森のかけら | 大五木材


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先日の「薫風の似合う100%無垢の家」の続篇です。相当に無垢材を使っていただきましたので、まだまだご紹介したいところがあります。竣工した時は、まだHPもブログも無く、ましてやメールさえ出来なかった頃なので、一眼レフのフィルムで撮影させていただきましたが、現像代も考慮してかなり遠慮した枚数しか撮影できませんでした。また撮った画像をお披露目する場も、『適材適所』ぐらいしかありませんでしたから、折角の画像も引き出しの中に眠ってしまっていました。今回このような形で再び撮影する事が出来て、お施主さんには申し訳ないのですが、正直とても嬉しかったのです。なにしろ、ここまで内装材、家具に至るまで徹底して無垢にこだわった現場は、そう滅多にあるものではないからです。その徹底振りは、玄関のポストにまで及んでいます。こちらもご依頼を受けて、和風の外観に合わせて作ったオリジナルデザインのポスト。

5年の間、風雪を受けて、ブラック・チェリーのポストはかなり白銀化・・・いや、渋~いロマンスグレー!に変貌しておりました。ポストとして使うにあたって、何も問題はありませんが、少し御色直しをして欲しいという事でしたので、持ち帰って磨かせていただくことになりました。外壁から外そうとよく見ると、ポストの上に緑色のものが・・・アマガエルでした。鮮やかな緑色が、ロマンスグレーの中で異彩を放っております。この辺りは自然も豊かで、庭にもいろいろな小さな来訪者がいそうです。

アマガエル君には申し訳ないのですが強制撤去していただき、工場へ持ち帰りました。ポストの設置してある部分に上屋根は無いのですが、植物性油を何度も重ね塗りしていたので、これでもよくもってくれたと思います。開閉するのに少し窮屈になっているぐらいで、使用に支障はありません。サンダーで磨くと徐々に元の色合いが蘇ってきました。至る所に積み重ねた年数が顔を覗かせます。丹念に磨いて再び植物性油で塗装すると、酸いも甘いも噛み分けたような渋みと風格のあるポストに変身しました。

万事がこの調子で、生まれた時の表情に戻るのではなく、5年という年月を刻み込んだ証しをしっかり残して、上澄みの埃が少し取れて、歳相応の姿がよりはっきりとしてきたという感じです。折角ここで、家族に愛され、撫でられ、共に生きた歴史を抹消するためのお色直しではありません。傷や染みはそれなりに味わいが出てくるものであります。元の姿に復元するのではなく、使用するに際して支障のありそうな傷だけお化粧直しをさせていただきましたが、正直その扱い具合には感心しました!

お子さんが女の子だった事もあるのでしょうが、我が家のような白壁にマジック!とか、柱におもちゃの豪快な投げ傷!などは見当たりません。家具では、上の画像の栗の座卓ヨーロッパビーチのキッチンの作業台を削り直して再塗装したぐらいです。どの家具とも久し振りの再会で、当時の事が思い起こされ、ひとりで妙に胸を熱くしておりました。栗は枕木に使われる事から、堅い・強いという印象があるかもしれませんが、鋭利な刃物にも耐える硬質な堅さとは違い、押しつぶしてつぶす鈍器の鉈(なた)にも耐えるような堅さが感じられます。まさに忍耐の象徴です。この栗は、岩手県産のもので、当時大量に岩手の栗の板を購入したのですが、その中の1枚でした。また、隣の部屋の床には栗のフローリングを貼っていただきました。こちらも岩手産。この床はお色直ししていません。5年住まれた家の床とは思えない美しさ!

栗は、楢と違って木目が甘く、素朴で優しい雰囲気があります。タンニンを含んでいる事から、塗装直後から歳を重ねるごとにドンドン色味が変化していきます。中には少し緑色っぽくなったりするものもあり、竣工直後の写真から比べると、その色の深みに驚くほどです。私は、この緊張感から解き放ってくれるような栗の緩やかで開放的な木目が大好きです。この辺りでは良質な栗材の入手はほとんど不可能ですが、岩手には驚くような良質な栗材がまだまだたくさんあります。

初めて岩手に行った時には、山の土場に延々と巨大なの原木が積み上げられた光景は、初めて目にする驚愕の世界でした。国産のこんな大きな栗が・・・!それがさも特別な事では無いように語る地元も製材所の親父さんたちの誇らしげで頼もしい顔は今でも決して忘れられません。資源が豊富だからドンドン使えばいいというものではなく、無駄なく有効に使って、誰かに喜んでもらえるものにするという事が我々の使命。随分昔に書いた物ですが㊨、懐かしくなったのでアップさせていただきます。今、東北は東日本大震災の影響で大変ではありますが、先日、尊敬する岩手の大先輩・日當和孝さん(マルヒ製材から「心配掛けたけど復活するから大丈夫だよ!」と明るい声でお電話をいただきました。寡黙で粘りがあって忍耐強い栗のような東北の木材人のそのお言葉を信じます。ああ、また岩手に栗を見に行きたくなりました!




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