森のかけら | 大五木材

今日のかけら192

パドック

 Padauk

マメ科・ソラマメ亜科・広葉樹・アフリカ産

学名:Pterocarpus. soyauxii

別名:アフリカンパドック、パドウク、

カムウッド(Camwood)、バーウッド(Barwood)

気乾比重:0.77~0.82

 

退色するのは罪ですか?*

★今日のかけら・#192【パドック】Padauk マメ科・広葉樹・アフリカ産

今日「森のかけら」たちを整理していたら、丁度いい物が出てきたのでその木『パドック』についてのお話しです。弊社が毎月発行している『適材適所』という通信誌の12月号に、パドックの事を書きましたが、その中で「パドックは鮮やかだが経年変化でアサメラのようになる」という内容の事を書きました。木材関係者の方は、「そう、そう」と実感される方ばかりだと思うのですが、アサメラをご存知ではない方にはよく分からなかったと思います。アサメラの写真も一緒に掲載すればよかったです。そしたら今日、整理中に「まさにこれ!」というぐらい退色したパドックが見つかったので、自分の中で今日は『かけらシリーズ』の順番ではなかったのですが急遽取り上げさせていただきます。

左の写真はどちらも完成間もないかけらで、ほとんど退色は見られません。左の3個並んでいる画像は左端から、完成直後、退色したパドック、アサメラです。右の画像は左が完成直後、右が退色した物です。カメラを通してしまうとちょっと雰囲気が違うのですが、完成直後の鮮烈な赤がくすんでいるのが分かると思います。これは室内の棚で管理していたのでまだこの程度ですが、座卓にして太陽の光が入るところに出しておくともっと退色が進みます。アサメラと同じという訳ではありませんが、かなり近い雰囲気になっています。

パドック同士の2個の比較で見ると、かなり退色しているのが分かると思います。しかし退色することが悪いといっているつもりはないので誤解しないように。生きている物が時間とともに変化していくのは自然の摂理です。木を使う人はそれを受け入れなくてはなりません。ただ分かっていても削りたての眩いほどのパドックの赤を知る者にとって、茶褐色に退色してしまった姿を見るとなんともいえない気持ちになります。もうひとつパドックは赤身と白身の差が激しいので、うまく取り込んで使えば色のコントラストを楽しめます。

「森のかけら」でもそういう風につくろうとも考えた(少しは出来た)のですが、ベースが端材なものですから思い通りには仕上がりません。初期の頃作った物は赤白がうまい具合に半々に出て、面白がられたのですが・・・。天然素材を扱うという事は、思い通りにならない事、これでいいんです!パドックについては『適材適所NO.127』に詳しく書かせていただきましたので、最後に好きな映画のコピーを一節添えて、『心変わり(退色するの)は罪ですか?愛(パドック)にも翼があるものを。』

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柾目のパドックと幻のイトウ*

昨日に続いてワンズ㈱さんのO様邸の無垢材のご紹介です。『ブラック・ウォールナット』が敷き詰められたリビングの中央の鎮座ましますのが、『パドックで作らせていただいた少し小さめの可愛いセンターテーブルです。凹凸のある変形サイズではなく、ふたつのテーブルをずらして並べているだけです。長さが1200X幅が400X高さ400㎜で、お子さんがちょこんと座ってお絵かきや勉強も出来るサイズです。このまま隣の和室の床板敷きのコーナーにも丁度収まります。


今回は内装とのバランスを考えて、あまり杢目が激しくないものをとのご要望でしたので、ご提案させていただいたのがこのパドックでした。通常、パドックというと削ると鮮烈な紅色を放つもの㊧ですが、このパドックは非常に色合いが落ち着いています。鮮やかな紅色も経年変化でアサメラのように茶褐色に退色していくのですが、これは退色してこうなったという訳でもありません。ご縁があって天然乾燥で20年近く経過した材が手に入り、その一部を使いましたが、信じられないくらい色合いが落ち着いています。

人工乾燥機で強制的に急激に乾燥させたものではなく、知らず知らずうちに倉庫の奥で時を経たものなので、こういう風に色合いが経年変化したのかもしれませんが、まぎれもなくパドックです。柾目という事もあるのでしょうが、一般的なパドックとは随分印象が変わります。こちらが塗装前の状態ですが、更に色合いが淡白で、到底パドックとは思えません。この材料は、耳の無いストレートカットの挽き板です。パドックといえば辺材の白身と赤身のコントラストも面白さのひとつですが、こちらはこういう素直な柾目の取れる大径木ですから全身赤身で、耳付板のパドックとはひと味もふた味も違った雰囲気があります。今まで〔パドックで柾目〕、という概念がありませんでしたが、まだこの手の挽き材がかなりあるので、しばらくはシャープな柾目のパドッククをご提供できます。しかし、この在庫が切れたら、柾目のパドックなんてあり得ない贅沢でしょう。


今回製作してもらったのも、ウッドワークかずとよさん。いつもながら要望に完璧に応えていただきました。写真では写しきれなかったのですが、込み栓には、アクセントとして貴重な黒檀を!趣味で家具やクラフトをされる方は増えてきましたが、それを仕事・生業として無垢材を扱える本当の職人さんは多くありません。ウッドワークかずとよさんもその仕事ぶりから引く手あまたでかなりの仕事を抱えられているご様子。この世界でも「偏り」が顕著になってきています。

板目と柾目という風に挽き方を変えるだけで、その木の持つ印象や雰囲気は随分変わってきます。家具などをデザインする際には、すっきりした柾目も使い方次第でとても効果的なのですが、柾目の材を取る為には相応の大きさが必要になります。当然同じサイズでも板目と柾目では価格的に随分な開きが生じます。例え価格的な問題をクリアしたとして注文をいただいたとしても、物理的な問題で柾目挽きは出来ない場合があります。いくらでも金は出すから、幻の魚とも言われる貴重な天然のイトウのルイベをすぐに食べさせろ!と言ったって、イトウが釣れなければ食する事は出来ません。どうしてもイトウが欲しければ、釣りキチ三平と谷地坊主を呼ぶしかないのですっ!突然のマニアックな例えかもしれませんが、自然相手の仕事の場合、お金さえ払えば何でも出来ると思ったら大間違い。人間の思惑通りになんかいかないものです。

そこから自然に対する畏敬や畏怖、感謝などが生まれたのですが、それを強引に人間の都合に合わせてお金の力で何でも解決し、欲望を満たしてきた結果が昨今の拝金主義でしょう。思い通りにならないからこそ、それを追い求めたり、それを追求する姿勢は大切だと思いますが、自然の摂理を捻じ曲げてまでそれを満たそうと思うのはどうかと思います。さて、かなり話が飛躍しましたが、そういう意味でも大変貴重なパドックですので、骨の髄までしっかり使いきらせていただこうと思います。右の埃まみれで薄汚れた板をひと削りするとこんない美しい肌が現われます。柾目挽きの方が、乾燥後の狂いも少ないのですが、その表情の妙味を楽しむ広葉樹の場合は、特別な指定がない限り板目挽きにされるのが普通です。そのため稀に柾目の広葉樹を見ると意外な発見や驚きがあったりするものです。今回のパドックはまさにその典型でした。
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ビッグユニット・パドックの興奮*

弊社の無垢材加工の懐刀・ZEN FURNITURE善家雅智君が現在弊社の作業場で一心不乱に加工に取り組んでくれているのが、両耳付きの1枚板の巨大なパドック(アフリカ産 マメ科)。写真では分かりにくいと思いますが、これで長さは6400mm。幅はおよそ750~800mmで厚みは125mmという、弊社の在庫の中でも大物中の大物です。数日前のブログで、倉庫の奥の方から材を引っ張り出す作業の事に触れましたが、これもまた何年ぶりかに太陽の光の下に現れました。

店舗のカウンターに6mの耳付きの1枚板を使いたいというお話があり、ようやく出番が巡ってきました。3m、4mクラスのカウンターであれば、もし在庫を切らしていても県内外の材木屋仲間で融通し合えるものですが、5m、6mクラスとなると材を移動させるのだけでも容易ではありません。サイズだけの問題ではなく、乾燥の程度、木目や色合い、耳の具合、反りやねじれなどのコンディションを自分の目で見て、自らの手で触って判断・確認せねば、安易に提案など出来ません

いつ売れるか分からないようなものを在庫として抱えておくことを過剰在庫と切り捨てる同業者もいますが、持っておかねば説得力がないのも木ならではの特性。時間も手間隙もかかりますが、こういう大物を扱わせていただく時、材木屋の醍醐味を感じ、アドレナリンが過剰分泌していくのを実感できるのです。あまりの大物ゆえ、製材所にて厚みを落としてもらいます。これぐらいのサイズになると、材を動かし仕上げるまでにたくさんの人の手が必要になります。

厚みのある材を半分に割ったりすると、大抵はどちらかに節が出たり、割れが出たりして残念な結果になる事が多いのですが、このパドックはどちらも完璧!しかもこのサイズに関わらずほとんど反りやねじれも無く、理想的な木取りが出来ました。もともと木裏にも目立った外傷は無かったので、ある程度予想は出来ましたが、こういう事って実は非常に稀です。普通は祈るような気持ちで製材に立ち会うのですが、あまりの綺麗さに感嘆!見事なものでした。さあ、ここから善家君の出番!この経過は来月・・・

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6.4mパドックのお出まし!*

大五木材にあるもっとも長い一枚板は6400㎜の『パドック』です。あまりに長いため、狭い倉庫で置いておく場所も制限されます。サイズがサイズだけに滅多に声がかかることも無く、せいぜい一年に2,3回くらい長尺カウンターありませんかと問い合わせが入って、こっちもそういえばアレがあったなと思い出す程度。通常は差し掛けの倉庫の一番奥の奥にしまいこんでいるので、ちょいと見ようと思っても、頭(?)だけを湖面から出したネス湖のネッシーみたいなもので全体像は想像していただくしかありません。

一応奥に片づける前に全身の写真は撮っているものの、あまりに長いので写真からはその大きさがほとんど伝わりません。やはりこういうものは自分の目で直接見ていただく事が肝心。しかしその前には、親のかたきとばかりにこれでもかとギュウギュウに積み上げられた木材があって、リフトで簡単にはねのけて、なんてレベルを超えています。なので、興味本位の方には申し訳ないですがご遠慮願って、このパドックを本気で使いたい、向き合いたいという熱い思いを持った人が現れた時に限って倉庫の奥からお出ましいただいております

そうしたら先日、そんな奇特なお客さんが続けて二人も現れまして、数年ぶりにパドックがお出ましになることになりました。持っていた広角レンズを割ってしまったため、アイフォンのカメラではスケール感が伝わりにくいと思いますが、最大のものは長さは6400、幅は800~1100㎜程度、厚みは125~130㎜。1本の原木から取れた7枚の板があり、1枚は売れたのであと残り6枚。今回は現場の収まりの都合で、その中では比較的狭くて耳に近い板を検討していただくことになり、近いサイズのモノを2枚用意しました

そのうちの一枚は元の方に大きなコブがあって、そこから先は細っているという変形なのでちょっと使いにくい形。しかしこういうモノに興味を持つ方っていうのはむしろこういう変形サイズに惹かれる人が多く、案の定オーナーもこのコブが何とか活かして使えないものかと工務店さんと皆で真剣に思案。ああでもない、こうでもないと何度もリフトで板を裏返したり向きを変えたり、こういう話をしている時が材木屋をしていて一番楽しい時!明日に続く・・・


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眺めのいいパドック*

6.4mのパドック、さすがにヒョイヒョイと簡単にひっくり返すことも出来ないので、リフトですくって上まで上げて下から覗き込んでは、あーでもない、こーでもない。昨日書いたように元の方に大きなコブがあって、通常のカウンターとしてはどう考えても収まりが悪い木だったのですが、わざわざ弊社にまで木を見に来られるお店のオーナーですから、これぐらいの変化は全然許容範囲。それどころかもっとパンチのあるのが欲しかったと仰っていただき、いよいよ偏屈材木屋にも店主を超えるような偏屈者が集まってくるようになったと感慨ひとしお!

しかしまあそこは現場の設計上の収まりやバランス、コスト、納期等々複雑に入り組んだおとなの事情という事もありますので、どこかでは着地点を見出さねばなりません。オーナー的にはこの変形に強く惹かれておられたと思うのですが、今回泣く泣く「おとなの事情」というものを汲み取っていただき、もう一枚のあまり変化の少ない方に決めていただきました。変化は少なくとも、もっとも辺材部分なので、樹皮もガッツリ残っていてどういう風に使うかというところでセンスが問われます。

アングルの関係+カメラマンの腕で、なかなかこの巨大なパドックのスケール感が伝わらないのがもどかしいのですが、リフトで上げた板を下から映せば少しは伝わるかも。丸太を太鼓挽きにした一番外側の板なので幅自体はそれほど広くはないのですが、長さ6.4mというところにこのパドックの価値があります。弊社に辿り着く前に既に、板になって10数年以上が経過していたということもあって乾燥は完璧!地べたにおいて、相当に頑張ればひとりで裏返せないことはない程度まで乾いております。

お客さんにしっかり乾燥していますよ~という事をアピールするためのデモンストレーションでよくやる手ですが、最近は腰への負担を考えて禁じ手としていたものの、さすがにこれだけ乾燥が完璧だと個人的に出来るかどうか挑戦したくて、お客さんがいない時に挑んでみました。板がスローモーションのようにゆっくりひっくり返っていく瞬間、何とも言えない快感!そうやってこんな大物が人間ひとりの力でひっくり返せるようになるまでには、どれだけの時間が費やされてきたことか・・・。

逆に言えばそれは「売れなかった時間」とも言えますが・・・。昔みたいに大工や工務店さんが、在庫としてこういう材を買っておいて自社で乾かすということなら生材ででも売れたのですが、今は「たちまち今すぐ現場で使う必要な量を必要なだけ」買われる時代。いかに乾燥材を持っていてタイミングよく販売できるかという事が命題です。偏屈な主が偏屈な木材を売る弊社の場合は、そんな木を受け入れてくれる寛容で偏屈なお客さんといつ出会えるかということになりますが、最近その機会が急速に増えてきたというか、そんな人ばかりになってきた!嬉しいぞ~!続く

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ALLEGRIA COFFEE・歓喜のパドック①*

さて、本日はその『6.4mのパドック』を誰がどこに使っていただいたのかについての話。松山市内で、はなみずき通りと枝松町で営業をされている『ALLEGRIA COFFEE(アレグリア・コーヒー)』さんが、一番町にあるローソンの2階(ベティ・クロッカーズの跡地)に新たに出店される3号店のカウンターとして使っていただきました。施工は才気煥発な社長の川上陽介君が率いる店舗&家具専門のすずかけ商会、勢いがあります!自然素材の大好きなオーナーを弊社に連れて来てくれたのも今回が二回目。

ちょっとした棚板ぐらいであれば、写真を撮ってメールで送ってやり取りすれば事足りますが、さすがにこれだけの大物となると実物をご確認いただく必要があります。こういうものってファーストインプレッションで大体決まります。最初にお見せした時の表情、反応で、「こちら側の人間」かどうかが分かります。まあ、すずかけ商会さんがわざわざ連れて来られるようなお客さんは基本的に「こちら側の人間」なので、あまり心配はしていないのですが、要はどれぐらいこだわられているかの深度。

今回はオーナーが、本当はもっとパンチの利いたのが欲しかったと仰るほど深海魚級の、弊社にとってはど真ん中ストライクのお客様でしたので、木選びも使い方もとことんこだわっていただきました。最近、若いオーナーがカフェを初めて開業させるのでそのカウンターが欲しいと言ってご来店される機会も少なくないのですが、中には「予算も無いのでとにかく安いモノならなんでもいいので」と言われる事もあります。事情はあおりでしょうが、そういう話を聞くとそこで出されるコーヒーの味も薄っぺらいものじゃないだろうかと勘ぐってしまいます。

何にこだわられるかはひとそれぞれで、予算のバランスもあるでしょうし、カウンターばかりにお金をかけていいというものではないでしょうが、「神はディティールに宿る」の言葉通り、店づくりの細部にまでこだわる(決してお金をかけろという意味ではなく)姿勢は大事だし、カウンターひとつの交渉でオーナーの店にかける熱意も透けて見えるというもの。そういうお店ならば完成後も客として行ってみたくなるし、友達にもお薦めします。ちょっと前置き長くなりました、明日はカウンターそのものをご紹介させていただきます。先にチラ見せです(笑)。明日に続く・・・

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ALLEGRIA COFFEE・歓喜とパドック②*

本日も6.4mパドックALLEGRIA COFFEE(アレグリア・コーヒー)さんの話。材木屋としては、長い木は出来るだけ長く使っていただけるのがありがたいのですが、さすがに6m超えの板となると現実的な運搬・搬入の事を考えるとそのままで使えるケースは稀。とはいえ、折角の長物なのでこれを使わなければならない、これでなければならないような必然性のある場所で使っていただきたいという思いはあります。その願いが届いたというよりも、気持ちは一緒だったようで、この木なればこその使い方をしていただきました。

大きなガラス窓に面するメインのL型カウンターと一番長いカウンターの天板として使っていただく事になり、余すところなくキッチリ使い切るため、現場を仕切るすずかけ商会犬伏君と何度も何度も木取りの確認。本当にあと数㎜をどうするかで喧々諤々。厚みが100㎜あったのでまずは厚みを落として、長さに合わせてカットしていくわけですが、6mを超えているので自重で多少の反りもあって、希望通りの厚みになるのかどうか。製材所に何度も足を運んで入念に打ち合わせ。最後は祈るような思いで・・・

どうにか無事に製材ができ、予定していたサイズでどうにか取ることが出来ました。片面にはガッツリ樹皮が残っていましたので、木裏を使ってL型の止めにする事に。丸みのついた板をL型につなぐという至難の加工をしてくれたのは、いつものZEN FURNITURE(ゼン・ファニチャー)善家雅智君。善家君とずずかけ商会の川上君とは高校の同級生で旧知の仲。とりあえず指定サイズの板にまで挽ければ、後は善家君の仕事。まあ任せておけば心配はいりません。見事に完成。オイルが染みて眩しいほどの輝きが!

このパドックの色は写真を加工しているわけではなくて本来の地の色。照明の効果はあるものの鮮やかなオレンジ色は、荒材の時の状態からは想像も出来なかったのではないでしょうか。残念ながらこの妖しいまでのオレンジ色も永遠のものではなく、時間とともに経年変化でくすんでいってはしまいますが、それもこのパドックがそれだけ長い間、この店で活躍してくれた証というもの。木も出会うタイミングでその表情は一日一刻変化していきます。今のオレンジ色のパドックに出会いたい方は是非早めにお店にGO!

ALLEGRIA COFFEE(アレグリア・コーヒー)

定休日 :無休

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その後のパドック賛歌*

先日のブログで、6.4mの長いパドックの板を使ったいただいた話をアップしたところ、そんな長い板があったら使いたかったのに~というお声が数件あがりました。過去の現場を引き合いに出しての「もしも話」がどれだけ意味のないモノかは嫌というほど味わっているので、そこにわずかな悔いも無念もありません。それよりも、やはりこういうモノも持ってますというPRは言葉だけでなく、実物をいつでも見えやすい場所に展示しておいて、頭の片隅にでも置いてもらう必要があると感じましたので、あの時一緒に奥から引っ張り出した一枚を製材する事に。

まだ6.4mのビシビシの一枚板は数枚残っているので、根元に大きなコブがあってそのままでは使いにくい一枚を、コブのところでカットして、更に厚みを半分に割って、使いやすいサイズにして倉庫の見やすいところに置いておくことにしました。ということで2枚に割ったコブのところがこちら。長さは1.5m足らずですが、幅は広いところで1100㎜にもならんとする大きさでかなりの迫力!板のままでは経年変化で表面がすっかり色褪せてしまって、何の木なのかすらも分からない状態ですが、厚みを割ると眩しいほどのオレンジ色が出現!

こういう風に耳の変化が極端だと、使いにくいと仰る方もいらっしゃいますが、弊社にご来店されるような方は、まず「普通の木」なんて求められていません。先の店舗でも、オーナーが「本当はもっとパンチのある木が欲しかった!」と仰られていたぐらいで、多くの方が使いやすいとか利便性よりも、エッジの利いた存在感とか、とんでもない豪快さ、呆れるような個性、非常識なサイズ、マニアックなこだわりなどを求められます。あまりそういう事ばかり言っていると、普通の方がドンドン来店しにくくなってしまいそうですが、もはや後戻りは出来ません。

われ、この道を突き進むのみ!の心境で普通ではない独自路線を極めることでしか、零細弱小材木屋の生きる道はないと思っています。それはともかく、ご来店された方は是非このパドックも見ていただきたいです。商業店舗のテーブルだけを狙っているわけではありません。いや~面白いから自宅に使ってみようか!なんて方もお待ちしています。黒い筋が入っていますが、これは木の柄ではなく鋸刃の跡なので、削ればこの筋はなくなります。これから仕上げてオイルを塗れば、浸透してもっとオレンジ色が鮮やかに映えます。厚みは現状で60㎜と75㎜

加工して仕上げれば現状から-5㎜程度で収まると思います。出来る事ならこの形のまま使っていただきたい。根元の方なので杢も面白くて、昔ならば衝立という出口もありましたが、さすがに今時はこのサイズの衝立が置けるようなエントランスのあるような家もないでしょうから、テーブル座卓が出口になると思います。乾燥は完璧ですので、このサイズとしては信じられないぐらい軽いています。6.4mからこのコブをカットして残った(というかそちらがメインともいいますが)、ほぼまっすぐな耳の一枚板もありますのでパドック好きな方はパドック尽くしという手もありますぞ!


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ビッグユニット、ランディ・パドック*

弊社には必要以上に大きなモノがいくつかあって(まあ、それが面白いと思って自分で買ってきたわけですが)、自分の中では敬意を込めてそれらを『ビッグ・ユニット』と呼んでいます。野球好きな方ならお察しの通り、2mを超える長身で160キロを超える剛速球を投げ込んでいたメジャー・リーガー、ランディ・ジョンソンのニックネームです。通算300勝を越え、野球殿堂入りも果たした名選手ですが、投じた球があまりに速すぎて、たまたまバッターの前を横切った鳩に直撃するという衝撃的な事故もありました。とにかくすべてが規格外の選手でした。

そんなランディ・ジョンソとは何の関係も無いのですが、大きなモノはただ大きいというだけで価値がある、という材木屋ならではの価値観が染みついていて、(必要以上に)大きなモノに対してはもうそれだけで圧倒され、魅了され、つい買ってしまう事があります。当然、懐具合との相談になりますので、置き場所も無いような巨大なモノには手が出ません。あくまでも『私の中のビッグユニット』(←世間的にはリトルユニット)なんですが、それがまたなんとも愛おしいというか、手元に置いておきたいというか・・・

そんな『私の中のビッグユニット』の1つがこちらの『パドック』。以前にもご紹介しましたが、写真の奥の板は現在ではカフェのカウンターテーブルとして活躍中です。手前の根元が大きく張り出した方のパドックは、いろいろ事情がありまして長さと厚みをカットしました。大きな木は大きいなりに使ってもらうにこしたことは無いのですが、さすがに長さが6400㎜で、幅が1000㎜、厚み120㎜クラスとなると、そのままの大きさでは使うのは難しいどころか、動かす事すら容易ではありません。泣く泣くこの一枚はカットして販売することにしました。

そうやってカットしたうちにひとつがこちら。これでも長さは1400㎜、最大幅で1000㎜、厚み60㎜ぐらいはあります。売るというよりは、こんなモノもありまっせ的な看板として展示しとこうかなと思ったいたら、テーブルとして売れました!仕上がり具合をご確認いただくために表面をサンダーで磨いてオイルを塗ると、この美しさ!!売れて嬉しいような、手元から離れるのが悲しいような・・・。ご購入いただいた方が元甲子園球児というのは、もしかしたらビッグユニット、ランディ・ジョンソンのお導きではなかろうかと思ったりもしているのです。サンキュー、ランディ

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 Too Big To Sell!*

ブログを書いている最中で、まだ『今日のかけら』に取り上げていない木があれば、とりあえず入口だけでもこじ開けておこうという方針転換にしたので、丸亀の道中で『ミズメザクラ』に立ち寄りましたが、話を今治、西条で納品させていただいたところに戻します。今治で納めさせていただいたのがこちらの『パドック』の一枚板のテーブル。写真では見切れていますが、その奥にブラックウォールナットの幅剥ぎのベンチがあります。仕上げは、もちろん木の質感を損なわず、木の触感が楽しめる植物性オイル塗装+蜜蝋ワックス


実はこのパドックを選びに弊社にご夫婦で足を運ばれたのは数か月も前の事でした。ご希望のサイズよりはかなり大きかったのですが、一枚板の圧倒的な存在感と迫力に魅入られてこれに決めていただきました。少し変形したフォルムも気に入ってもらい、豪快にその形を生かすことになりました。しかしその後弊社の決算もあったり、家具の製作・納品のスケジュールが立て込んでいたこともあって、数か月もお待ちいただきました。通常はそこまでお待たせすることはないのですが、今回はお客さんに忍耐を強いることに・・・。

自分がそうだからそう思うのですが、注文する際は「急いでいないので納品はいつでもいいですよ」と言いながらも、頼んでからは日々思いが募って、妄想のテーブルの方がどんどん膨らんでいきます。あまり待たせると、この妄想のテーブルが先に完成して納品されてしまいます。そうなると満足度のハードルは世界記録並みにあげられてしまうので、あまりお待たせするのはこちらも怖いのです。今回は選ばれたパドックがパンチの利いた個性的な材だったので、妄想のテーブルに後塵を拝することはなかったようです。

以前にこのブログでも書きましたが、このパドックは6m越えの元口が張り出したビッグサイズのパドックの一枚板を「解体」した際に出来たもの。元の状態だとあまりに大きすぎて正直どう売ればいいのか持て余していましたが、解体後は短期間で嫁ぎ先が決まりました。超巨大企業が経営難に陥るとしばしば、金融機関から『Too Big To Fail(大きすぎてその後の影響を考えると潰せない)』という言葉が使われますが、『Too Big To Sell(大きすぎて売れない)』ってこともあります。 嗚呼、そんな木がパドック以外にもいくつかあって、そろそろ決断しないと・・・

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6.4mのロングパドックは語らず*

昨日のパドックは、6.4mのロングサイズの『パドック』を「解体」したものの一部ですが、ロングサイズのパドックといえば、春に行った岐阜の市場に出品されていた6.4mのこちら!弊社で在庫している6.4mのパドックは、縁があって10年ぐらい前に入手することが出来たもので、さすがにこれぐいのサイズのパドックはなかなか手に入らないだろうと思って、思い切ってまとめて『おとな買い』しました。普段は小さくて安価なサイズの板を沢山買って、ボリュームで勝負する買い方の私にとってはかなり思いきった仕入れでした(ドキドキ)。

それまでに10年以上も経過していて、乾燥状態が完璧だったというコンディションの良さが、私の背中を押した要因ですが、こういうサイズの木は『注文があるから仕入れる』というのではなく『先を見越して仕入れる』という感じなので、8枚ほどまとめて仕入れたのですが、最初の1枚目が売れるまではかなり不安でした。「材木屋なんだからせめてこれぐらいのモノは持っていないと恥ずかしい」なんて大見得を切って仕入れたものの、ずっと売れなかったらどうしようなんて内心焦りもありました。その後時間はかかったものの半分ぐらいは売れてくれてひと安心。

今は逆に、全部売れたらどうしようなんて思ったりもしていますが(笑)、そんな時にこのパドックに出会いました。一昨年から今の時代に即して商品構成にするため本格的な在庫の見直しに取り組んでいて、前時代的な商品には別の出口を見つけて再加工したり、廃盤の商品などは見切りをつけて、今後は建築分野以外でも活用できる材という基準で在庫を調整しています。そういう時期でなければ、思わず衝動買いしてしまいそうなほど魅力的なパドックでした。10年前とは逆に、まだ未乾燥だったことが私の心にブレーキを踏ませました。

嗚呼、私もモノの分別がつく歳になったものだと感慨にふけっていたら、一緒に行っていた金沢の御大がそのうちの数枚を落札!その様子を隣で見ていて、思わず私も「いかん、これは買っておかないと!」と衝動で手を挙げそうになりました。危ない、危ない・・・。他人が買ったものはよく見えるとはこういう事で、後から見れば見るほど、買っておくんだったなあと思うものの、冷静になれば買ったとて置く場所にも窮する。在庫している6.4mパドックも倉庫の奥の奥にしまい込んでいて、「ちょっと見たい」と言われても簡単には動かせず

以前ならそれでもやっぱりあの時買っておくんだったとダラダラと後悔したものですが、最近は倉庫の現状やら経営環境の変化をしっかり受け入れ、引きずることはありません。身の丈に合った仕入れが大前提。といいつつ、ここ一番の勝負場まで我慢を重ねます。ところで、いま在庫しているパドックはいろいろ紆余曲折があってから弊社にやって来たのですが、このパドックを見て、もしかして大元の出どころ(製材所)は同じところだったのでは?と思ったりもしました。うちに来る前に謎の期間が10年以上はあるということなので延べ20数年以上も前の話で、真実は闇の中・・・木は語らず。

 

今日のかけら126

アユース

Ayous

アオギリ科・広葉樹・アフリカ産

学名:Triplochiton scleroxylon k.Schum

別名:オベチェ(Obeche)、アバチ (Abachi

サンバ(Samba/コートジボワール)、ワワ (Wawa/ガーナ)

気乾比重:0.32~0.50

 

幅広アユースの彷徨①*

★今日のかけら・#126【アユース/Ayous】 アオギリ科・広葉樹・アフリカ産

アユース、あまり外材を扱わない方でもその名前ぐらいは知っているだろうと思われるアフリカを代表する第一級の高木です。薄いクリーム色の木肌で、室内の装飾材であるモールディングなどに利用されています。成長すると高さが20~25mにも達し、直径も1mを超すような大木になりますが、基部には6~8mもの薄くて直線的な板根(ばんこん)が出来ます。と、こんな事を書きながらも実際に立っている姿をこの目でみたことはないわけで、嗚呼いつの日にかアフリカのジャングルでその御姿を仰ぎ見てみたいものです。

ところでこのアユースは、気乾比重が0.32~0.50、平均で0.40ということからも分かるように非常に軽軟な木です。それでいて大木になるので、幅広で軽い板が容易に手に入ります。通常バンドル買いといって、1.5~2.5㎥程度にまとめられた梱包で仕入れるのですが、その中には尺越え(約300mmUP)の幅広が多数入っています。今回仕入れた梱包などは、総数50枚のうち、およそ半分が尺越えで、最大のものは580㎜!不謹慎なもので、それぐらい幅広が多いと、幅広にありがたみを感じなくなってしまいます。

でもさすがに尺越えの板を細かく割り返すのは気が引けるので、結果的に幅広い板はずっと倉庫に残ることになります。いつかきっと、幅広い板に声がかかる日がやってくる、幅を狭くするのは容易だが広くは出来ないのだから、などと自分で自分に言い聞かしながら、幅広を割るのはモッタイナイ、モッタイナイと呪文を唱えながら、幅広を奥にしまってしまうため、幅広いいたばかりが残ってしまうことになるのです。これが他の木であればそのうち価値も高まるのでしょうが、残念ながらアユースに幅広の出口が見えない・・・。

木目はぼやけていて年輪ははっきりしない事、非常に軽軟でテーブルやカウンターなどにはあまり適さない事、などの理由から幅広い用途が確立していないため、いくら幅の広い板があっても求められなければ価値がない。よく知られるアユースの用途としては、前述したモールディングなどの装飾材の他には造作材、バードカービングなどの彫刻材、ハイヒールの踵(かかと)、家具用の芯材、内装の木摺などがあります。バードカービングとしては『ジェルトン』が有名ですが、どちらも均質で収縮が小さいという特徴が似ています。明日に続く・・・

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幅広アユースの彷徨②*

categories 1. 今日のかけら, 3. 木の仕事 | datetime 2017/03/11 PM12:39

本日も『アユース』の話。愛媛では昔から結構馴染みのある木で、いわゆる『ラワン』が姿を消して以後、幅広で比較的軽軟な材質の木の一つとして、『ペルポック』と『アユース』がよく使われていました。私が本格的に広葉樹に目覚めるずっと前から、日常的に『アユース』という名前を伝票に書き込んでいた記憶がありますので、かなり以前から弊社の倉庫にもあったはずです。当時はこういったアフリカ材を扱う人も多くなくて、その流通ルートも限られていて、専門業者が個別の店に訪問販売していました。

当時まだ私の中の『かけらの魂』はハッキリと覚醒されてはいませんでしたが、そういう専門業者に対して何か普通の材木屋とは違う匂いを感じ取っていたように思います。尺貫法や木材業界の独特の隠語などがまるで聞いたことのない国の外国語のように聞こえていた私の耳には、彼らが繰り出す「フィートやらインチ、インボイス」といったキーワードの方によりシンパシーを感じたのです。何しろ業界の隠語には指南書はなく、すべてが口伝なのでまだ生真面目だった青年には非常に取っつきにくい言葉だったのです

そういった専門業者が仕切っていた当時、アフリカ大陸からやって来たというだけで、そこら辺で採れたスギとは別物なんだという偏った舶来偏重主義が徐々に私の中に生まれたのかもしれません。しかしその後、はるばるアフリカからやって来たこのアユースでは何度か痛い経験をしました。まだネットもない時代、その木の性質や特徴などについては、専門業者の口から聞くしかありませんでした。そのわずかな情報だけを頼りに、見てきたがごとくに木を語り販売していたのですから、随分いい加減な時代でした。

そういうぐらいなので、こちらもよく特性が理解できていませんでした。このアユース、温度変化に対してあまり変動しないという特徴があり、乾燥段階で大反りやねじれも少なく、乾燥も比較的スムーズなのですが、問題は早く乾燥させないと木材腐朽菌の影響を受けて青変してしまうとと、虫害を受けやすいのです。輸入材については既に人工乾燥が前提でしたが、まだその技術が拙い工場もあって、乾燥が十分でない材も流通していて、しばらく保管していて中を開けたらビッシリカビが発生していたことがあります。

まだ初期段階なら削ればどうにかなるものの、中の方まで入っていたらまったく使い物になりません。乾燥機に入れるまでにそうなったのだと思われますが、当時はアユースに限らず乾燥不良材も結構あったりしました。それともっと怖いのが虫の被害。あまり経験したくないことですが、以前にこのアユースがヒラタキクイムシに食害されれとんでもない体験をしました。専門メーカーが製造されたアユースのモールディングが図面で指定されていて、それを納品させていただいたのですが、施工も無事終わって数年後・・・

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幅広アユースの彷徨③*

categories 1. 今日のかけら, 3. 木の仕事, 4. 草と虫と鳥と獣と人と | datetime 2017/03/12 PM12:38

本日も『アユース』の話ですが、かつて虫に食害されて痛い目にあった経験。もう随分前の話ですが、県内の某ホテルに大手専門メーカーで作られたアユース製のモールディングを大量に納品させていただいたことがあります。アユースは前述したように幅広で反りやねじれの少ない均質で軽軟な材が比較的安価で手に入ることから、リブ(波型)やクラウンなどの特殊で緻密な細工が求められる室内装飾部材の世界では非常に重宝される木材なのです。また塗装のノリも申し分なく、理想的な素材のひとつなのです。

ただ問題は虫に食われやすい、というか立木の段階で卵を産み付けられているケースがあって、加工過程の加圧や熱でもへこたれない根性ある虫がいて、そいつらが残っていると、もう後は大量増殖した彼ら一族に内部からサクサクと、文字通り首の皮一枚まで食い尽くされていくというホラー映画のような事態に陥るのです。私が経験したのがまさにそれ、施工後数年経った頃、連絡があり、どうやら虫が出たらしいので来てほしいと。虫って、もう数年も経っているのに・・・と怪訝な気持ちで現場に向かいました。

ホテルの宴会場の天井や壁面に取り作られたリブやらクラウンやら様々な形状のアユース製のモールディングは美しいものでした。納品時にも施工作業を見ていましたが、大きなモールディングも鋸で簡単に切断できて、天井付近まで軽く持ち上げている様子を見ると、なんと施工性のよい素材なんだろうと惚れ惚れしていたものです、数年後再びその現場に来るまでは・・・。室内に入ってもすぐにはその異常に気が付きませんでした。どこに虫が?!という感じだったのですが、壁際の足元を見ると・・・

そこには赤い絨毯の上に、まるでグリム童話のヘンゼルとグレーテルが、帰り道に迷わないようにパン屑を道に置いたように、白い粉が壁伝いに点々と・・・。当時はそんな事を考える余裕もありませんでしたが、とにかくその白い粉がアユースのものであることは間違いなさそうなので、それがどこから来ているものなのかを探さねばなりません。しかしそれが目の届く壁や腰板の範囲にはなくて、穿孔跡が一切見つからないのです。もしや、宴会場の高い高い天井の壁際に張り巡らされたあのモールディングからなのか?!

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幅広アユースの彷徨④*

categories 1. 今日のかけら, 3. 木の仕事, 4. 草と虫と鳥と獣と人と | datetime 2017/03/13 PM12:38

嫌な予感は的中!本日も昔のアユースのトラブルの話。天井作業用の専用リフトに乗って、天井装飾と同じ目線になるところまで上がってみると、白く塗られたアユースのモールディングのところに無数の黒穴が!!その下の額縁には穿孔された木屑が溜まり、それが溢れて下に落ちた形跡がありました。しかもその数が半端ではありません。一瞬、自分の血の気が引くのが分かりました。しかしそこではどうすることも出来ず、とりあえあず会社に戻ってすぐに施工会社とメーカーに連絡して対応策を検討することに。

どこでどうして虫が入ったのかという問題はあるものの、とりあえずどのぐらいの被害があるのかを調べなければならないので、後日施工会社によって足場が組まれ、木紛のある部分をすべて調査し、モールディングを取り外して内部を調査。その結果、驚くべきことが分かりました。穿孔跡のあるモールディングは、表面数㎜のところまで内部をすっかり食い尽くされていて、スポンジ状態になっていて、軽く持っただけで崩壊してしまうほどになっていたのです。この時ほど虫害の怖さを感じた事はありませんでした。

そのままにしておくわけにはいかないので、問題のあるモールディングはすべて取り外されました。現場の調査と同時進行で、なぜ虫が発生したのかをメーカーも調べてくれていたものの、取り急ぎ現場を復旧せねばなりません。しかし、再度同じような事があってはいけないということで、アユースで作り直すことを施工会社は拒絶。メーカーは絶対の自信があるとはいえ、事実そういう事態になっているので、さすがにアユースでというわけにもいかず、急遽セラミック製で製作することになりました。

後日その作り直したセラミック製のモールディングを納品して取り付けてもらいましたが、問題は責任の所在。虫は一体どこではいったのか?!大手の専門メーカー側は品質には十分気を配って管理していて、虫の入る余地は無いという姿勢。しかし、現場では下地に疑いのあるコンパネなどを使っておらず、施工後に現場で虫が侵入してきた形跡も無い。しかも外部と繋がる窓も無い空間なのです。弊社に入って来た段階では、割れ物ですので厳重に個別梱包されていて、中を開けてもいないので箱を破って入ってきたとも考えらず謎は深まるばかり?!

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幅広アユースの彷徨⑤*

categories 1. 今日のかけら, 3. 木の仕事, 4. 草と虫と鳥と獣と人と | datetime 2017/03/14 PM12:36

この話、こんなに長く書くつもりはなかったのですが、今後のためにも経験してきたこと、トラブルなどについては詳しく書き残しておこうと思います。商品は弊社で数日間保管しただけで、そのまま現場に納品したので、一体どこで虫が入ってきたのか不明。こういうケースの場合、もともと立木の段階で卵が産みつけられて、加圧や熱にも耐えた虫が残存していたのではないかと思うのですが、メーカー側も一歩も退かない状況で、仕方なくメーカーは作り直した材を無償提供、弊社と施工会社で取り付け工事費を折半することに。

しかし問題はこれで終わったわけではなかったのです。最初に問題が発生したのが6月でしたが、翌年の梅雨前にも再び虫が発生したとの電話が・・・!そうです、奴らはまだ全滅してはいなかったのです。早速現場へと向かうと、前年セラミックパーツに取り換えた部分は無傷であったものの、それとは違う別の場所から穿孔した粉が!前回、万が一もし木粉に気が付いたらすぐにご連絡して下さいと告げていたので、今回は虫穴はまだ僅かでした。それで専用の殺虫剤でひとつひとつ虫穴に薬剤を注入することに。

それから数週間経つと再び連絡が入り、また虫が発生!するとまたまた別の場所から木粉が・・・。それからその年も何度かホテルに足を運びました。そしたらまたその次の年の6月に連絡が!またまた違う場所から虫が・・・という事を何年か繰り返しました。その間、徐々に虫穴の数も減っていき、発見が早くなったこともあり、最初の時のような状態になるまで食い荒らされることもなくなり、最後は僅か数個ということなり、いよいよ梅雨になっても連絡が入らなくなり、アユースの虫騒動は幕引きとなったのです。

そういう事があって一時期アユースとは疎遠になったのですが、いつもは「木は決して人間のためだけに存在するのではない」と言っている手前、それではアユースに対して申し訳ないと思い、その後アユースも再び扱うようになりました。恐らく先住民であった虫にしてみれば、迷惑な話であったかもしれませんが、私も家族、会社と生きていかねばなりません。そんな問題のあったアユースではありますが、だからこそ今となってはその特性もしっかり理解できるようになり複雑な愛情すら湧き起ったりしているのです。

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幅広アユースの彷徨⑥*

categories 1. 今日のかけら, 3. 木の仕事 | datetime 2017/03/15 PM12:35

この数日間『アユース』について虫とか青カビとか、ネガティブな事を書いてきましたが、アユースを貶める気など毛頭ありません。ただ、それぞれの木にはそれを扱うにあたっての注意事項があるので、理解して使っていただくためにも具体的な事例をあげたほうが分かやすいのではないかと考えています。また私の場合は、木が悪いのではなく、その扱い方や特性を理解していなかったがための失敗というのがほとんどですが、喉元過ぎれば熱さを忘れてしまう能天気な自分自身への戒めでもあります

軽軟であるため、ある程度用途は制限されるものの、今どき300㎜上の無節の材が比較的安価な価格で手軽に入手できるなんて実に贅沢な話です。もしアユースがもっと硬くて、しっかりした木目が現れるような木であったとしたら、テーブルにカウンターに、造作材と、様々な場面で引っ張りだこだったことでしょう。無い物ねだりをしても仕方がないので、その軟らかさを生かして『カランタス』のようなパネリングに加工するのも面白いと思います。こちらは先日ご注文いただいて加工した小幅の本実目透かし加工のパネリング

同じく軽軟な東南アジアの『カランタス』も小幅のパネリングに加工することで、弊社においては活用の幅がぐっと広がり、今ではオリジナリティのある壁面・天井材としてすっかり定着しました。アユースのについても同様の加工ができますが、アユースはカランタスと比べてもはるかに広い板が取れるので、あまり小幅板に挽き割るのもモッタイナイので幅広のアユースの出口についてももう少し考えてみようと思っています。軟らかいという事は決してマイナスな要素ではないことを証明せねばなりません。

最後に蛇足ながら、弊社の倉庫でユースの素材を見ていただく際によくある話です。材質が軟らかいため板に挽いた際に表面が豪快に毛羽立つ㊧のですが(私自身もどういう仕組みでこういう具合になるのかよく分からないのですが)、それが最近人気のキャタピラー加工のように「いい具合」に削られているように見えるらしく、このまま使いたいという要望もあるのですが、狙って加工しているわけではないのでそれは無理なのです。でもそういう要望は次第に増えてきているのでもしかしたらここに軽軟材の出口あるのかも?!

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