南洋材の先輩・瀬村製材所の瀬村要二郎さんの所でまた新しい樹種との出会いがありました。新しいといっても新樹種が発見されたとかいう事ではなく、私が初対面という事です。原木で入荷していたのは知っていたのですが、今回製材されたという事で声を掛けてもらったので早速観にいかせていただきました。変わった原木が入ったら教えて下さいとお願いしているので、こうして情報をいただくのですが、本当にありがたい先輩です。その樹種は、ボルネオのサバ州から入荷した、ウルシ科の『ASAM(アッサム)』です。
名前だけは木材図鑑で知っていましたが現物を観るのはお初です。南洋材の中には、同じウルシ科の『ダオ(ニューギニア・ウォールナット)』のように縞柄で個性の際立つ物も数種ありますが、全般的にはラワンのような年輪のない、特徴の不明瞭な木が多く、判別も容易ではありません。こればっかりは数をこなさなければなかなか見分けがつきません。確実に見分けるには、こうして原木の状態から見させていただくのが一番です。しかも挽き立ちの状態で丸太と板材を同時に見る事が出来るのは非常にありがたいです。
アッサムの仲間はインド、東南アジア、ニューギニアに分布し、約40種があるそうですが、その仲間には果実で有名なマンゴも含まれているようです。大きい物は直径1メートルを越す物もあるようですが。今回入手していたのは、直径500~600㎜程度の物でした。瀬村さんは梱包用として仕入れられていましたが、主に箱物家具やキャビネット、ベッドの柱やマッチ箱、包装用材などに利用されているようです。辺材はかなりダメージを受けていましたが、変色菌に侵されやすく虫の害も受けやすいようです。
導管にチロースが含まれるという事ですから、ホワイトオークのように非透水性が高いという事でしょうか?材からはその印象は受けませんが、試してみねばなりません。インドやパプア・ニューギニア、ビルマでは『MANGO(マンゴ)』とも呼ばれているように、この材で果実のマンゴを入れる箱とかボックスとかどんなものでしょうか。縞模様の美しいものは、装飾的に家具の突き板などにも使われるということですが、板目部分を見ると何となくその雰囲気が感じられます。
この原木から挽いた板がこれです。これでは特徴が掴みにくいです。まあ際立った特徴があれば、とっくに利用されているはずですから、当然の結果とも言えますが、むしろその方が逆に燃えたりするのです!こういう材を相手に正統的な考えだけで攻めても無理です。緩急をつけて、意表をつく変化球を投げてみたり、出方を探らねばなりません。建築材に向かないから、有用でないという言葉が一番嫌いです。木を扱う人間の責任として、もっと素材を研究して、材を徹底的に使い切る覚悟を持つべきだと思います。
上の荒板をプレーナーで削って加工したのがこちらの画像です。色はやや赤身を帯びていますが、目合いは木材図鑑の通りです。要二郎さんによると、柾目に挽くとかなり交錯木理が出て毛羽立つようで、ほぼ柾目に挽かれていました。気乾比重は、0.48~0.73という事ですが、生材でしたのでかなりの重量感がありました。余程頭を柔らかくして挑まねば手強そうな相手です。どうやらウルシ科、マンゴというあたりが切り口になりそうです。それにしても南洋材は奥が深い・・・。相手にとって不足なし!