想い出はアカシア~♪
「きれいになったねあの頃よりも しあわせなんだろあいつとふたり めぐり逢えたら人妻の 銀の指輪が痛かった 想い出はアカシア 別れの白い花 ♪ 」で有名な石原裕次郎の『想い出はアカシア』。作詞は山口洋子、いい詩を書かれますね~。私は世代的は随分ずれているのですが、仕事柄年上の方とのお付き合いが多かったせいで、カラオケで十八番にされていらっしゃる方もいて、随分聴かされました。私は昭和歌謡で止まったままの人間ですので、こういう歌詞がしっくりきます。
私は作曲:弦哲也。石原裕次郎には、他にも『アカシアは枯れた』や『赤いハンカチ』(アカシヤの 花の下で あの娘がそっと 瞼を拭いた赤いハンカチよ〜♪)という曲もあって、アカシアが切ない別れの象徴となっているようです。他にも、西田佐和子の「アカシアの雨が止むとき」など、アカシアが出てくる曲が多いのは、何か時代的な背景があったのか?それを探ろうというわけではなくて、なぜ突然昭和歌謡の話から始まったのかというと、本日はアカシアが俎上の題材だからです。
弊社で最近取り扱いを始めさせていただくようになったのがアカシアのフローリングだから。このアカシアという木は、マメ科アカシア属に属する木や灌木の総称として使われ、その仲間は800〜1000種にも及ぶとされています。【森のかけら】にも含まれている『ニセアカシア』とは別物です。同じマメ科でも、ニセアカシアはマメ科ハリエンジュ属。その違いは、『今日のかけら/ハリエンジュ(ニセアカシア)』の項で詳しく触れていますのでご興味ある方はそちらをご覧下さい。
さて、なにしろ1000種にも及ぶ大家族群ですからその分類も複雑で、いろいろな専門書を開いても書いてある事がバラバラで、植物学の専門的な知識のない私には正直詳しいところは分からないのですが、実用的な『材』としての区別は分かります。ハリエンジュ、つまりニセアカシアの方がかなり硬くてアカシアはそれに比べるとやや軽軟。昭和歌謡に登場するアカシアは、白い花が咲くという事なので、どうやらニセアカシアの事を指していると思われます。この項明日に続く。
オシリス/アカシアに守られし孤高の者


古代エジプトにおいては、エジプト原産のアカシアは神聖な儀式で使われる『材』としても貴重なものだったようで、王様を埋葬する『舟』=『棺』(舟はただの乗り物ではなく、ひとの魂をあの世とこの世を行き来させる箱舟のような存在だったと考えられていました)もアカシアで作られています。冥界の王にして死者を裁く神・オシリスの棺もアカシア製だったそうです。その棺には、オシリスのことを『アカシアの中の孤高な者』と呼ぶ記述とアカシアの木で守られたミイラ姿の神が記されています。
古代エジプトにおける宗教的な到達点は、神・オシリスと身も心も一体となることと信じられていたため、神聖な棺に描かかれているという事は、余程アカシアが高貴で神聖なスピリチャルな木と考えられていたのだと推測できます。アラビアでは、今でもアカシアは神聖な木とされ、その枝を折ると災いが起こるという言い伝えがありますし、古代中国でも地の神さまはアカシアの中に住んでいたともされていますので、アカシアに対する強い信仰心は世界的な認識なのかもしれません。
アカシアはナチュラル!


ただし、節を取り込んだグレードのフローリングの宿命として、死に節や抜け節、欠け節などにはパテによる補修も含まれます。また、見た目から想像するよりはやや軟らかく、デリケートな触感です。フローリングとして充分な強度は有していると思われますが、キズに備えてあまりにも表面硬度を気にする方には不向きかもしれません。あくまでも自然素材ですから、その特徴が必ずしも望まれる建築素材に合致するわけではありません。材の特性をしっかりご理解されたうえで判断いただければと思います。
以前からよく使っていただいてきたチャイニーズ・メープルのラスティック・グレード(節やカスリ、入り皮などを含んだ)のフローリングの今後の入荷見通しが立たなくなってきたため、代替材として提案をさせていただいています。ベトナム産のアカシアを、ベトナム工場で加工して日本に輸入しているものです。昔に比べて商品ローテーションが随分早くなり、馴染んできたころにチェンジ、というのは残念ではありますが、それも自然の恩恵を享受する仕事ゆえの宿命。貴重な森のめぐみに感謝しつつ利用させていただきます。