森のかけら | 大五木材


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道後温泉の話ですが、昨年は愛媛国体などの影響もあって、道後温泉の利用者数は久しぶりに100万人に届くのではないかと思います。近年は90万人台で推移しているようですが、ピークだった昭和36年は400万人に迫る勢いだったということで、それから比べると1/4まで減っています。全国的な温泉ブームが起きたり、国内旅行そのものが盛んだった時代ですから、それが過熱していたと思います。誤解を恐れず言ってしまえば温泉なのですから90~100万というだけでも凄い数字だと思います。

それで気になるのが100万という数字。道後温泉にとっては、100万人再びということで目標達成の希望の数字だと思われますが、住宅・木材業界ではこの100万という数字は別の意味を含んで「神話化」されています。それは新設住宅着工数、つまり新しく建った家の数です。現在は確か70~80万戸で推移していると思われますが、私がこの業界に入った30年前、バブル真っ盛りの頃は170万などというとんでもない数字をはじき出していて、バブルが崩壊してもなお120万戸などを維持していました。

その頃は、何の根拠もないのに日本では絶対に100万戸を割ることがないと信じられていました。今にして思えば盲信だったのですが、そう信じることが心の拠り所であったし、バブル景気で何が基準なのか分からなくなっていたのだと思います。信じられていた住宅の着工数100万戸の神話は、金融危機とともにあっさり崩壊しました。もはや100万などというのは夢まぼろし。ある調査機関などは2025年には60万戸になるという予測を出していますが、きっとそれは現実になるであろうと思います。

住宅産業と観光産業で100万という数字へのモチベーションは大きく異なりますが、思い起こせばバブル時代の業界の新年会などの挨拶では、その数字が誇らしげに語られて、道後での忘新年会の数も競われたものでした。それがいつの間にかその数字は「絶望へのカウントダウン」のような意味合いを持って語られるようになり、数字の持つ意味合いは大きく異なってきました。これから先、その絶望に怯えながら何もせず生きていくのか、勇気を持って新たな出口へ踏み出すのか。道後の風は冷たい。




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