森のかけら | 大五木材

20110611 マロニエとホース・チェスナット①マロニエは、日本語で「ノキ」と訳されますが、日本のトチノキはトチノキ科トチノキ属の木で、日本ではこの科はトチノキだけです。駿府からも依頼されたパリでは、街路樹や公園にマロニエがたくさん植えられているそうです。実際に現地で観たことはありませんが・・・。特に有名なのがパリのシャンゼリゼ通りのマロニエ並木です。マロニエは乾燥には適さないとされますが、排気ガスや潮風にもよく耐える事から、街路樹などに植えられるのは洋の東西を問わないようです。このマロニエは、トチノキではなく正確には「セイヨウトチノキ」という種類です。

20110611 マロニエとホース・チェスナット②マロニエ(marronnier)はフランス語で、英語ではホース・チェスナット(horse chestnut。直訳すると「馬の栗」という事になりますが、これはヨーロッパでは実際にこの木の実を馬の餌にしていた事に由来しています。マロニエの原産地はギリシャ北部とアルバニアの国境地帯だといわれていますが、16世紀にトルコで兵士達が馬にこの木の実を与えていたのを目撃したヨーロッパ人が、その若木をパリの植物園に送って詳しく調査した結果、それがマロニエの木だという事が分かったそうです。

 

20110611 マロニエとホース・チェスナット③その後それがマロニエのヨーロッパ進出の契機となったようで、その後マロニエは急速に世界へと広まっていきます。ヨーロッパ大陸へ伝わるのが遅かったのは、その実があまりに大きい事から、他の木のように風や鳥によって遠くへ運べなかったためだとされています。サッカーのワールドカップぐらいでしか馴染みのないアルバニアという国が出てきたので少し調べてみました。正式名称ルバニア共和国旗に刻まれた双頭の鷲は、アルバニア人は鷲の子孫であるという伝説に基づいているようです。

 

20110611 マロニエとホース・チェスナット④バルカン半島南西部に位置する共和制国家で、人口は約310万人。国土の40%が森林に覆われていて、森林資源はーチ(ブナ)マツのうです。隣国のモンテネグロとの国境地帯にアルプス山系の2000m級の山脈が連なり、これがマロニエのヨーロッパ進出の文字通り大きな壁になったのだと考えられます。この山岳地形を利用した水力発電も盛んで、総電力の実に99%を水力でまかなっているという事です。建築資材の輸出も盛んという事のようですが、日本には入ってきているのでしょうか?

 

20110611 マロニエとホース・チェスナット⑤サッカー以外でこの国の名前を耳にするのは、アルバニア系武装勢力とかテロとか内戦など物騒な話が多く、過去に鎖国や内戦もあったようで今でも決して治安がよいとは言いがたいようです。特に山岳地帯は武装勢力が潜んでいて非常に危険だとか。世界は各地で常に緊張状態にあります・・・。豊かな森で銃弾が飛び交うような悲劇はいつまで繰り返されるのでしょうか。恐らく私と同世代と思われるマロニエ園のこのマロニエ達ですが、そのご先祖様は遥かこのアルバニア辺りからやってきたのかと思うと感慨深いものがあります。

20110611 マロニエとホース・チェスナット⑥立ち木では、トチノキとの差異がよく分かりません。葉っぱの形とか微妙に違うのでしょうが、さすがに1枚拝借するわけには行きませんので・・・。トチノキはよく使っていますが、マロニエの材は使った事がありません。マロニエとして実際に木材が流通しているものなのでしょうか?日本のトチノキと材質にどれぐらい違いがあるのかとても興味があります。あまり市場に流通していないとしたら、かつてのヨーロッパ人がそうしたように私も愛媛に持ち帰り、使ってみたらもしかしてマロニエやが普及するかも、などと妄想・・・。

竜が血を吐くドラゴン・ツリー*

★今日のかけら番外篇・E004【ドラゴンツリーDragon tree リュウゼツラン科・和名/竜血樹(リュウケツジュ)

昨晩のテレビ番組「素敵な宇宙船地球」を観ました。2008年の世界遺産登録され、 シンドバッドが立ち寄ったという伝説の島ソコトラ島の不思議な木の話しでした。何の資源もないインド洋の小さな島が、なぜ世界遺産になったかというと、この島が大地変動に取り残され特異な進化を遂げた島で、貴重な植生物が生息しているからだそうです。「植物のガラパゴス」とも呼ばれるこの島にしか育たない奇妙な木、それが竜血樹です。もうこのネーミングからして惹きつけられます。観るのにも思わず力が入りました。

竜血樹は、別名『ボトルツリー』とも呼ばれていますが、まさにボトルを逆さにして大地に立てた形そのままです。正式にはドラセナ・ドラコ(デザートローズ)というようですが、私も初めて知りました。別名もいいです。ドラゴン・ツリーとか、ドラゴン・ブラッドツリーというようです。竜好きの私としてはたまりません!この奇妙な形は、この島の生い立ちにも深い関わりがあります。もともと雨が少なく、人間も住まないような過酷な環境だったようです。そんな乾いた土地でなぜ植物が育つかというと、

海の水蒸気をたっぷり含んだ風が霧を生み、その水分を効率よく吸収するために、逆さに傘を開いたような奇妙な形に進化しました。その竜血樹の幹を削ると、シナバル(樹液が固まったもの)が採れます。見た目にも赤褐色で、まさに血のように赤いルビーのようでした。『血の宝石』とも呼ばれるのも納得です。用途としては、地元の村で傷口の炎症や出産の止血止め、ニスや染料などに使われていたそうです。中東の商人たちの間では、その珍しさから装飾や顔料などとして高額で取引されました。

島では、採取した村人は1キロのシナバルで2頭分のヤギが買えるほどでした。村人も竜血樹に感謝しながら、地元の貴重な資源を大切にしようと、一度シナバルを採った木は2年間は木を休ませるという村の掟を守ってきました。ところが、それが2008年にこの島が世界遺産に登録されると、案の定観光客が詰め掛けるようになります。そして、何もない島のお土産として珍しいシナバルが人気を集め、ちょっとした樹脂バブルが起こり、売り手が増え仕入れ値が下がるようになります。

すると、単価が下がったのでもっと採りたい派と、木が弱るのでインターバルを置くべきだという派に分かれ、村は対立し騒動が起こります。しかし結論の出ぬ間に、大変事が起こります。竜血樹が次々と枯れ始めたのです!すわ、神の怒りか?反対派の実力行使か?実は、その理由は意外な物でした。地球温暖化の影響で、海面の温度が温まり、以前よりも高地で霧が出来るようになったのです。霧の減少、つまり水分が不足して枯れてしまったというのです。そしてこのままだと、30年で竜血樹が島から消えるということが、科学的に解明されます

そこで村人達はどうするか?村人達は小さな竜血樹の苗木を植え始めたのです。それで、竜血樹が守られるわけではありません。それでもささやかながら自分達の出来ること・・・と言うことで番組は終わります。こういう事態に直面したとき、莫大なお金をかけずに出来ることといったら、今も昔も『自ら木を植えること』なのでしょう。でももしこれが昔だったら、そういう学術的な原因などは分かるはずもなく、村民を前に村の長老が「シナバルを採りすぎて神の怒りに触れたのだ!」とでも言うもではないでしょうか。

そして香を焚き神への祈りを捧げ、数年間はシナバルを採ってはならない!という事にでもなるのではないでしょうか。これこそ本来の人間と自然の関わり合いではないでしょうか。自然への畏敬の念を抱いたままであれば、環境破壊や温暖化という問題もここまで大変なことにはならなかったのではないでしょうか。原因が科学的に解明されすぎてしまうと、自然への恐れや畏敬の念は感じなくなってしまうと思います。この場合がどうだというわけではありませんし、科学は人間の叡智だと思います。

でも全てが分かりすぎる事は、なんだか危険な気もします。やっぱり、クスノキやタブノキの巨木には神が棲んでいるし、竜血樹にもドラゴンが棲んでいるのではないでしょうか。でなければ、あんな姿になるはずがありません。そして竜血樹の血は、この地球の行く末を憂う竜の嘆きの血なのではないのでしょうか。そうであってはほしくないと願うばかりです。関連ブログ竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!」も是非ご覧下さい。

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竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!

2. 木のはなし

20101010 竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!①昨晩何気にテレビを見ていると、「世界ふしぎ発見!」のTVCMで『ソコトラ島』の名前が!ソコトラ島といえば、かつて「素敵な宇宙船地球号」という番組で『竜血樹・ドラゴンツリー』を取り上げていましたが、番組25周年記念、スポンサーの日立の100周年とかで、3週連続のスペシャル番組として驚異の島・ソコトラ島を取り上げるとの事でした。これは見逃してはならない!TVCMにも私の大好きなドラゴンツリーの姿が映っていました。実は以前ドラゴンツリーを観てから、その異様な姿に惹かれっぱなしなのです。

20101010 竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!②さすがは『この木なんの木』(モンキーポッド)を企業のイメージツリーに掲げる天下の日立!より動植物の生態も詳しく取り上げていただきありがたい。この島は「地球でもっとも地球らしくない島」と呼ばれるほど独自の進化を遂げた島で、前回もその個性溢れる動植物の姿には魅せられました。島独特の地形の影響で強烈な風が吹き、枝の風下から新緑が出たりと生命力のたくましさを感じます。世界中のザクロの原種はわずかに4本しか残っておらず、そのうちの貴重な1本・ソコトラザクロも紹介されていましたが、果実樹の幹には食指が動きます。まずは蜜柑の木から活かさねばならんでしょう。ドラゴンツリーと呼ばれる由来は以前にもブログで紹介しましたが、モンスーンの霧が山にぶつかった水分をより多く吸収するために椎茸のような形になったという事です。その樹液が赤く、止血剤としての用途も高く、かつては剣闘士たちにも重宝されたようです。

 

20101010 竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!③立派な傘を広げた状態になったもので樹齢500年以上という事ですが(年輪がないので推定ということらしいです)、幼木は山羊などに食べられ、その成長過程が謎のベールに包まれていて、近年になって種から育てるプロジェクトが進められているとの事です。何年ぐらいすればその姿になるのかを探るという壮大な計画です。どの苗がそうかという事が問題になっていて、答えは草のようなものでしたが、苗も販売されています。500年先に夢をつないで育ててみようかな~。

20101010 竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!④実は以前に高知県の牧野植物園に行った時に温室で、このドラゴンツリーの幼樹に出会いました。その時点でデジカメのバッテリーランプが点滅しているというとても危険な状態ですが、なんとか撮影に成功、余裕があればもっと別アングルでも撮影したかったのですが。展示してあったのはカナリア諸島のドラゴンツリーでした。クイズの答えはまさにこの画像の幹の無い姿でした。そこから葉っぱをグングン押し上げて成長していくのでしょうか。

20101010 竜血樹・ドラゴンツリー、ふたたび!⑤あの奇妙な姿になるまで500年から1000年、この木はどんなドラマを目撃するのでしょうか。もしも将来、木から過去の記憶を取り出し映像化する技術が確立したとしたら、そこには多くの歴史書を塗り替えるような大発見があることでしょう。しかし、その真実は100数年しか生きることの出来ない人間には知ってはならないし、知れば耐えられない事なのだと思います。その耐え難き苦しみにドラゴンツリーは血を吐くのでしょうか。1000年も生き続ける事の意味など人間に計り知ることなどで起用はずがありません。忘れる事の出来る生き物・人間のなんと素晴らしいことか。忘れっぽい私はつくづく思うのです。ドラゴンツリーの他にも『キュウリの木』と呼ばれる木や『乳香の木』など面白い木も取り上げられていましたが、ああっ、こんな所で端材が手に入れば【ソコトラのかけら】が出来るのに!何らかの理由で伐採する木や倒木のあるはず、その結末が気になる~!

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