2014年 4月 19日 土曜日 at 10:16 PM 木のものづくり+α, 森のりんご
物事には目に見えない周波数のようなものがあって、共鳴し合ったり引き付け合うのかなあと思う事がしばしばあります。たまたまモノの巡り合わせみたいなものかもしれませんが、欲していた材の話が突然数か所から一度に舞い込んできたり、初めて会った人が実は数珠つなぎに繋がっていたりだとか。先日、シキミやグミなどの小枝の話をアップしましたが、今度は近所の造園屋さんから「大きめの庭木を伐ったのだけでいらない?」とお声をかけていただきました。それがまたちょうど探していた木!
早速現地に見に行きましたが、庭木だと思ってなめていたら予想以上の大きさでしたので、急遽弊社まで運んでいただき短くカットしてもらう事に。クロガネモチとカイヅカイブキ、ヒイラギです。それぞれ少しは在庫があるものの、木材市場では流通していない木ばかりなので、こういうご縁で確保しておかないといつ手に入るか分かりません。しかも、その後は気長にじっくりと天然乾燥させるので、実際に材として使えるようになるのは1年ぐらい先の話。それを見越しての「仕込み」となるわけです。
この後は、すぐに割ってしまわないと芯から放射状に割れてしまって何にも使えなくなってしまいます。なので早めに用途を決めて必要サイズに割ってしまう事が肝心。魚でいえば「活け締め」みたいなものでしょうか。以前はこうして手に入っても、とりあえず【森のかけら】用サイズに挽き割っていました。しかし、このところ240種のリスト以外の材が手にはいることも多くなりました。このヒイラギなどもそうです。また量が多いと、その樹種のかけらばかりになるので最近は狙いを変えています。
「かけら」のように樹種が限定されていなくて、それぞれで商品価値があるものということで、『森のりんご』に力を入れています。それだけでペーパーウェイトににもなるぐらいの重さが理想なのですが、いろいろ並べて見ていると、やはり種類が多い方が楽しそうなので、プレミアムな路線とは別にそれぞれの樹種でも作ってみようかと考えているのです。そうなると、『ヒイラギのりんご』やら『シキミのりんご』、更に『ミカンのりんご』、『モモのりんご』なんてものまで生まれてくるわけです。
言葉だけ聞くと何が何やら分からぬ世界ですが、【森のかけら】のキューブ感とは違う曲面の触感も病み付きになりますぞ!今回ご縁があって弊社にやって来たこれらの「新入生」たちの顔を見ていると、1年後にどういう変身を遂げているかが楽しみでなりません。初々しい彼らもやがては、倉庫の牢名主のような存在になってしまうのか?そうはならないように早めに「卒業」させてやらねばならないとと思ってはいるものの、まだまだ倉庫の奥には別れが名残惜しい留年組が沢山控えておりまして・・・
悪しき実ではないシキミ
2014年 4月 18日 金曜日 at 10:25 PM 1. 今日のかけら, 木のものづくり+α
シキミの木についてもう少し補足。シキミは、漢字で書くと『樒』と表わしますが、これには諸説あるようで、代表的なものとしては、昔弘法大師がこの木を密教で供養に使っていたことからこの密という感じが当てられたというもの。平安時代になって、シキミの枝や葉を仏前にも備えるようになったので、木編に旧字の仏をつけて『梻』と表わすようにもなったそうです。現在では、一般的に樒の漢字が使われています。この樒という漢字は中国から鑑真和上が日本にもたらしたという尊いものだとか。
そのシキミですが、墓地や仏壇に供え花として用いられることから『ハナノキ』の別名もあります。一方で、毒気のある木としても有名で、花や葉、実、根から茎にいたる全てが毒!特に、種子に有毒の成分が多い為。「悪しき実」とも言われ、そこから「アシキミ」→「シキミ」と変化したとか。神事や仏事にも用いる木に毒があるとは何事かと思うかもしれませんが、それはシキミが特有の香気を持っていて、その毒によって毒を断つ、香気で毒(悪)を浄化する力があると考えられていたからだそうです。
古い歴史書においては、墓前に清浄なるシキミを供えておけば獣が畏れて墓をあばき人の屍を屠ることがないとか、山近い畑にて猪や猿の類が畑の作物を荒らさぬようにシキミを植えておくとよい。シキミの枝を折って蓋として芋などの上に置いておくのも有効だ、シキミの匂いを狼が嫌う等々の記述もあるようで、古来よりその香りは広く知られ、悪霊や獣を避ける香木としても使われていたことが分かります。また、その葉や樹皮を干して粉末にすると、抹香や線香などの原料にもなるなど実に有用な木です。
一方で「材」としての用途は聞いたことがありませんでした。そもそも材として使えるほど大きくなるとも考えてもいませんでしたが、調べてみると『陰樹』ではあるものの生育はよく、放っておけば7、8mぐらいには成長するのだとか!お供え用として低木で葉や枝を摘んでしまうためか、あまり大きなシキミを見たことがありませんでした。径は小さいものの、県内でも念珠や傘の柄、天秤棒などに使われることもあるようなので、とりえあず魔除けの木いかなるものか使ってみねばなりません。