マロニエは、日本語で「トチノキ」と訳されますが、日本のトチノキはトチノキ科トチノキ属の木で、日本ではこの科はトチノキだけです。駿府からも依頼されたパリでは、街路樹や公園にマロニエがたくさん植えられているそうです。実際に現地で観たことはありませんが・・・。特に有名なのがパリのシャンゼリゼ通りのマロニエ並木です。マロニエは乾燥には適さないとされますが、排気ガスや潮風にもよく耐える事から、街路樹などに植えられるのは洋の東西を問わないようです。このマロニエは、トチノキではなく正確には「セイヨウトチノキ」という種類です。
マロニエ(marronnier)はフランス語で、英語ではホース・チェスナット(horse chestnut)。直訳すると「馬の栗」という事になりますが、これはヨーロッパでは実際にこの木の実を馬の餌にしていた事に由来しています。マロニエの原産地はギリシャ北部とアルバニアの国境地帯だといわれていますが、16世紀にトルコで兵士達が馬にこの木の実を与えていたのを目撃したヨーロッパ人が、その若木をパリの植物園に送って詳しく調査した結果、それがマロニエの木だという事が分かったそうです。
その後それがマロニエのヨーロッパ進出の契機となったようで、その後マロニエは急速に世界へと広まっていきます。ヨーロッパ大陸へ伝わるのが遅かったのは、その実があまりに大きい事から、他の木のように風や鳥によって遠くへ運べなかったためだとされています。サッカーのワールドカップぐらいでしか馴染みのないアルバニアという国が出てきたので少し調べてみました。正式名称アルバニア共和国。国旗に刻まれた双頭の鷲は、アルバニア人は鷲の子孫であるという伝説に基づいているようです。
バルカン半島南西部に位置する共和制国家で、人口は約310万人。国土の40%が森林に覆われていて、主な森林資源はビーチ(ブナ)とかマツのようです。隣国のモンテネグロとの国境地帯にアルプス山系の2000m級の山脈が連なり、これがマロニエのヨーロッパ進出の文字通り大きな壁になったのだと考えられます。この山岳地形を利用した水力発電も盛んで、総電力の実に99%を水力でまかなっているという事です。建築資材の輸出も盛んという事のようですが、日本には入ってきているのでしょうか?
サッカー以外でこの国の名前を耳にするのは、アルバニア系武装勢力とかテロとか内戦など物騒な話が多く、過去に鎖国や内戦もあったようで今でも決して治安がよいとは言いがたいようです。特に山岳地帯は武装勢力が潜んでいて非常に危険だとか。世界は各地で常に緊張状態にあります・・・。豊かな森で銃弾が飛び交うような悲劇はいつまで繰り返されるのでしょうか。恐らく私と同世代と思われるマロニエ園のこのマロニエ達ですが、そのご先祖様は遥かこのアルバニア辺りからやってきたのかと思うと感慨深いものがあります。
立ち木では、トチノキとの差異がよく分かりません。葉っぱの形とか微妙に違うのでしょうが、さすがに1枚拝借するわけには行きませんので・・・。トチノキはよく使っていますが、マロニエの材は使った事がありません。マロニエとして実際に木材が流通しているものなのでしょうか?日本のトチノキと材質にどれぐらい違いがあるのかとても興味があります。あまり市場に流通していないとしたら、かつてのヨーロッパ人がそうしたように私も愛媛に持ち帰り、使ってみたらもしかしてマロニエやが普及するかも、などと妄想・・・。
竜が血を吐くドラゴン・ツリー*
★今日のかけら番外篇・E004【ドラゴンツリー】Dragon tree リュウゼツラン科・和名/竜血樹(リュウケツジュ)
昨晩のテレビ番組「素敵な宇宙船地球号」を観ました。2008年の世界遺産登録され、 シンドバッドが立ち寄ったという伝説の島・ソコトラ島の不思議な木の話しでした。何の資源もないインド洋の小さな島が、なぜ世界遺産になったかというと、この島が大地変動に取り残され特異な進化を遂げた島で、貴重な植生物が生息しているからだそうです。「植物のガラパゴス」とも呼ばれるこの島にしか育たない奇妙な木、それが竜血樹です。もうこのネーミングからして惹きつけられます。観るのにも思わず力が入りました。 |
でも全てが分かりすぎる事は、なんだか危険な気もします。やっぱり、クスノキやタブノキの巨木には神が棲んでいるし、竜血樹にもドラゴンが棲んでいるのではないでしょうか。でなければ、あんな姿になるはずがありません。そして竜血樹の血は、この地球の行く末を憂う竜の嘆きの血なのではないのでしょうか。そうであってはほしくないと願うばかりです。関連ブログ「竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!」も是非ご覧下さい。 |
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竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!
昨晩何気にテレビを見ていると、「世界ふしぎ発見!」のTVCMで『ソコトラ島』の名前が!ソコトラ島といえば、かつて「素敵な宇宙船地球号」という番組で『竜血樹・ドラゴンツリー』を取り上げていましたが、番組25周年記念、スポンサーの日立の100周年とかで、3週連続のスペシャル番組として驚異の島・ソコトラ島を取り上げるとの事でした。これは見逃してはならない!TVCMにも私の大好きなドラゴンツリーの姿が映っていました。実は以前ドラゴンツリーを観てから、その異様な姿に惹かれっぱなしなのです。
さすがは『この木なんの木』(モンキーポッド)を企業のイメージツリーに掲げる天下の日立!より動植物の生態も詳しく取り上げていただきありがたい。この島は「地球でもっとも地球らしくない島」と呼ばれるほど独自の進化を遂げた島で、前回もその個性溢れる動植物の姿には魅せられました。島独特の地形の影響で強烈な風が吹き、枝の風下から新緑が出たりと生命力のたくましさを感じます。世界中のザクロの原種はわずかに4本しか残っておらず、そのうちの貴重な1本・ソコトラザクロも紹介されていましたが、果実樹の幹には食指が動きます。まずは蜜柑の木から活かさねばならんでしょう。ドラゴンツリーと呼ばれる由来は以前にもブログで紹介しましたが、モンスーンの霧が山にぶつかった水分をより多く吸収するために椎茸のような形になったという事です。その樹液が赤く、止血剤としての用途も高く、かつては剣闘士たちにも重宝されたようです。
立派な傘を広げた状態になったもので樹齢500年以上という事ですが(年輪がないので推定ということらしいです)、幼木は山羊などに食べられ、その成長過程が謎のベールに包まれていて、近年になって種から育てるプロジェクトが進められているとの事です。何年ぐらいすればその姿になるのかを探るという壮大な計画です。どの苗がそうかという事が問題になっていて、答えは草のようなものでしたが、苗も販売されています。500年先に夢をつないで育ててみようかな~。
実は以前に高知県の牧野植物園に行った時に温室で、このドラゴンツリーの幼樹に出会いました。その時点でデジカメのバッテリーランプが点滅しているというとても危険な状態ですが、なんとか撮影に成功、余裕があればもっと別アングルでも撮影したかったのですが。展示してあったのはカナリア諸島のドラゴンツリーでした。クイズの答えはまさにこの画像の幹の無い姿でした。そこから葉っぱをグングン押し上げて成長していくのでしょうか。
あの奇妙な姿になるまで500年から1000年、この木はどんなドラマを目撃するのでしょうか。もしも将来、木から過去の記憶を取り出し映像化する技術が確立したとしたら、そこには多くの歴史書を塗り替えるような大発見があることでしょう。しかし、その真実は100数年しか生きることの出来ない人間には知ってはならないし、知れば耐えられない事なのだと思います。その耐え難き苦しみにドラゴンツリーは血を吐くのでしょうか。1000年も生き続ける事の意味など人間に計り知ることなどで起用はずがありません。忘れる事の出来る生き物・人間のなんと素晴らしいことか。忘れっぽい私はつくづく思うのです。ドラゴンツリーの他にも『キュウリの木』と呼ばれる木や『乳香の木』など面白い木も取り上げられていましたが、ああっ、こんな所で端材が手に入れば【ソコトラのかけら】が出来るのに!何らかの理由で伐採する木や倒木のあるはず、その結末が気になる~!