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今日のかけら136
【ウエスタンレッドシーダー】
Western redcedar
ヒノキ科クロベ属・針葉樹・北米産
学名:Thuja plicata
別名:カヌーシダー、ジャイアントシダー
シングルウッド、アーボルビタ
和名:ベイスギ(米杉)、 アメリカネズコ(亜米利加鼠子)
気乾比重:0.39
美しい色やねん中ノ島線*
1. 今日のかけら |
2010/06/22 PM12:45
★今日のかけら・136【ウエスタンレッドシーダー/米杉】Western redcedar ヒノキ科・針葉樹・北米産
| 2時間後キャンセル待ちのお知らせがあり、「1番から3番の方~」。ガックリ・・・キャンセル番号4、5番の哀れな二人は仕方なく陸路へ向かおうかと力なく立ち上がりました。その時、折れかかった二人の心を繋ぎとめたのは、「キャンセル番号4番5番の方~」という救いの神の声。神様はいる~!嬉々として飛行機に乗り込んだ隣の席には、偶然にも愛媛木青協OBの鶴居秀夫社長(鶴居産業)の姿が!「天候によっては引き返すかも」という不安を残しながらもどうにかこうにか飛行機は飛び立ちました。いやはや前途多難な船(空)出となりました。 |
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心配も杞憂に終わり相当に揺れながらも無事に到着。久し振りの大阪で、久し振りに地下鉄に乗ってみると、美しい地下鉄の内装に出会って驚きました!改札を抜けた内装は渋い赤褐色の『ウエスタンレッドシーダー(ベイスギ)』が一面に貼られていました。かつては防災上の理由で地下にこれだけの無垢材を使用できませんでしたが、『不燃処理』をする事で可能となりました。チャネルオリジナルさんの『不燃木材・ウイルウォール』を使用されていましたが、圧巻! |
| これだけの圧倒的なボリュームも、いつもこの路線を利用されている地元の方にすれば、すっかり見慣れた光景で特別な感情もないかもしれませんが、今そこに在る木の存在感は気持ちを優しくしてくれるのではないでしょうか。さすがは「世界でもっとも美しい木」と形容されるウエスタンレッドシーダーだけの事はあります。ワインレッドの濃い紅褐色と淡い白身が混じり合って、重層的で深みのある中にも趣きのある空間となっていました。決して硬い木ではないのですが、この色合いとボリュームからどっしりと落ち着いたある種の安心感のような物が感じられました。全体的には柾目が多く目に付きましたが、所々に顔を見せる板目とのバランスも絶妙です。米杉で彩られた巨大な柱は、こういう場所でも木は使えてたっぷりと自己主張できるんだぞと語っているように感じられ、私にはとても美しく眩しく映りました。 |
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この画像は中ノ島線の大江橋駅のものですが、中ノ島線の開通そのものが2008年10月という事ですから、綺麗なのも当然かも知れませんが、見る限り悪戯書きや傷や汚れも見当たらなかったです。触るとかなり硬さを感じましたので、何か特別な塗装をれているのかどうか分かりませんが、実に綺麗な状態が維持できていたように感じました。立ち止まってじっと壁を見つめ、カメラを向ける背広姿のおっさんの横を怪訝そうな顔をした人達が通り過ぎていきます。いいんです、どう思われても! |
| ずーっと眺めていたいほど、惚れ惚れする美しさ。木材の良さは個人の家に使ってこそ(なるべく身近な所で触れたり体感できるから)分かるというのが私の持論ではありますが、これだけのボリュームを見せられると公共施設における「使用量」という意義を肌で感じます。公共施設における木の使用量は今後ますます増加していくでしょう。当然そこには不燃や準不燃、難燃などの条件が付いていくでしょうが。どういう経緯で中ノ島線の駅構内の内装に米杉が決まったかは知りませんが、私はそれが『外材』であることに何の違和感も感じませんでした。県産材や地域材を使う意義や意図は充分理解できますが、ただ闇雲に県産材を使うことよりも、いかに木を美しくデザインし町に溶け込ませるかということが重要だと思うのです。そこに木が在る事に違和感を感じさせないのもデザインの力だと思います。 |
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世界でもっとも美しい木の裏側*
2. 木のはなし・森のはなし, 3. 木の仕事 |
2017/02/01 PM11:05
| 「世界でもっとも美しい木」の1つとも称される『ウエスタン・レッドシーダー(米杉)』ですが、その魅力のひとつは、いい意味での『色むら』ではなかろうかと私は思っています。よく言えば『色のバリエーションが豊富』とか、『表情が多彩』ということでしょうが、その差がかなり顕著ですので好みの分かれるところかもしれません。赤みの深みによって、ワインレッドやダークレッドなど呼び名が変わるほど色の幅が広く、一見すると違う種類の木を貼っているのではなかろうかと見紛うほどです。 |
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こちらは、ジューサンケンチクセッケイさん設計、もみじ建築さん施工の住宅で玄関の壁面にお使いいただいた『ウエスタンレッドシーダー(以下WRC)のパネリング』。色むらの究極、【モザイクボード】を作るような人間ですから私はこういう色のバラつきは大好きですし、ジューサンケンチクさんも「大好物」なので、施主さんともども喜々として楽しんで選ばれたのですが、中には「あまり色むらが激しいと困るので、なるべく色合いの揃ったものにしてもらえませんか」なんて無粋な事を仰る方もいらっしゃって驚かされます。 |
| 集成材や突板に馴れてしまっていて、無垢といえども色は揃っているべきなんて思いこまれているのかもしれませんが、それでは折角のWRCの魅力が台無し・・・。一応説明はするものの、とにかくサンプル、サンプルと、サンプル信者の設計士さん、工務店さんにはなかなか伝わりません。特にWRCのように色ムラの激しい木は、梱包によってもその差が顕著なので、小さなサンプルを数枚並べて見たぐらいでは、貼り上がりのイメージが掴みにくいと思われるので、ぜひ実物を自分の目でご覧いただきたいところです。 |
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〇〇のメーカーのモノは前回はああだったから、とか言われることもありますが、人工の印刷物ではなくあくまで自然素材ですので、前回がそうだったから今回もそうだなんてあり得ないこと。とりわけWRCやブラック・ウォールナットなど色の濃淡が強い木の場合、図面には書き込んだもののイメージと違ったなんてこともよく聞く話。こちらも設計士さんの癖とか分かっている場合は何とか対応することも出来ますが、それも長い付き合いでお互いの根本的な理解があってのうえでのこと。 |
| 折角の個性がマイナスな方向に作用してしまってはモッタイナイというよりも逆効果ですので、こちらとしてももっとしっかり説明をせねばと気をつけています。今回みたいに、設計士さんや工務店さんに理解があれば、使い方の幅が広がったり、「遊び」も出来るのでこちらとしても施工後の写真を撮りに行くのも楽しくなります。そんな『世界一美しい木』ですが、馴染みだった専門製材工場が昨年店を閉められ、あの独特の匂いを嗅ぐ機会がかなり減ったしまったのはとっても残念です。という事で久々のWRCの話でした。 |
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サーモアッシュとアグレッシブな設計士①*
2. 木のはなし・森のはなし, 3. 木の仕事 |
2017/04/26 PM10:38
| 愛媛ではまだまだ認知度が低いサーモアッシュ。それはお前のPR不足だろうが、と言われれば仰る通りなのですが、言い訳がましく釈明させていただくならば、むやみやたらに広がる事への怖さもあります。外部に木を貼りたい、壁面に木を使いたい、という需要は相当ありまして、私も相当相談を受けます。そのたびに耐朽性や施工性、コストなどの問題をひとつずつ検証しながら説明していくわけですが、最終的な要望としては防腐剤を使わないで雨風に耐えて長持ちして、そこそこの価格で意匠性のあるもの・・・。 |
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正直言って、私の知る限りそれらすべてを満たす外壁材はありません。どれかの条件を満たせばどれかが足りず。耐朽性も意匠性もあれど高価とか、価格はリーズナブルだけど供給量が不安定とか、防腐剤は使う必要があるとか、それぞれに一長一短。まあ、条件を完璧に満たすものがないから設計士さんも悩んでおられるところなんだと思います。材木屋としては木を使っていただけるというのはありがたい話なんですが、外部に使っていただく際に一番気になる部分は、『経年変化』に対する理解というところです。 |
| 例えば外部に適性のある木として知られる『ウエスタン・レッドシーダー(米杉)』ですが、油分も多くて耐湿性に優れ、高い意匠性を持っています。ワインレッドと称される濃い赤紫色は魅力的ですが、経年変化によって銀灰色になります。それを私は「ロマンスグレー」と呼んで愛でております。このウエスタン・レッドシーダーぐらいになれば施工実績も豊富で、ロマンスグレーに成長した生の現場やその姿は雑誌やSNSでもよく見受けられるので、施主さんへの説明もしやすいのだと思われます。 |
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じゃあ外部はウエスタン・レッドシーダーでいいじゃないかというと、そこは人間の業というか、探求心というか・・・どんなに美味しい料理でもいつもいつも同じ料理ばかりでは飽きてしまうというやつで、ちょっと毛色の違ったテイストを、ということで偏屈材木屋にはそんな変な木もあるであろうと訪ねて来られるのです。うちだってウエスタン・レッドシーダーぐらい扱っているんです、いるんですが、そんな期待に応えるのも偏屈の腕の見せ所!ということで徐々にハードルは上がっていくことになるのです。明日に続く・・・ |
★今日のかけら・227 【モアビ】 Moabi アカテツ科・広葉樹・アフリカ産

2002年の日韓ワールドカップでは、大分県中津江村にキャンプした「不屈のライオン」ことカメルーン・チームは残念ながら1次リーグで敗退したものの、村長や村民との心温まる交流のエピソードは一服の清涼剤のごとき爽やかな話題をふりまきました。大会終了後、チームはアフリカに帰国するのですが、それからしばらくして中津江村に1つの国際郵便が届きました。それは、カメルーンのサッカーチームからの物で、箱の中には1本の小さな苗木が入っていました。そこには手紙が添えられていて、母国カメルーンの木を友情の証として贈るので、中津江村に植えて欲しいという物でした。その苗木が『モアビ』だったのです。この事を始めて知った時鳥肌が立つような興奮を覚えました。この話は随分昔にテレビでも報道されたのですが、その苗木がモアビであるという事には全くスポットは当たっていませんでした。
ただ簡単にモアビという木でしたとしか触れられていませんでした(当然でしょう)。しかし、私はそれを聞き漏らしませんでした。「何、モアビだって?!」それまで漠然とモアビといえばアフリカの木としか考えたこともありませんでしたが、それがカメルーンにたくさん分布する木であったという事、カメルーンの人たちが友情の証に母国の木を選んだこと、そしてそれが慣れ親しんだモアビであった事などが一気に交錯して、それまで特別な思い入れもなかったモアビに特別な感情が生まれたのです。
実は、この辺りではモアビはよく使われていて、私が入社した当時から敷居といえばモアビが定番でした。和風の家であれば桧でしたが、桧は柔らかく磨耗しやすいので、硬めの木という事でモアビが使われていました。磨耗に強く硬くて、最大樹高が60mにも達する大径木なので、長尺ものや幅の広い材が容易に取れるという点が好まれたのでしょう。大工さんの間では『南洋桜』という愛称で取引されていました。このモアビ、硬い分だけ重たくて、よく運んでいる時に指を挟んだり、足に落として痛い思いもしました。
磨耗に強いという特徴を活かして、一時期は桧の集成材の敷居の溝に埋めて敷居すべりにも利用されていました。桧造りの白っぽい空間の足元にポツンと赤褐色の木が入る光景が松山周辺では当たり前のものでした。最近では原木が入手しにくくなった事や価格の事もあって、敷居すべりももっと色目の薄い硬木(ニヤトーなど)に変わってきましたが。この『南洋桜』という言い回しも何とも言えませんが、原木が入荷した当時馴染みのないこの木を何とか売ろうという材木屋の意気込みと工夫は感じられます。更に明日に続く。
不屈のライオンとモアビ・・・③
2010年 6月 17日 木曜日 at 9:15 PM 1. 今日のかけら
さて、日本人が頭をひねって命名した『南洋桜』とは無理矢理のこじつけで、桜のような滑らかさとも色合いとも違うのですが、憧れの桜に置き換えて説明したいという意気込みでしょうか。結果的には、それが行き過ぎて別名や別称が氾濫してしまう事になるのですが・・・。モアビは大径木である分癖も少なく材が素直で、全体的に色合いも均質で、虫にも強い特徴があり、更に当時は値段も手頃だったのでとても重宝されました。私も随分お世話になりました。

ただし、モアビを削ったことのある人は誰でも経験があると思うのですが、何も知らずに普通にこの木削るととんでもない事になります!切削すると粉塵が粘膜を激しく刺激し、その痛みと痒さといったら尋常ではありません!鼻の奥と目が痛痒くなり、朝に加工すると昼頃までむず痒さが残るほどです。マスクにタオルなどの重装備で臨みますが、粉塵が細かいので隙間から進入してきて『モアビ・ハザード』の餌食となるのです!ただではその身を削らせないぞという『不屈のライオン魂』が宿っているのでしょうか。
まあ、相手は体を刃物で削られるのですから、これぐらいの抵抗があって当然と言えば当然。粉塵が粘膜を攻撃する木はアフリカや中南米に多いのですが、中でもモアビは間違いなく横綱級です!また、シリカを含むため、導管に詰まったシリカが時々白い斑点のように現れ、いくら説明してもクレームになり取り替えさせられた事もありました。今ならもちょっとうまく説明できると思うのですが、なにぶん当時は知識もなく、言われるがまま・・・。残念ながら今は説明しようにも、モアビそのものがこの辺りでは見かけることが出来なくなりました。あれほど倉庫に積みあがっていたモアビもほとんどなくなってしまいました。人は世に連れ、材は世に連れ。樹種の変換は時代の必定、かつてあれほど人気を博したモアビもすっかり声が掛からなくなってしまいました。そうなると製材所も原木を入れなくなり、材も集まりにくくなります。そうなると妙にあの『モアビ・ハザード』ですらも懐かしく思えてくるのですから人間身勝手なものです。
時にモアビには複雑な縞模様も出たりするので、カウンターや家具に使っても面白みはあるのですが、なにしろ重たい!テーブルサイズの1枚板などになるとゾッとするような重量になります。左の画像の手前部分は、オイルのクリアー塗装した状態です。濃い赤褐色になり存在感が増します。私にとって『身近だった木』になってしまいつつあるのは非常に寂しいのですが、サッカーなどで「カメルーン」と聞くと、条件反射でモアビの事が頭に浮かびます。中津江村のあのモアビは大きく成長したでしょうか。