森のかけら | 大五木材


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私が大五木材に入社した当時にも、バンドソーやプレーナー加工機ぐらいはありましたが、それらはもっぱら弊社に刻みに来られた大工さんが使うものであって、自ら積極的に使うものではありませんでした。その後、プレカットの台頭とともに、現場での加工作業が激減。材木屋でもガンガン加工するようになり、現場に届けるのは加工された木材ばかりになってきました。そういう流れで弊社でもプレーナー加工やサンダー仕上げ作業が日常のこととなり、現在ではベルトサンダーを使わない日はないほど

それだけ加工するにも関わらず集塵装置を取り付けていないので、日々木粉が倉庫の中に積もっていくのです。作業場が狭いこともあって集塵装置を取り付けずにきたので、いちいちおが屑を救い集める作業にも体が慣れてしまいました。その加工場の奥にもいくらかの長尺の耳付き板を積み上げているので、久し振りに表に引っ張り出したりすると、長い期間にわたり堆積した木粉がまるで地層のよう!その上を小さな虫が這いずりまわっているので、こういう『デスバレーの動く石』のような軌跡が現れるのです。

これは『ダリナ(アンゲリン)』の幅広の一枚板の上に積もった木粉。ブロワーで少し飛ばしてみれば、赤身を帯びたダリナの姿が見えてきました。材木屋と木を食す虫は切り離せれない関係で、樹皮に潜む幼虫から、倉庫を飛び回る成虫、海外からのバンドルに交じって密航してきた異国の虫などさまざまな虫が入り込んでいます。木は決して人間だけのものではありません。そこをねぐらとしたり、生きるための糧としている虫たちにとっては、根こそぎそれを奪う人間のほうこそが侵略者や破壊者なのでしょう

とはいえ、こちらもその『木』で飯を食っていかねばならない身。どこかで折り合いをつけねばなりません。立派な材をボリボリと齧られてしまうと、そんな悠長なことも言ってられませんが、幸いにもというか恥ずかしながらも弊社にはそんな立派な銘木は無いので、在庫品が喰われてしまったら、それはそれで出口を切り替えるのみ。端材の活用に関してはちょいとノウハウもありますので、虫食いの木とてそれなりに使えます。それよりもそういう時に気になるのは、虫たちが喰った穿孔の軌跡、こっれてアート!?

木粉の上に描かれた軌跡は消えゆく運命にありますが、樹皮を食った軌跡は残そうと思えば残せます。それでそこにどんな価値があるのかと尋ねられますが、価値を見出しているわけではなく、面白いと思っているだけ。面白いなんて言うと、自分が生きるために必死にもがいた虫に対して失礼な話かもしれません。樹皮に産み落とされ、生きるためにがむしゃらにそこにある「食料」を必死に食っただけのこと。ここまで食うかと思うほどに食い尽くし薄っぺらくなった樹皮、そこに打算はなく真摯な生があるのみ。




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