森のかけら | 大五木材


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この数年で大工さん、工務店さんやハウスメーカーなど建築のプロの方々よりも、一般のアマチュアのご来店者数の方が増えました。専門の方々は特殊な材でなければ電話やメールで対応出来るのでそもそも来店する必要が減っているという事もあって、大事なポイントの時は材の打ち合わせや確認に来られます。一般の方の場合、端材目当ての方、家具を作りたい方、家具を注文に来られる方など目的はさまざまですが、圧倒的に多い要望は『木の耳を活かして使いたい』!

お客様のご要望を聞いて、「耳を活かしたいという事ですよね?」と確認すると、「耳?」という反応が多いのですが、『木の耳』という表現がどれぐらい浸透しているのでしょうか?材木屋は当たり前のように使っている言葉ですが、一般には馴染みが薄いのかもしれません。「耳って面白い表現♪」って言われることもあります。改めて考えれば「木の耳」って絶妙の言い回しだと思います。さて先日は、そんな木の耳を使わしてもらった飾り台を作らせていただき『甘い場所』に納品。

松山市越智町にあるミカンカフェ/mikan cafe さんです。実はこちらのお店ではローテーブルやオーナーの永尾シェフのご自宅の家具など家具など今までもいろいろと木を使っていただいております。今回は季節の洋菓子を陳列するための飾り台をご注文いただきました。ベニヤや合板でも出来るものをあえて本物の木にされるところが、素材にこだわるオーナーならでは。今回は白くて清潔感のある北米産のモミ(樅)の耳付板を使わせていただきました。

開店前の朝早く納品させていただき、早速商品を陳列した写真も撮ってもらいました。食べ物には疎いので名前も分からないのですが、栗を使った甘いくて美味しそうな焼き菓子が居並び、秋感のディスプレイの中でモミの板もしらっとそれらしく仲間入りさせていただいております。うちの倉庫では埃にまみれていたモミですが、こういう華やかな場面に使ったもらい、来られるお客さんの目を楽しませるお手伝いが出来ると思うとありがたいです。ただ問題は、見ているだけでは我慢できなくなって、木を買っていただいたお礼の気持ち以上についついお菓子を沢山買ってしまう事(笑)。これは我慢できませんわ~。お菓子屋さんからの注文増えるたびに私の体重も増えていく・・・幸福の連鎖!?




クヌギは、非常に重たいうえに乾燥にともなって芯から放射状に割れが入りねじれる性質があるため、建築材では使われることはほとんどありません。そのためこの業界に入ってから「手を出してはいけない木」、「建築では使えない木」として教え込まれてきたので、私がクヌギに手を出すようになったのは今から10年ほど前の事。当初はどう扱ったらいいのかも分からず、折角手に入れたのに大きく割れたり、ねじらせてしまって結局何にもなりませんでした。マイナーな木はこういう痛い目に合う宿命にあるのです。

失敗をしながら経験値を高めて、扱い方などのノウハウを蓄積していくしかないのです。本やSNSで「見て、読んで知る情報」もいいですが、材木屋としては「実際に触って試した肌感覚の情報」こそが生命線だと思っています。そういう事でクヌギの丸太も実測実験開始!5本のクヌギが加工されて弊社に戻ってきた状態で、1本の重さはおよそ50キロ強。樹皮のついた丸太の状態では70~80キロありましたから、その時点で20キロ以上のダイエット。さあこっから計測。

5本の丸太は柱として使われるので、天然乾燥でもなるべく割らしたくないので、風通しのいい室内で立て掛けて乾かせることにしました。最初の1週間で、5本も木ともおよそ5キロぐらい減りました。このままなら1ヶ月もしたらどこまで乾くのか~!と期待を持たせましたが、2週目では3キロ減と急激に勢いが衰えました。更に3週目では1キロ減と、ある意味順調なペースで減少。4周目に入るとほとんど減らなくなりました。このあたりが自然乾燥の限界なのか?!

重さを計っただけで、含水率まで計測したわけではないのでかなりザックリしたデータではありますが、1ヶ月の室内での天然乾燥でおよそ1割軽くなりました。5本ともほぼ同じ数値だったので、傾向としては間違っていないと思います。1ヶ月前は倉庫に取り組むのもひと苦労でしたが、1割軽くなっただけですがかなり軽く感じられました。これって倉庫に入れる時は「仕入れ」なので重圧もあって重く感じるが、出すと時は「売れる」時なので嬉しくて軽く感じるという事なのかも(笑)




 

今回の広葉樹丸太の探索には別のミッションもありまして、それが装飾用の柱に使うための木を探すというもの。あえて広葉樹という事ですから、寸胴で通直ではなくそこそこの変化も必要。これだけあればより取り見取りですぐに見つかるだろう思うのは広葉樹をなめているというか、植林木に馴らされている感覚。ここにある木だって、この後に割ったり加工が控えているので極端に曲がりくねっている木は除外されています。それでも植林木に比べれば形はてんでばらばらで個性的。ここではひとが木に合わせるのです。

だいだいのサイズ感から数本の木を並べてもらい、その中から何本かを分けてもらいました。ここには、四国の森から集められたクヌギシイ、サクラ、カシ、ミズナラ、シデ等々の広葉樹がところ狭しと山積みされていますが、それは銘木市場に並ぶような立派な丸太とはまったく別の世界。製材して建築の板や柱が取れるような「ひとに都合のいい丸太」はほとんどありませんが、使い方次第では宝石に化けるようなモノばかり。しかし宝石にするためには相応のノウハウと汗をかく必要があります。今はまだ汗をかくばかり・・・

こういう非建築材としての広葉樹に触れるようになって数年経ちますが、少しずつその取扱い方や出口への繋ぎ方が分かってきました。とはいえまだまだ未体験の樹種も多くて失敗もあるのですが、これは痛い目をして覚えていくしかありません。今回も予定よりも多くの丸太を分けてもらいましたが、これはご依頼の柱に、これは『森のかけら』に、これは『愛媛県産モザイクボード』に、これはシンプルに丸太での販売に、へと細かく用途を区切っていってこそ広葉樹が生かせれるし、広葉樹を使う意味が生まれるというもの。

ご依頼の柱に使われるクヌギは、職人さんの手によってこういう形に加工されすっかりアートの趣き。伐り出された時期、その後の保管等々がよかったこともあり、虫も入ってなくて最高の仕上がりとなったようです。ここから弊社でおよそ1ヶ月間お預かりすることになったのですが、折角なのでこうして皮を剥いで加工して1ヶ月間置いていてらどれぐらい乾くものか調べたくなって、それから1週間ごとに重さを測って、乾燥の推移を追ってみることにしました。元は長さ3m、直径およそ150~180㎜の丸太でした。




そんなもの材木屋なんだから分かるだろうと思われるかもしれませんが、恥ずかしながら丸太の見分けがつきません!通常は板に挽かれたモノを仕入れるため、丸太に触れる機会がほとんどありません。最近になってようやく『都市林業』やパプアニューギニア産の丸太に接するようになって、樹皮を見る機会も増えてきましたがそれらはある特定の木で、もともと樹種が分かっている木。ここに運ばれてくる丸太は、その段階で枝払いされていて唯一の手掛かりである葉っぱも付いていません。

サクラやクヌギぐらい特徴あれば私だって分かりますが・・・。詳しく分類する必要はないとはいえ、そこは出材される山側の人たちもベテランばかりですから、ある程度の見立ては出来ていておおよその見当はついています。ハッキリ分からないものは持ち帰って加工して材面などから類推していきます。山にある木は、街路樹みたいに1本ずつ名前の札がぶら下げてあるわけではないので、葉っぱでもついてなければ樹種の特定はそう簡単なものではないのです。

そんな中で探し求めていた木に出会った時の喜びといったら格別です。今回もいくつかの収穫がありました。こういうとこと繋がりがあると非常にありがたいのですが、弊社の場合わずか35㎜角の『森のかけら』をいくらか作るというのが目的なので、小ぶりな丸太が1,2本もあれば十分なのです。しかしここでは次々にトラックに山積みされた丸太が運ばれてきていて、段取りよく出口である薪製造に回していかないとすぐに土場が丸太で溢れてしまいます。

最近、ノベルティグッズなどの分野では『県産材の広葉樹』という指定がつくケースが増えていますが、そのあたりの出口とうまく連携することが出来ればいいなと考えています。他にも現在取り組んでいる『愛媛県産広葉樹モザイクボード』など県産広葉樹の出口は今後ますます広がっていくとは思うのですが、問題は流通ルートがまだ未整備であるという事。だからこそ弊社のような零細材木屋が絡んでいける隙間があるわけで、今のうちにどれだけこの流れを整備できるかが肝。




今年の5月頃、訪れたのが愛媛県北宇和郡鬼北町にある四国薪販売(株)さんの鬼北工場。こちらの会社では、社名が表わす通り薪を製造販売されています。愛媛や高知をはじめ四国管内から毎年3万~4万トンもの大規模な原木を集材し、乾燥機を使った良質の薪を製造販売されています。ここで利用されているのはクヌギやカシ、ミズナラ、サクラ、シイなどの硬質な広葉樹。つまりここには四国に分布するさまざまな広葉樹が集まってくるわけです。ということは、ここに来れば市場に流通してない木もあるかも!

そういう目的で何度かお邪魔しているのですが、今回は探している『森のかけら』の素材探しと、あるご依頼の木を見つけるためです。最近、宇和島市内への配達も多いので、その流れでこちらにも寄らせてもらっているのですが、弊社からだと距離にしておよそ90キロ強。タイミングにもよりますが、土場には常に大量の丸太が積み上げられていて、順次製造ラインへと丸太が運ばれています。最終的には薪にするので、あまり大きな丸太や建築で求められるような通直な丸太は必要ありません。

一概に丸太と言っても、その用途によっては求められる条件はまったく変わってきます。ここには、製材工場が主な顧客である原木市場に見られるような通直な丸太はほとんどありません。大きく曲がったり、ねじれていたり、極端にテーパーだったり、まさにナチュラルな木たちが集まっています。テレビなどのメディアに映るのは、整然と丸太が並ぶ原木市場の光景がほとんどなので、山から出てくる丸太はすべてああいうものだと誤解している人がいるかもしれません。それらの多くは人が経済林として育てた人工林から産出されたスギやヒノキの針葉樹です。

20210916 4 建築や家具、建具などには重要な樹種ですが、私の興味はそこにはほぼありません。通直で節も傷も無いような丸太には魅力を感じなくなって久しい。それよりもこちらの曲がったりねじれたり二股に分かれたりしたようないびつで癖のある丸太に強く惹かれます。まさにここは宝の山!早速目的の木を探します。私にとっては非常にありがたい環境であるのですが、唯一問題なのは薪の場合そこまでガチガチに樹種を特定する必要が無いので詳しく樹種が断定されないこと。続く・・・




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