森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・#045 【高野槙/コウヤマキ】 コウヤマキ科コウヤマキ属・針葉樹・岐阜産 

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高野六木・陰樹コウヤマキ

1. 今日のかけら

20141113 1今日のかけら』で取り上げるにはまだまだ実例不足ではあるのですが、高野山真言宗の寺である栄福寺さんの話題でここまで引っ張らせていただいた感謝の気持ちも込めて、高野山つながりで『コウヤマキ(高野槙)』の登場です。その名前からもお察しのとおり、和歌山県の高野山に多く自生していたことが名前の由来です(他には奈良と三重にまたがる大台ケ原が有名ですが、更に福島、高知、大分、宮崎などでも山中にわずかながら点在しているとか)。この木は、日本産の一科一属一種の木でもあります。

 

Exif_JPEG_PICTURE太古の昔には世界中に分布していたそうですが、洪積紀( 約170万年前~約1万年前までの期間)にはすっかり滅んでしまったそうです。ですので現代では日本固有の木とされています。長野の木曽地方では、ヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロと並んで『木曾五木』の1つに数えられていますし、高野山ではヒノキモミアカマツツガ、スギと共に『高野の六木』としても有名な木です久万高原町には樹齢500年で県の天然記念物となっているコウヤマキがありますが、通常はほとんど見かけることがありません。

 

20141113 3木曽五木にしても、高野六木にしてもそれらすべてが常緑の針葉樹であるのは、常に青々として生命力の象徴ともされる常緑樹の小枝を仏前に捧げた風習の影響ではないかといわれています。コウヤマキに限らず、クスノキシキミなど香りの強い木は昔から邪気を払ったり、悪霊を退ける、魂を浄化させるなどとされ宗教的儀式とは深い結びつきがあったので、特に真言宗の総本山である高野山において、日々執り行われる儀式に際し、独特の芳香のあるコウヤマキは珍重されたのではないかと類推されます。
20141113 4またコウヤマキは日本書紀で「マキは棺桶を作るのによい」との記述があるように、油分を多く含み耐水性に優れた性質から、地中に埋めても水湿によく耐えすぐに腐らないため棺桶として利用されてきました。棺桶の材料となる木という事が忌み嫌われ、神社では忌み嫌われ植えられなかったというのは皮肉なことです。材だけでなく、その葉にも油分が多いことは、水面に浮かべるとよく分かります。油の塗膜に水分が反発するかのように浮いて、息を吹きかけると水を切るように水面を進むのを見せてもらった事があります。続く・・・


 

高野六木・陰樹コウヤマキ②

1. 今日のかけら
20141114 1さて、本日も『コウヤマキ』の話。コウヤマキの樹皮は繊維質が多く、槇肌(『まきはだ』、あるいは『まいはだ』)と呼ばれ、井戸の壁や船板、桶などの漏水防止のパッキン材、または屋根葺きとして編んで火縄などにも使われます。しかし残念ながら全国的に見てもその分布域は狭く、四国においては八十八か所巡礼の締めくくりとして馴染みの高野山に比べると、『コウヤマキ』の名を耳にする機会は余程少ないと思われます。それでも通の方がこの名を知るのは、水回りの高級品からではないでしょうか。 

20141114 2水湿に強い事は先にも触れましたが、その性質から風呂桶をはじめ手桶、味噌桶、漬物桶、飯櫃(おひつ)、流し板、まな板などの水回り用品や食料品を入れる器具として使われています。しかし最近では安価な非木質商品に押されて、それらすらもなかなか目にする事は少なくなりましたが・・・。むしろ高級浴槽として、ホテルや旅館で見かける事があるかもしれません。数年に一度くらいの割合ですが、ごく稀に木製の浴槽にこだわれる方が、コウヤマキでは出来ないのかと相談を持ちかけられることがあります。
20141114 3もう6,7年前の事ですが、どうしてもコウヤマキで作って欲しいという事で、お問い合わせをいただき、関西方面からコウヤマキを取り寄せて浴槽を作らせていただいたことがありました。小さな浴槽でしたが、コウヤマキの香りが満ち溢れました。この薬草のようなハーブのような鼻孔をくすぐる独特の清々しい香りがコウヤマキの特徴で、仲間の『イヌマキ』と区別できます。清々しい香りといっても、ヒノキなどとは違って控えめで、その点も直接食料に触れる飯櫃や味噌桶、漬物桶などに使われる理由でしょう。
20141114 4さて、建築材としてのコウヤマキの用途はいかがなものか。昨今は供給量の問題で、建築分野ではほとんど利用されることはありませんが、古代には宮殿建築材としても重宝されていたようです。平城京跡から発掘された柱根のうち4割程度がコウヤマキだったとされていますし(残りはヒノキ)、藤原京寺院跡大宰府史跡からも柱として用いられていたことが分かっています。当時は柱に使えるような相応の大きさの巨大なコウヤマキ群があり、その香りとともに神に捧げられる木として霊験あらたかな木だったのでしょう。

高野六木・陰樹コウヤマキ③

1. 今日のかけら
20141115 1本日も『コウヤマキ』の話。古代の宮殿建築材としての役を担ったコウヤマキですが、現在では蓄材量の少なさから寺社建築に使えるような大径木を大量に揃える事はほぼ不可能に近いと思われます。コウヤマキは実に有用な木ではあるものの、その生育条件は非常にわがままで、土地が肥沃で、水はけがよく、強い日差しを嫌う『陰樹』であることから、根元に直接日光を浴びないなど、場所が限定されるうえに、成長のスピードが緩やかなのの経済林には不適とされていて、植林が進まないという事情もあります。Exif_JPEG_PICTURE 私も実際にコウヤマキを手にした数や経験は少ないのですが、ちょうどこの項を書くので久々に手持ちのコウヤマキ(左、右はカヤ)を倉庫の奥から引っ張り出して軽く削ってみました。今在庫しているコウヤマキは、主に宮崎、岐阜周辺から仕入れたものですが、用材として購入したというよりは、【森のかけら】などの小物を採るため、あるいはコレクターとしての欲求から購入したもの。なので大きな節があったり割れが入っていたりしますがお構いありません。こういったコウヤマキが数本ありますが、売り物というよりは自社で使う物。

 

Exif_JPEG_PICTURE画像のコウヤマキも節まみれの芯持ち材ですが、『自ら持っている、所有している』という事実こそが大切なのです。久々にコウヤマキと対峙しましたが、埃と日焼けで薄汚れた表面をひと削りすると、懐かしい清々しい香りが蘇ります。ただその香りがヒノキクスノキのようにぶわっと香り立つというよりも、鼻を近づけ息を吸い込むと鼻の奥がツンとする感じ。もっと瑞々しい状態であれば香り方も違うのでしょうが、コウヤマキを届けてくれていた宮崎の業者も店を畳んでしまったので新規入荷は細まるばかり。

 

 

20141115 4その上から植物性オイルを塗ると、材が染み込んでより深みのある濡れ色になります。今はまだこのままですが、いずれは【森のかけら】などに割り返す予定。数年前にこのコウヤマキが一躍脚光を浴びた時期がありました。秋篠宮家に悠仁(ひさひと)様がお生まれになった時、そのお印としてこのコウヤマキが選ばれたのですが、その時ばかりは普段地味な存在の木にスポットライトが当たり、メディアでも取り上げられかなり話題となりました。しかし『陰樹』のコウヤマキにとっては少々眩しすぎる舞台だったかもしれません。
20141115 5信仰心薄きがゆえか日頃の行いが悪いのか、なかなかコウヤマキとのご縁が無くて(買う方も売る方も)、とても出口商品を探るようなレベルには無いのですが、【森のかけら】のご注文においてはかなり高い確率でコウヤマキを選ばれる方が多く、そのたびにかけらを手にしては薬草のような清々しい香りを楽しんでいます。そんなコウヤマキに触れていつも感じるのは、日本の木の文化というものの奥深さとそれを愛おしいと感じる慎み深さ。この後、高野山のご縁が続いたら、それこそ弘法大師空海様のお導き・・・!?



今日のかけら・#185 【ニヤトー】 Nyatoh  アカテツ科・広葉樹・東南アジア産

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二ヤトーとペンシルシーダーの謎①

 

20141101 1以前に鉛筆に使われる木『イチイ』の項で、少しだけ触れたことがあったのが、『ペンシルシーダー(鉛筆の木)』の名称を持つ『二ヤトー』という木。インドシナ半島から東南アジアの島を経てパプア・ニューギニア(以下PNG)、南太平洋、オーストラリア、ニュージーランドまで広く分布しているアカテツ科の数属の比較的軽軟な樹種の総称です。100種以上もの樹種の総称として使われているということもあって、「二ヤトー・グループ」に含まれるメンバーの個性も呼び名もさまざま

 

Exif_JPEG_PICTURE主なものだけでも、ナトー/Nato(フィリピン)、Palai(インド)、Masang(タイ、ソロモン)、Viet(ベトナム)、Sacau(フィジー)、Nato(フィリピン)などなど。日本での一般的な呼び名であるニヤトー(Nyatoh)が使われているのは、マラヤ、サワラク、ブルネイ、サバ、インドネシアなど(国と地域)。そして問題のペンシルシーダー(Pencil cedar )という呼び名が使われているのがPNG。そこでは色調に合わせてホワイト・プランチョネラ、レッド・プランチョネラとも呼ばれています。

 

20141101 3100種を超す大グループですから呼称が多いのも当然で、その個体差にも幅がありひと口にニヤトーといっても重さも硬さもさまざま。気乾比重も0.47〜0.89までと相当幅があるのですが、サバでは0.88以下のものをニヤトー、それより重いものをニヤトーバトゥ(Nyatoh batu )と呼んで区別しています。なのでこの辺りでもニヤトーとバトゥ(愛媛ではバツと言いますが)と、それぞれの名前で呼び分けられていましたが、今ではそのどちらも使われる量が激減していずれの名前を聞く事もなくなりました。

 

Exif_JPEG_PICTURE昔はよくバツを敷居などに使ったものですが、なんといってもこの木は重い!また、肌目が粗くシリカを含んでいる事から蝋を触っているような独特の触感があり(それで敷居など滑りを求められる場所に使われるのですが)、持ち運び中に粗いそげらが手に刺さる事もしばしば。ところでなぜにこの木が『ペンシルシーダー』と呼ばれるのかという理由は今もまだ分からない(鉛筆に使われているわけでもないのに)だけでなく、なぜ広葉樹の木なのにシーダー(スギ)という針葉樹を指す言葉が付いているのか?

 


 

二ヤトーとペンシルシーダーの謎②

1. 今日のかけら

20141102-1この矛盾に満ちた名前はなにもニヤトーに限った事ではなく、例えばブラジルの『セドロ』も広葉樹でありながら、『スパニッシュ・シーダー』の別名があります。しかもブラジルなのにスパニッシュ!これは『今日のかけら/セドロ』で詳しく説明させていただきましたが、かつてブラジルがスペイン領であったことと、削るとシーダーのような香りがするからという事で、地域で使われる木の名前がいかに材の特徴を現わしたものであるのか、またいかに分かりやすい木に見立てられるのかという事の証明です。

 

20141102 2そう考えれば、PNGでも赤身を帯びたニヤトーをペンシルシーダー(一般的には、北米原産のヒノキ科の高木インセンス・シーダーを現わす俗称として使われる。これこそ本当の鉛筆の木。カリフォルニア香杉 とも呼ばれる)のような香りのする木に見立てて表現したのかもしれません。木の名前って日本でもそうですが、本来の言葉が訛ったり、変化したり、つけ加えられたり、短縮されたりしながら口伝で形成されてきたものだと思うので、そのルーツって案外聞き間違いとかということだってよくある事。

Exif_JPEG_PICTUREまた日本人の感覚では考えらない概念もあって、やや赤身の薄いニヤトーを『ホワイトナトー』、あるいは『レッドシルクウッド』と呼ぶに至っては、何がホワイトで何がレッドなのやら・・・。でもその曖昧さ、おおらかさこそが誰にも愛される自然素材・木の醍醐味なのではないかと思うのです。それが人を騙すためとか市場を混乱させるためというのなら別ですが、自然発生的に起きた命名であるならば、それはそれである種その木の人気のバロメーターのようなものではないかと思うのですが

 

Exif_JPEG_PICTUREそのニヤトーのまあまあ重たい方バツの敷居サイズと、比較的軽い方のニヤトーの板が少しだけ残っているのですが、この辺りでの需要を考えると『端材』扱いで、『森のかけら』や『モザイクボード』などに小割して使った方がいいのかもと思案中。全国的にみれば、今もふんだんにニヤトー一族が流通している地域もあると思われますが、愛媛については「終わってしまった木」という感覚になってしまっているのが寂しいところ。やはり活躍できる場面がなくなると出番のない木は次第に忘れれてしまうもの・・・

 

20141102 4細かく割り返して使うのは最終手段で、何か大きなままで利用できる場面がないか出口の探求は続けるのですが、性質が似ている南洋系の木については、個々の木で明確な使い分けが定まりにくいというのが実情です。特にニヤトーはシリカが含まれているため刃先を痛めるため尚更なのです。でも昔はこの木を造作や内装、建具にまで使っていたのですから、今よりも木の個性に寛容だったというか、あるものは何でも利用してしまえの精神が旺盛だったのか、怖いもの知らずだったのか、今があまりに神経質なのか・・・

 




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