえば北海道大学農学部のポプラ並木のこと、と言われても、初めてその風景を見たときも違和感しか感じませんでした。材としてのポプラ材に出会うのはそれから少し後のこと。

ポプラ独特の瘤杢は、今でこそ私好みの絶好球ですが、初めてそれに出会った頃のまだ若くて純真だった私にとっては、あまりに個性が強すぎて受け止めることが出来ませんでした。世界的にはポプラといえば、北海道大学のポプラ並木を構成する木の事を指すようです。原産地とされるヨーロッパ(現地ではクロヤマナラシの栽培品種ともいわれるそうですが余計にややこしい)から移入された外来のヤマナラシ属の木が、品種改良などを経て日本の環境に馴染んで公園や街路の緑化樹として定着して、それらが一般的に『ポプラ』と呼ばれているのだとか

全国各地で植栽されているので愛媛にも生えているはずなのですが、街路樹のポプラの立ち姿を見た(認識した)記憶が無いので、自分で書いていてもイメージしづらい・・・。テーブルサイズのポプラはいくらか在庫があるので、実例の出口も撮ろうと思えば撮れるのですが、生い立ちについてはまだよく整理できていません。立ち木のポプラに会えた時にでもまた詳しく書きたいと思います。とりあえずは『今日のかけら』として入口だけは開いておこうと思いまして。


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ポプラとはナニモノなのか?④*

 

という事で、今のところ木材としてのポプラの販売実績も少なく、たいした知見も無いので、これを契機にポプラの板も集めてみようかと思っています。しかし皮肉なもので、いざ集めようとすると、今まではあれほど市場に転がっていて安値で落札されても気にもかけなかった木のが突然見かけなくなってしまったり、製材や商社に問い合わせてみても入荷の見込みが無いなどと、探せども探せども巡り合えないなんてこともしばしばあります。まあ、木の方からすれば、以前はあれほどこちらが「旦那、買ってくださいよ。いい杢出ますよ~」なんて秋波を送っていたのに・・・


今更会いたいなんて何都合のいいこと言ってんだい!てな感じなんでしょう。こういうのを私は『木に嫌われた』と言っています。木との出会いも一期一会なので、そのときどきで出会える木を大切にしていかねばと、頭では理解しているつもりなんですが・・・。ところで、『ポプラ』を積極的に取り扱わなった理由にはもうひとつ、その在所にあります。これはポプラに限ったことでなくて、【森のかけら】を作る際に自分の中でかなり悩んだところなのです。つまりその木は国産かそうでないか。日本の木と世界の木のどちらのカテゴリーに含めるべきかという事

 

これが公的研究機関が作っている学術的な研究品とかなら非常に重要な問題(いやむしろそうであればそういう区別は意味がないのかも)なのでしょうが、所詮市井の偏屈材木屋が独断と偏見で産み出した商品なので、そこは『自分ルール』でいいのだとは思っています。が、変なとこだけ几帳面で融通の利かないA型ゆえ、気になってしまうのです。原産が東欧(外国)であるが、日本で発芽して成長して材となって木ならば、それは国産材と分類していいのではないか。結局【森のかけら】ではポプラは日本の木のカテゴリーに加えています


同じように悩んだ木としては他にも、『メタセコイア』や『チャンチン』があります。ずらりと並んだ時に感じる違和感は、漢字で表している国産の木の中で目立つカタカナ表記。それでも、ポプラに比べてその2樹種にそれまでの抵抗を感じなかったのは、その2種の立木がたまたま私の近くにあったりして、よく目にしていたため。つまり「立ち木として日本で育ってる姿を自分の目でよく見ている」というのが、私の中では思いっきりカタカナ表記の原産地外国の木だけど、日本のカテゴリーに入れちゃってもOKという免罪符となっているわけです。

ポプラに少なからず感じる抵抗感は、実際に立ち木を見たことが無いという点。つまり最初に書いた「馴染みの無さ」が、私の中でポプラを曖昧な存在にしてしまっているのです。写真のポプラは、『ヨーロッパポプラ』として仕入れたものですが、ヨーロッパから丸太を仕入れて割ったわけではなく、国内で育ったヨーロッパポプラの丸太を製材して板にしたもの。これを「国産の木でテーブルを作りたい」というお客さんに薦めるには、私の中で小さな抵抗を感じてしまうのです。だからもう、ワールドワイドな現代において国産とか外材とか細かいこだわりや小さなくくりはもういいじゃないかと、われらは皆、宇宙船地球号の乗組員なのだから!地球の資源を大切に楽しんで使おうぜ!なんて考えてしまうのです。ちなみのこのヨーロッパポプラは仕上げ加工までしていて、すぐにテーブルの天板に使える特価品です!

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ポプラとはナニモノなのか?⑤*

多感であった高校生時代を映画館の無い街で過ごしたため、映画の情報誌だけは擦り切れくぐらい読み込んでいたので、自分の中の『妄想映画館』ではいろいろな年代のさまざまなジャンルの映画が常に上映されていました。昔は今以上にテレビで邦画洋画とも結構放送していたので、眠い目をこすりながら深夜放送の映画も観て、感想を鑑賞ノートに記録していました。思えばそれが【今日のかけら】の萌芽だったのかも。特に60年代から90年代の作品については、実際に観てはいなくてもタイトルや出演者、大まかな内容ぐらいは大体分かります。このブログもそこから感化される事も多いのです。

それが今回は、ブログを書いていてある1本の映画に繋がりました。いつもは先に映画ありきで、そこからいかに木と絡めるかなんて考えたりするのですが今回は逆パターン。オランダの木靴がポプラの木で作られているという話を書いていたとき、「木靴の材料の木」としていろいろ資料を検索していたら、出てきたのが1970年代後半に作られた『木靴の樹』というイタリア映画。実はこの映画を観たことは無くて、情報としてしか知りません。なぜ知っているかというと、この作品は有名な俳優も出ない、田舎の農村が舞台という超地味な内容ながら、カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールなどをはじめ多くの賞を受賞していたからです。特にカンヌのパルムドールは、この翌年にコッポラの『地獄の黙示録』が、更にその翌年には黒澤明の『影武者』が受賞したため、歴代の受賞作品のリストを何度も何度も目にしていたので、それらのスケールのでかい超大作とは対極的な小作として『木靴の樹』の事が気になっていました。

『木靴の樹』は、19世紀末の北イタリアの農村に暮らす4家族の日常と美しい風景を、自然光だけで描いたヒューマンドラマで、ドキュメンタリーのようなリアルな描写と、貧しいながらもたくましく生きる登場人物たちを捉えた人間賛歌という内容で、殺人事件や怪物の襲来などということとはまったく無縁の作品。その解説を読んでも、あまりに地味な内容に、若かった私の食指はピクリとも動きませんでした。もちろんその当時は材木屋になろうと考えても無い頃で、木靴に関心なんて一切ありませんでした。あれから40年、私も馬齢を重ね、ひとの親となりました。

農作物の栽培や家畜の飼育などに汗を流し、教会へ通い、子供が生まれたり結婚したりするなか、ある悲劇が起きます。ミネク少年の大事な木靴が割れてしまう。 村から遠く離れた学校に通う息子の為に、父親は河沿いのポプラの樹を伐り、 新しい木靴を作ろうとするが、そのポプラは彼らの領主のものであった・・・。若い頃ならそれがどうしたと感じた話が、齢50を越えた今、この話を書いているだけでも、当時の時代背景、彼ら家族の置かれた環境や不条理、ミネク少年の悲しそうな顔、もしも自分がその立場ならといろいろな思いが交錯して涙が溢れそうになります。

そもそもポプラの属名であるPopulusは、もともと『民衆(Popular』の意味で、かつては家ごとにポプラの樹が植えられていたことに由来しているので、映画の中の『ポプラの木靴』というのは、本来庶民のモノであった自由が権力者側に奪われてしまったことの象徴として描かれているのだと思います。1足の靴さえも自由にすることの出来ない彼らの悲しみが、出会いから40年も経ってようやく感じられるようになってきました。機会があれば是非観ようと思います。これもポプラの木靴のお陰。木は暮らしの中でもっともポピュラーな素材。社会の入口であり、出口でもあると改めて感じましたのです。

 

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