森のかけら | 大五木材

今日のかけら・#047【辛夷/コブシ】 モクセイ科モクセイ属・広葉樹・宮城産

kobushi no tobira

コブシ咲くあの丘 北国の春♪ ①

1. 今日のかけら

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Exif_JPEG_PICTURE先日の『陶工房もちの木』さんの内装に使っていただいた木の紹介の際に少しだけ触れましたが、ニレの踏み台の小壁に使われた『コブシ(辛夷)』の丸太。このコブシという木は、ホオノキモクレンなどと同じホオノキ科の落葉高木で、成長すると15mほどになります。北海道から九州、そして朝鮮半島にまで広く分布して、花木としても植栽されているのですが、野生のものとなると四国に関しては徳島県内でわずかに自生しているだけだそうです。
03四国の山中でコブシに似た木を見つけたら、それはコブシではなく同じモクレン科モクレン属で日本固有種の『タマシバ』の事だという事です。日本海側にはコブシよりも小型で葉の細いこのタムシバが、北日本ではコブシよりはやや葉の大きな変種『キタコブシ』が分布していますが、なるほど辞典を見れば確かにコブシとキタコブシ、タマシバ、それぞれ花の形、似たようなというかそっくり!自慢じゃありませんが私にはその違いが分かりません。

 

04北日本の方には街路樹や公園木としても馴染みの深い木だと思うのですが、私がこのコブシの名前を初めて知ったのは、「白樺 青空 南風 こぶし咲く あの丘 北国の ああ 北国の春 ・・・♪」で始まる千昌夫の名曲『北国の春』。この曲でコブシという木の存在を知りました。ただ当時はコブシの木や花の事などまったく知りませんでしたので、コブシの咲いている風景がどういうものなのかよく分からず、漠然としたイメージでしかありませんでした。

 

Exif_JPEG_PICTUREそれから10数年後、まさか自分がコブシを扱うような仕事をするとは想像もしていませんでしたが、『陶工房もちの木』さんでも使わせていただいたようにコブシはもっぱら樹皮がついた丸太のままで使われます。コブシ=拳という言葉のイメージからすると何だかズシリと重たい硬質の木のように思われるかもしれませんが、実際のコブシを持ってみれば材としてはかなり軽量の部類に入る方の木です。それでは明日からコブシの性質や名前の由来について。


 

コブシ咲くあの丘 北国の春♪ ②

1. 今日のかけら

Exif_JPEG_PICTURE本日も『コブシ(辛夷)』の話。銘木屋に行くと、床の間や茶室などの飾り柱や落とし掛けとしてさり気なくコブシが提案されていたのです。ただし残念ながら若かった私はまだ『かけらの洗礼』を受けてなく、スギヒノキといった今日目の前を駆け抜けていく飯のタネとしての木にしか興味を抱けれない人間でしたので、コブシと聞いても何の感慨もありませんでした。タイムトラベル出来るならばその当時に戻って、自分を覚醒させてやりたいものです。

 

20150316 2コブシは大きくなってもせいぜい15m程度にしか成長しないのと量がまとまらない事から、加工して材として利用される事はほとんどありません。私も【森のかけら】で35㎜角に削ってみるまで、コブシの木肌を見たことがありませんでした。材面の色調は淡い灰白色で正直それほど特徴があるわけではありません。時に小物や漆器木地にも利用される事もありますが、コブシとしての利用の多くは皮付きのまま使う床柱化粧垂木がほとんどでしょう。

 

Exif_JPEG_PICTUREコブシの丸太の樹形には雅な趣きと樹皮にはワビサビの風合いがあるため好んで使われます。今まであまり『コブシ』と意識して使ってきたわけではありませんが、茶室や床の間に雰囲気のある木として何度か収めさせていただきましたし、何気に仕入れていました。そのうちの1本が残っていて先の現場でご提案させていただいたのです。改めてコブシとして意識した頃には在庫もなくなっているというのが皮肉なものですが・・・。

 

Exif_JPEG_PICTUREどちらにせよそいうい丸太は直径がせいぜい60〜90㎜程度のものなので、【森のかけら】には使えませんでした。直径が100㎜もある丸太であれば『かけら』になるのではとよく勘違いされるのですが、芯は使えませんので、35㎜角のかけらを取るためには木の曲がり具合も考慮するならば最低でも直径180〜200㎜ぐらいは必要になります。かけら用のコブシは、宮城県の材木屋さんから大き目の材を分けていただきました。明日に続く・・・


コブシ咲くあの丘 北国の春♪ ③

1. 今日のかけら
20150517 1本日は『コブシ(辛夷) 』の木の最終話。3〜4月頃、葉に先立って小枝の先に純白の大形の花をつけ、北国では春を告げる木として親しまれていています。私が興味深いのはこの材の特徴よりもその名前の由来。和名であるコブシとは、そのまま『拳(こぶし)』の意味で、果実の形がが手を握り締めた拳の形に似ているからだとされています。そう言われればそう見えない事もないですが先人たちの詩的な想像力には惚れ惚れするばかりです。20150517 2花には芳香があって香水の原料にもなることから銘木の世界では『香節』の漢字が使われています。若い頃は、無知ゆえに辛夷と香節が別モノだと思っていました。香る木というぐらいだから幹からも香りがするのかと匂いを嗅いだりしたこともありました。では辛夷という漢字が使われる理由は何か?それは漢方で、モクレンの蕾(つぼみ)を陰干しした生薬を『辛夷(しんい)』といい、鎮痛剤や鼻炎などの薬として用いられている事に由来しています。

 

20150517 3辛夷というのは、その実が辛い事から。日本にはそのモクレンが自生していなかったため、その代用として同じモクレン科のコブシやタムシバが使われてきたため、そのまま辛夷の漢字が充てられたのです。そのためコブシには『山木蓮(ヤマモクレン)』の別名もあります。他にも『田打桜(タウチザクラ)』の別名もありますが、田んぼの土を起こす田打ちの作業を始める頃にサクラに先駆けて咲き、農作業の時期を決める目安にもなっています

 

MINOLTA DIGITAL CAMERA愛媛でも「コブシの花が咲いたらトウモロコシの種を撒け」と言われる地域もあります。また愛媛の方言名には『ユウレイバナ(幽霊花)』というのもありますが、これは白色の大振りの花が咲いた様子を、夕方や月夜に遠くから眺めるとまるで幽霊にように見えることに由来しています。田んぼや畑の近くに咲く事が多いのも、コブシが日陰に耐えて生育する性質を持った耐陰性の木で、やや湿った場所を好むことによるのかもしれません。

 

Exif_JPEG_PICTUREコブシの種は果実を食べた小鳥によって運ばれますが、種子は乾燥に非常に弱く、一旦乾燥してしまうと発芽が悪くなるそうです。樹皮や枝葉からは『こぶし油』が採取されたり、木炭としても金銀などの研磨剤にも使われるなど、意外と言っては失礼ですがコブシにはしっかりとした用途の出口が定まっていたのです。従来の茶室や床の間だけでなくこういう丸太を意匠的に使おうという動きもあり、私自身もこれを契機にコブシの木を見直してご縁を持ちたいところなのですが、現在松山市内での銘木の流通はかなり細っており、昔のように頻繁にコブシのような材に巡り合うのも難しくなってきているのが少々不安なところ。ちなみに英語名はKobus Magnolia。コブシの咲く春はもうすぐです!

 




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