森のかけら | 大五木材

【ニレ】

 楡

ニレ科・ニレ属・広葉樹・四国産(環)

学名:Ulmus davidiana var. japonica

別名:ハルニレ、ヤニレ、アカダモ

 英語名:  Japanese Elm  

    気乾比重:0.42~0.71

 

エルム・サイドストーリー/序章

★今日のかけら #085【楡/ニレ】 ニレ科ニレ属・広葉樹・四国産

久し振りの『今日のかけら』です。本日俎上に上がるのは、『楡(ニレ)』。英語で言うと『エルム(Elm)』ですが、私が木の仕事をする前にこの名を意識するようになったのは、アメリカ史における汚点『ケネディ暗殺事件』が実行されてしまった場所「エルム・ストリート」が初めて。もともとこの種のミステリーは大好物で、中・高校生の頃から盛んにその手の雑誌を読み漁りました。UFO、アトランティス大陸、古代の巨大生物、UMA、陰謀、謀略・・・田舎住まいの少年の心は世界の謎でときめいておりました。

 

なかでもアメリカ合衆国の恥部であり最大の謎『ケネディ大統領暗殺事件』に関しては、映画『JFK』や『ザ・プルーター・フィルム』の最新解析などでさまざまな説が展開されていますが、個人的には後任の大統領リンドン・ジョンソン真犯人説を支持派です。中・高校生の頃(昨今のようにTVで堂々と検証されることなどあり得ませんでしたので後ろめたいような雰囲気の中、国家の陰謀を知っているのは自分だけだ的なドキドキ感で)読んだ落合信彦氏の『二〇三九年の真実―ケネディを殺った男たち』にハートを鷲掴みされました!当時はまだ米ソが冷戦状態で、謀略やスパイなどの「ハードボイルドモノ」が充分に成立する時代でした。

今となってはその立場は危ういものとなっているようですが・・・。話がどんどん「ニレの木」から遠ざかってきているように思われますがもう少々お付き合い下さい。それで当時漠然と記憶にあった『エルムストリート』の名前が次に鐘を鳴らすのは、大学生の時に観た映画『エルム街の悪夢』です。この悲惨な惨劇の夢舞台(?)となる『エルムストリート』はダラスのそこではなく、あくまで架空の街という設定ですが、誰もがあの事件をイメージするのは必然。そして三度目の覚醒が、職業としての木材としてです。

ここまで書くと「エルム」にネガティブなイメージを持たれるかもしれませんが、ミステリー好きで、映画好きの私としては、木を語るうえでの「たまらないサイドストーリー」でもあります。もうそれだけでエルムが好きになってしまうじゃないですか!木を知り、木を語る楽しみはこんなところにもあります。産地や学名、特徴や気乾比重を知るという直球勝負もいいですが、時にはこういうパスボール必至の変化球も楽しいのでは!しかしそれだけでは納得のいかない方向けに明日は真面目に木の話!

エルム・サイドストーリー/②楡の出口

『楡(ニレ)』の木の説明をするのに、英語名の『エルム』から「ケネディ暗殺事件」の現場となった「エルムストリート」を引き合いに出す材木屋なんてきっと他にいないんだろうなあと、改めて己の立ち位置を確認して悦に入っております。しかし、木の話」を「木の世界」だけに留めてしまうなんて、なんてモッタイナイ!頂にたどり着くのに色々なアプローチがあっていんだと思うのです。料理方法(加工)次第でどのようにも形を変える「したたかさ」こそが他の資材とは袂を分ける木の最大の特徴でもあります

さてそのニレですが、大別すると春に開花するハルニレ(春楡)と、9月頃開花し、11月頃に実がつくアキニレ(秋楡)に分けられます。秋楡の葉っぱは春楡より小さくてブ厚いようですが、一般的には「ニレ」というと、「ハルニレ」の事を指すようです。我々が扱う「木材」としても「ニレ」としてひとくくりにされて流通しています。それが「ハルニレ」なのか「アキニレ」なのか考えたりした事もありませんでした。「材」となってからその違いを識別することは困難なのではないでしょうか。

ちなみに【森のかけら】に加工しているのは、身元を確認した「ハルニレ」です。ニレは、非常に重厚な木で、その強度を生かして車軸にも使われたりするので、別名石欅(いしげやき)とか「河原欅(かわらげやき)」とも呼ばれます。ただ地域によっては、欅の中でも非常に硬い材質のものを「石のように硬い欅」として「石欅」と表現する地域もあるようです。実はそれもニレがいまひとつ知名度が低く、認識が薄い事に起因しているのかもしれないと思うのです。

 

木目のくっきりした日本の広葉樹の代表格と言えば、ナラ、タモ、クリあたりになると思います。戦後に小学校の学童机を製作する際に、ナラ、タモ、ブナの樹種が採用されたのですが、どういう理由かニレは選考から漏れたために、これらの広葉樹の中で用途のはっきり定義されないニレだけが著しく安い価格で取引されることとなり、その後もマイナーな評価を脱しきれないという話を聞いた事があります。それだけが原因というわけではないでしょうが妙に説得力のある話だと思います。更に明日へ続く。

 

エルム・サイドストーリー/③マットな質感

 

弊社にも『ニレ』の挽き板はあるのですが、日々倉庫を巣立っていくナラやブナを尻目に、いつまでも寂しそうに倉庫の中で埃をかぶっているのがニレです。良い悪いの問題というよりも、(それも「個性」なのですが)触感がザラっとしていて光沢や艶が無いのがニレの特徴で、手(触感)と目(視覚)で無垢材を楽しみたい方にはどうしても物足りなく感じてしまうのかもしれません。鉋でいくら綺麗に削って仕上げてもトチやカエデのような触感は生まれません。ナチュラル・マットな仕上がりです!


だからといって材が低級なのかというとそういわけではなく、粘りや強度もあり、価格もリーズナブルですから用途次第、『出口』次第だと思うのです。明確な出口さえあれば、評価は後からついてくるもの。その木でなくてはならない絶対的は王道の出口の重要性を感じます、特にニレには時には大きく耳が変化した周辺に複雑な造形の『ニレ瘤』と呼ばれる瘤(こぶ)が現れたりして、そこに斑点のような面白い柄が出たりもします。むしろ大人しい赤味よりも瘤を意匠的に使う事もあるぐらいです。

このHPを立ち上げた頃にご紹介した事があるのですが、そんなニレの出口がこちらの「フライ返し」です。英語ではspatula(スパチュラ)なんてお洒落な言い方もあるようですが私には馴染めません・・・。ニレの柾目部分をうまく利用して、絶妙の角度がついているのですが、目玉焼きなどを引っくり返すには最適。目玉焼きの下にスルリと入り込む感触がたまりません!製作していただいたのは内子に工房を構えられクラフト製作に励まれている『樹のぬくもり工房』さん。丁寧な仕事ぶりです。

 

日本人は豊穣な森から生まれいずる「恩恵」に多種多様な「出口」を見つけてきました。それは『適材適所』という言葉が表わすとおり、材の特質を見抜いた優れた知恵の文化です。それは決して沢山生えているわけでもない木々に対しても同様のまなざしが向けられ、木材が日本人の暮らしにとっていかに重要な素材であったかという事を証明するものでもあります。にも関わらず、分布域が狭いというわけでもないこのニレに対して「王道の出口」が定まっていないというのも妙な気がしていました。そしたら・・・続きは明日へ!

エルム・サイドストーリー/④樹の出口

そう思ってモノの本を調べていたらニレの出口が沢山ありました!粘りがあり割裂しにくいことから太鼓の胴にも使われているようです。またその硬さを利用して木槌掛矢(建築現場で使われる大きな木槌)、などの器具材、車両材など。さらに切削性が良い事から刳(く)り細工としても重宝されるようで、東北地方では仏像彫刻の彫材にも使われているそうです。製炭すれば硬い炭も出来るとか。さすが木を愛するわが日本民族、抜け目がありませんでした。まだまだ勉強不足・・・反省。

 

ニレ属の木は寒さに強い落葉広葉樹で、北半球の温帯地方に広く分布しています。ヨーロッパには、『レッドエルム』や『グレイエルム』など幾つかの種類に分類されます。それらの材の用途としては、家具、水車の板、荷車の車輪、棺桶、戦車の車輪などに使われてきました。古代ギリシャにおいては、エルムは黄泉の国に生えているとされ、墓地などにも植栽されたようですドイツではエルムは農地の守護者であり、人間社会と大自然の霊との間にある門を守っているとされています

ニレは成長すると高さ25m、直径2mほどになるものもあり、老樹になると半球形の綺麗な樹冠をつくるため、その壮大で重厚な樹形から公園や街路樹に植えられることも多いようです。しかしハルニレは贅沢な生育条件を求める木でもあり、乾燥しすぎず湿りすぎずほどほどに水分が必要で肥沃な土地を好むようです。「エルムの街」として有名な札幌などはその条件がピタリと当てはまる場所という事だそうです。

アメリカでは先住民たちが、エルム(ニレ)の木を土地選びの指標にしていたとか。つまり立派なエルムが生えている場所は、水を得やすい環境にあり、かつ洪水の心配もなく、土地が肥えていて耕作などにも適していることが分かるからだそうです。ボストンの街などはそうして生まれたとも言われており、先人たちは材としての「出口」だけでなく「樹」としての「出口」までしっかりと見据えておられたようです。ダラスのエルム・ストリートにも導きのエルムが沢山植えられていたのでしょうか。明日の完結篇へ・・・。

エルム・サイドストーリー/⑤高貴な滑(ぬ)れ

英語のエルムの語源はケルト語の『Ulme』からきていて、神オーディンが樹を人間に変えたとき、その1本がニレで女性になった。その女性の名をEmbla(エムブラ)とし、そこからエルムになったという神話もあるようです。日本においても 、葉が大きく大木になるハルニレを『雄(おん)ニレ』と呼ぶのに対して、葉が小さく小枝が多く樹形も優しいイメージのアキニレを『雌(めん)ニレ』と呼ぶ地域もあります。国が変われどもその樹形から男女の別をつけるあたり、樹に抱く認識は世界共通のようです

ちょっと脱線しますが、上記の神・オーディンについて。北欧の神話に登場する神々の王・オーディンは強大な魔力を持ち、その威厳は人間界にも響き渡っていました。そのオーディンと人間界の女神ジョオドの間に生まれたのが、昨年公開された映画『マイティ・ソー』その人です。映画では王・オーディンを名優アンソニー・ホプキンスがケレン味たっぷりに演じていました。「レクター博士」(!)に引き取られて世継ぎとして英才教育を受けたわけですから、独尊傲慢になるのも止む無し・・・。

さて日本語のニレの語源は、木の皮を剥がすとヌルヌルする事から、「滑(ぬ)れ」が訛ってニレになったという説が有力なようですが、ニレの内皮を剥いて叩き、トリモチを作る事もあり、そこからネレ・ネレ(練り)が語源となっているという説もあります。アキニレの葉を硯に入れて墨を摩(す)るとよく粘りが出ることから『ネバリギ』なる俗称もあるようです。ちなみにニレの木言葉は『高貴』。ケヤキやタモの代用品というイメージを払拭して木言葉に相応しい『出口』も考えねば。

以前、北海道産のニレの神代木(土埋木)を幾つか在庫していました。ニレの特徴として光沢や艶が無いマットな質感と述べましたが、長い間地下深くに埋もれている間に、「光沢や艶」を「わびさびや深み」と交換したニレの土埋木にとっては、本来のマットな材質が幸いしているように思われます。もともと乾いた質感ですが、一層渋みが増して時代がかった雰囲気になったように感じられます。ニレの神代木についてはいずれ日を改めて。それではこれにて『今日のかけら・楡篇』完結です!

モチノキのある陶工房「もちの木」②

昨日に引き続いて『陶工房もちの木』さんで使っていただいた木の話。陶芸の作業をするための作業台として収めさせていただいたのがこちらのガッチリした骨太なテーブル。この上で強く土をこねるので耐摩耗性に優れたタフな木を、という事で採用いただいたのがウィスキー樽にも使われる事で耐久性が証明されているホワイトオーク。作業性を重視したシンプルな造りですが、厚みが40mmの板を1m幅に剥ぎ合せていますので相当な重さ!

しかも脚がアイアンなので、完成すると大人の男3人でもどうにかこうにか持てようかというレベル。納品させていただく時にも、3トントラックから降ろすだけでもヒイヒイ。地面にさえ降ろしてしまえば後は台車に乗せて運べます。陶芸の作業台という事でしたので土間に設置させていただきましたが、これが二階とかなら天板と脚をばらしてもいけたかどうか・・・。ホワイトオークの重硬ぶりは、皆さんがイメージされるそれ以上です。

ホワイトオークの項でも書かせていただきましたが、この木の導管はチロースという成分で塞がれていて非透水性が高い、つまり栓がしてあって水分を通しにくくなっています。その特性を利用してウィスキー樽に使われているというのは有名な話。それがこの重さとも関係があるのかもしれませんが、まあこれだけ頑丈であればどれほど強く土をこねていただいても大丈夫ではないかと思います。ここでこれから数々の逸品が生み出されていく事でしょう。

『もちの木』さんでは他にも随所に木を使っていただきました。その1つがこちらの北海道産の『ニレ(楡)』の耳付き板。ニレはニレ科の広葉樹で、少し緑を帯びた灰褐色の中に凛殻の強い杢目が現れ、ウッディな雰囲気がよく味わえる木なのです。こうして実例を見ていただけると、その妙味を理解していただけると思うのですが、私の押しが弱いのか相性が悪いのか、今までなかなかニレの木に光を当ててやることが出来ませんでした。ニレ、いい木なんです!

モチノキのある陶工房「もちの木」③

またまた本日も『陶工房もちの木』さんで使っていただいた木の話です。重硬なホワイトークの作業台があるアトリエの奥には、畳敷きの和室があってそちらには亀井紀子さんの造られた数々の作品が展示されていました。の踏み台に藻の変化のある耳付きの『ニレ(楡)の一枚板を使っていただきましたが、その踏み台のから立ち上がった白い小壁に沿って大胆に曲がった皮付きの丸太があります。これが『コブシ(辛夷)』の丸太。そう、あの千昌男の「白樺 青空 南風 こぶし咲く あの丘 北国の ああ 北国の春 ・・・」の『北国の春』で有名なあの『コブシ』です。そのコブシについては後日改めて『今日のかけら』コーナーにてご紹介します。

本日はその踏み台の『ニレ(楡)』の方について。昨日もニレの特徴に触れましたが、左の写真は削る前の状態のニレ。表面に汚れや埃が付着しているのでまったくの別人(木)のように見えるかもしれませんが、耳の凸型に飛び出した部分に名残りがあっるのが分かると思います。このニレはとりわけ甘えん坊でなかなか家(倉庫)を巣立たなかったため、加工前と後の差が極端に見えるでしょうが、ひと削りすれば美しい面が現れます。

こういう踏み台の他にも手洗いや洗面カウンターなどに耳付きの板を使いたいという要望は結構多くて、図面に自由に描かれたR型の耳付き板を探すこととなるのですが、相手も自然のものですから、うまい具合にイメージとピッタリ合うものを見つけるのは至難の技!いい感じのコブがあると思ったら左右の向きが逆とか、テーパーの角度が強いとか弱いとか、サイズがピッタリ合ったと思ったら今度はねじれがあったり厚みが薄すぎたりと・・・。

そうやって次から次から材を引っ張り出してようやくピッタリの形のモノを探し出した時の喜びと言ったらそれはもう!次は加工ですが、どうか虫穴や桟跡が出てきませんようにと祈るばかり。節や割れについては、裏面を見れば大体予想がつきますが、耳付き板の場合怖いのは耳を削った時に出て来る虫の穿孔跡。こればっかりは削ってみないとどれぐらい深くまで入り込んでいるか分からなく、信仰心薄い私でさえ神の祈らざるをえません。

今回はほとんど虫害もなく綺麗な耳が取れたのでホッとしましたが、こういうリスクも耳付き板の宿命です。まあそれも含めて『生き物』だと、思うぐらいの寛容さがあれば木のものってかなり楽しめる幅が広がります~。家具などを納品させていただく楽しみの1つに、納品後の施主さんとの雑談があります。他愛もない話をするばかりですが、それだけでも随分と『木を愛でるチーム』としての連帯感は深まっていくものです。亀井さん、ありがとうございました!

春はあけぼの、やうやう色褪せゆく新聞紙

長らく倉庫の奥で眠らせていた『北海道産楡(ニレ』の耳付き板を引っ張り出して、選別作業中。乾かせるために寝かせていたのではなく、たまたま出番が回ってこなかっただけなのですが・・・。こちらが強く営業してこなかったということもあるのですが、どの木が使われるのか、どの木に声がかかるのかって本当に巡り合わせで、ある樹種に声がかかってもたまたまその樹種を持っていなくて、いくら探しても適性サイズが適正価格で見つからない場合は、樹種が変更されてしまう事もあります。それが不安で多様な樹種を持っているというわけでもないのですが。

設計士さんやデザイナーさんの中にもそれぞれマイブームがあったり、今はナラの流れとか、今はブラック・ウォールナットの時期とか、なぜかやたらと使いたい樹種が偏る事って結構あります。それらの個々の嗜好が集まると、大きな流れが出来て、家具には明るめの広葉樹が好まれるとか、やや暗めの落ち着いた色合いのフローリングが人気とか、時代の流行やら潮流というものを作っていくのだと思います。まあ、弊社の場合はそんな大河の流れに逆らうようなひねくれ偏屈材木屋ですので、あまり世間様の流行とは無縁なところではあるのですが・・・。

ニレ』という木は、そういう流行にはあまり影響を受けない安定感のある木だと思いますが、逆を返せばあまり個性が際立たない、癖の少ない定番の木と言えるかもしれません。木目も明瞭でしっかりしていて、ほどほどに杢の妙味を楽しめて、耳付きでも使えるし、適度な硬さもあってしかも値段もそれほど高くは無いという汎用性の高い木なのです、弊社にお越しになって木を選びたいという奇特な方々にとっては、素直すぎてもの足りなく映ってしまうのかもしれません。そういう事もあってか、長らく倉庫の住人になっていました。

割れ止めのために北海道の製材工場で小口に貼られた新聞紙の色褪せ具合が、その長い倉庫暮らしの哀愁を物語っているではありませんか。さすがに『昭和』時代ではありませんが・・・。こういうのって、部屋の掃除をしていたら昔の新聞とかが不意に出て来て、懐かしさのあまり片付けの手を止めて読み込んでしまうという感覚。しかも普段見慣れない北海道の新聞という事で文字を追って見ていると、日付が残っていてそこには『2001年』の文字が!なんと14年もお眠りになっていたのです。春はあけぼの、今年こそは眠りから覚めていただきましょう!

ハマー家御用達材木店の話①

ハマーさんファミリーとの最初の出会いは今から6年ほど前の事。新居のフローリングやダイニングテーブルなどを納品させていただいたご縁で、その後ご長男の小学校入学に合わせて、勉強机を作らせていただくなど、長いおつきあいをさせていただいております。初めてお会いした時にはまだハイハイしていた息子さんがいまやすっかり大きくなって・・・。やがて次男が生まれて、長男の勉強机を納品させていただいた折に、「いずれ次男の時もお願いします」と、ありがたいお言葉。

こういう言葉が社交辞令で終わらないのが、木材フェチの皆さま!キッチリ次男の小学校入学に合わせて勉強机のご注文をいただきました。いや~、こうして長い期間継続的に木の仕事を通じて関わらせていただけるのって本当にありがたい話で、材木屋冥利に尽きます。お兄ちゃんの時にもそうしたように、倉庫の中でご本人に「木選び」をしていただきます。子どもなんかに分かるわけないんだから大人が選べばいいんだよ、なんて思われるのは早計。幼くたって嗜好はきちんとあるのです!

これから長い時間自分がもっとも接する家具なのですから、木の名前や特徴など分からなくとも見た目の色合いや触感など、ピンと来る木は必ずあるはず!当然サイズや、価格の事もありますので、世界三大銘木・チークや世界遺産・屋久杉、さあどれでもどうぞ♪というわけにはいきませんので、そこはキッチリ大人として『お導き』させていただきます。雑誌などで予備知識を詰め込みすぎて頭でっかちになっている大人に比べると、子供はインスピレーションで決めるので勝負は早い!

それでも最終的には耳の触感や塗料により色合いの変化等もご確認いただきまして、ご納得されてお決めいただいたのは『エルム(ニレ科)』の一枚板。小学生の勉強机に一枚板なんて贅沢~!と仰る方もいるかもしれませんが、何が贅沢で何が贅沢でないのかは個人の感覚の問題。私はプラダやグッチなんかのブランド品に何十万もかける気持ちが分かりません。それだけの金があればやっぱり一枚板買っちゃうな~。そんな気持ちの分かる方の元にお届けさせていただいてこそ価値がある!続く・・・

ハマー家御用達材木店の話②

ハマーファミリーのご次男の勉強机を作らせていただきました。その前にこちらが4年前にご長男の小学校進学に合わせて作らせていただいたモンキーポッ一枚板の勉強机。少し長さに余裕があったので、天板を取った残りでワゴンの天板と引き出しの扉板を取らせていただきました。製作したのはお馴染みの善家雅智ZEN FURNITURE)照明の関係でかなり赤く写って見えるかもしれませんが、植物性オイル塗装仕上げなので、本来の色合いが濡れ色になった茶褐色。

一方こちらが次男君のお選びいただいた『エルム(ニレ科)』の耳付きの一枚板を使った勉強机。兄弟でのちのち揉めないようにサイズも仕様もほぼ一緒。照明の関係でこちらは逆に淡くとぼけた色合いに写っていますが、実際にはもう少し濃い色目。モンキーポッドほどに赤身と辺材のコントラストは極端ではありません。辺材にもオイルが浸透してやや灰褐色になるので、赤身との差はそこまで明瞭にはなりませんが、一枚板での醍醐味は十分に堪能していただける思われます。

耳の触感の滑らかさはモンキーポッドとも双璧。ワゴンは3段のキャスター付きですが、こういうシンプルなデザインの仕様の勉強机は今までにも沢山作らせていただきました。世の中には斬新な機能を備えたものや、デザイン性に優れたスマートなものも一杯ありますが、無垢の勉強机を作ろうと弊社に来られる方の多くは、このようなシンプルな仕様を望まれます。無垢材を使いたいというような方ですので、下手に装飾的なモノを付け加えたりするよりシンプルイズベストがご希望。

天板は幅剥ぎという君合わせもありますが、いずれにしても基本デザインはこういった感じです。当の子供にとってはあまりにシンプルで渋過ぎるかもしれませんが、小学校や学校に通っている間の数年間だけ使えればいいと思ってはいませんので、卒業後もワークデスクとして長く使っていただいて飽きのこないものというつもりで、シンプルかつ丈夫に作らせていただいています。なので当事者の評価をお聞きできるのは、親心が理解できるようになっただいぶ先の事になろうかと・・・。




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