森のかけら | 大五木材

今日のかけら・#209【ペルポックPerupok  ニシキギ科・広葉樹・東南アジア産

最近はすっかりご無沙汰している木ですが、たまたまこの木を貼りあわせたモノが手に入ったのでここでご紹介します。昔は愛媛でもかなり流通していて、弊社の倉庫にもペルポックの平板が沢山ありました。ちょっと幅の広い枠が必要ならペルポックで、というぐらい普通に使われていました。乾燥が容易であるという事と塗装の仕上がりが良い、薬剤の注入処理が容易などという事もあって、ペンキ下地材や枠材、家具、彫刻材、挽物材、箱材、合板などに利用されました。

 

この木は、インド、ミャンマー、インドシナ、マラヤからニューギニアや東南アジアの島々に分布している小~中径木で、普通は胸高直径で200〜600㎜程度らしいのですが、太いもので有用なものになると樹高が40mを越えるものもあるとか。全体的に淡黄色~淡黄褐色で、板目部分にまるで針葉樹のような緻密な笹杢が現われます。かつて取り扱った記憶としては、ペルポック=軽軟という記憶なのですが、かつてこの木は重硬な木として分類されていた事もありました。

 

20150827 3というのは、の重さには相当幅がありました。というのは、昔はマレーシアのサバ州、サワラク洲では気乾比重0.72以下のニシキギ科の木材をペルポック、これより重い木材を『Mata ulat(マタ ウラット)』あるいは『Balan(バジャン)』と呼んで区別していたのですが、その後これら重硬なものを分類学上、ニシキギ科のKokoona属に入れる事になったため、Lophopetalumに属するペルポックに相当する材は、比重が0.48〜0.64のより軽軟なものになったのです。

 

20150827 4それらを合わせると18種ほどがあるらしいのですが、もともと蓄積量が多い木ではなくて合板などの材料として、『M.L.H(Miscellaneous  light  hardwood)』の1種として『雑軽軟広葉樹材』扱いで輸入されてきたのですが、南洋材らしからぬジグザグした笹杢が人気となって家具業界からの要請で、個別の輸入量が増えて、ペルポックとして認知されてきたのですが、南洋材合板の減少に伴い昨今は市場からも徐々に減少。見かけなくなったらなったで使いたくなるもの。

 

20150827 5今になって【森のかけら】を作るにあたって、少しでも置いておけばおかったと後悔しているところです。久々にペルポックに遭遇して「こんなに杢目が綺麗だったかしら?」と驚くほど。私の周辺では板材でこそ見かけなくなったものの、積層ボードとしては今でもその名前を聞きます。かつてはその軟らかさも気にならなかったものの、数々の広葉樹を経て今改めてペルポックを見れば、時代時代で感じてきた自分の体感硬度や美意識の変化に驚きすら感じるのです。

今日のかけら・#185 【ニヤトー】 Nyatoh  アカテツ科・広葉樹・東南アジア産

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二ヤトーとペンシルシーダーの謎①

 

20141101 1以前に鉛筆に使われる木『イチイ』の項で、少しだけ触れたことがあったのが、『ペンシルシーダー(鉛筆の木)』の名称を持つ『二ヤトー』という木。インドシナ半島から東南アジアの島を経てパプア・ニューギニア(以下PNG)、南太平洋、オーストラリア、ニュージーランドまで広く分布しているアカテツ科の数属の比較的軽軟な樹種の総称です。100種以上もの樹種の総称として使われているということもあって、「二ヤトー・グループ」に含まれるメンバーの個性も呼び名もさまざま

 

Exif_JPEG_PICTURE主なものだけでも、ナトー/Nato(フィリピン)、Palai(インド)、Masang(タイ、ソロモン)、Viet(ベトナム)、Sacau(フィジー)、Nato(フィリピン)などなど。日本での一般的な呼び名であるニヤトー(Nyatoh)が使われているのは、マラヤ、サワラク、ブルネイ、サバ、インドネシアなど(国と地域)。そして問題のペンシルシーダー(Pencil cedar )という呼び名が使われているのがPNG。そこでは色調に合わせてホワイト・プランチョネラ、レッド・プランチョネラとも呼ばれています。

 

20141101 3100種を超す大グループですから呼称が多いのも当然で、その個体差にも幅がありひと口にニヤトーといっても重さも硬さもさまざま。気乾比重も0.47〜0.89までと相当幅があるのですが、サバでは0.88以下のものをニヤトー、それより重いものをニヤトーバトゥ(Nyatoh batu )と呼んで区別しています。なのでこの辺りでもニヤトーとバトゥ(愛媛ではバツと言いますが)と、それぞれの名前で呼び分けられていましたが、今ではそのどちらも使われる量が激減していずれの名前を聞く事もなくなりました。

 

Exif_JPEG_PICTURE昔はよくバツを敷居などに使ったものですが、なんといってもこの木は重い!また、肌目が粗くシリカを含んでいる事から蝋を触っているような独特の触感があり(それで敷居など滑りを求められる場所に使われるのですが)、持ち運び中に粗いそげらが手に刺さる事もしばしば。ところでなぜにこの木が『ペンシルシーダー』と呼ばれるのかという理由は今もまだ分からない(鉛筆に使われているわけでもないのに)だけでなく、なぜ広葉樹の木なのにシーダー(スギ)という針葉樹を指す言葉が付いているのか?

 


 

二ヤトーとペンシルシーダーの謎②

1. 今日のかけら

20141102-1この矛盾に満ちた名前はなにもニヤトーに限った事ではなく、例えばブラジルの『セドロ』も広葉樹でありながら、『スパニッシュ・シーダー』の別名があります。しかもブラジルなのにスパニッシュ!これは『今日のかけら/セドロ』で詳しく説明させていただきましたが、かつてブラジルがスペイン領であったことと、削るとシーダーのような香りがするからという事で、地域で使われる木の名前がいかに材の特徴を現わしたものであるのか、またいかに分かりやすい木に見立てられるのかという事の証明です。

 

20141102 2そう考えれば、PNGでも赤身を帯びたニヤトーをペンシルシーダー(一般的には、北米原産のヒノキ科の高木インセンス・シーダーを現わす俗称として使われる。これこそ本当の鉛筆の木。カリフォルニア香杉 とも呼ばれる)のような香りのする木に見立てて表現したのかもしれません。木の名前って日本でもそうですが、本来の言葉が訛ったり、変化したり、つけ加えられたり、短縮されたりしながら口伝で形成されてきたものだと思うので、そのルーツって案外聞き間違いとかということだってよくある事。

Exif_JPEG_PICTUREまた日本人の感覚では考えらない概念もあって、やや赤身の薄いニヤトーを『ホワイトナトー』、あるいは『レッドシルクウッド』と呼ぶに至っては、何がホワイトで何がレッドなのやら・・・。でもその曖昧さ、おおらかさこそが誰にも愛される自然素材・木の醍醐味なのではないかと思うのです。それが人を騙すためとか市場を混乱させるためというのなら別ですが、自然発生的に起きた命名であるならば、それはそれである種その木の人気のバロメーターのようなものではないかと思うのですが

 

Exif_JPEG_PICTUREそのニヤトーのまあまあ重たい方バツの敷居サイズと、比較的軽い方のニヤトーの板が少しだけ残っているのですが、この辺りでの需要を考えると『端材』扱いで、『森のかけら』や『モザイクボード』などに小割して使った方がいいのかもと思案中。全国的にみれば、今もふんだんにニヤトー一族が流通している地域もあると思われますが、愛媛については「終わってしまった木」という感覚になってしまっているのが寂しいところ。やはり活躍できる場面がなくなると出番のない木は次第に忘れれてしまうもの・・・

 

20141102 4細かく割り返して使うのは最終手段で、何か大きなままで利用できる場面がないか出口の探求は続けるのですが、性質が似ている南洋系の木については、個々の木で明確な使い分けが定まりにくいというのが実情です。特にニヤトーはシリカが含まれているため刃先を痛めるため尚更なのです。でも昔はこの木を造作や内装、建具にまで使っていたのですから、今よりも木の個性に寛容だったというか、あるものは何でも利用してしまえの精神が旺盛だったのか、怖いもの知らずだったのか、今があまりに神経質なのか・・・

 

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