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少し昨日の続きです。お店が繁盛して儲かる事は当然嬉しい事ですが、誰もがそこを最終目標にしているわけではありません。それ以外にも、お店で働く事が生き甲斐であったり、やり甲斐があるという動機付けもあるでしょう。その行為そのモノが自分の存在意義になっている方もいるでしょう。先日、『本当のエコを考える地球旅行~明日へのチカラ~』というTV番組を観ました。その中で秘境ブータンの話がありましたが、ブータンの国では、国民の97%が幸福だと実感しているとの事。
それは国王が国民総幸福量という考え方を提唱され、環境に対してもどう付き合うべきかという考え方が国民に深く浸透してて、足るを知っているから。以前『適材適所 №139』にアップさせていただいた『吾唯足知』(老子の思想を表わした言葉・われ、ただ足るを知る/不平不満を言って全てを貪欲に求めるところに幸福はない。現状を知り、感謝し満足する事が大切)に繋がる考え方です。小学校で子ども達に自然の大切さを教える先生の言葉は、日本のような難しい理屈ではなく、単純明快。「私たちに必要な空気はどこから来るのか?それは森や水から。」「なぜ自然を大切にするのか?自然を大事にしていれば、寂しい時や悲しい時、美しい風景や花や木が心を癒してくれるでしょう。」「電気が通っていなくて不便ではないのか?電柱を建てることで、自分達が住むよりも昔からここに来ていた鶴が来なくなるのは寂しい、だから電気はなくてもいい。」・・・絶句しました。
番組では、ジグメ・ティンレー首相のインタビューが行われ、「喜び」と「幸せ」という考え方の概念を、首相がご自分の言葉で明快に答えられていました。「喜び」とは味覚や嗅覚などの感覚が満たされた瞬間に感じるもの、「幸せ」とはずっと長く続くもの。家族に恵まれ、この平和な国に暮らせる私は幸せだと。全ての事象に理屈を求めたがる理屈好きの日本でも見習いたい素敵な言葉でした。一国のリーダーがこれほど分かりやすい言葉で、幸せの意味を説明されたのを初めて聴きました。よく政治家はその国民のレベルを越えないとも言われますが、尊敬に値する素晴らしいリーダーというのは、その言葉の一節からも人間性が滲み出るものなのだと思いました。
「鶴が来なくなるのは寂しいから、電気はいらない」このシンプルかつ人間らしい考え方には慧眼するものの、今どれだけの日本人がこの言葉を実践できるのでしょうか。きっと昔の私たち日本人のご先祖様たちも同じ物差しを持って、そういう暮らしを実践されていた事でしょう、つい最近までは。働くことの意味や、幸せの意味、会社が在る事の意義、そこでモノをつくることの役割、今の暮らしの先にある人生の目的・・・そんなこんなが、陽の明るいうちに後ろめたく門を閉める中年の男の背中にもドスンと響いてくるのでした。
今回の大震災の影響で、既に阪神大震災の時を越える数の企業の倒産が報告されています。それらの企業が存在しなくなったからといって、日本経済に大きな影響を及ぼす事はないでしょう。今回の震災の影響如何に関わらず、日々たくさんの零細企業が倒産しています。それはメディアで報じられる事も無く、そこに生活の糧を置く関係者の暮らしも省みられる事はありません。昨今、テレビの向こうから伝わってくる事柄が同じ日本の国の中で今本当に行われている事なのかさえ分からなくなりそうなほど、日々「悪者」が作られていきます。国のトップや企業を公共の電波で堂々と名指しして罵倒したり誹謗する事が日々当然の事のように繰り返されています。誰もが「幸せ」になるために暮らしていたはずなのに。この数十年で「鶴が来なくなるのは寂しいから、電気はいらない」と言えたはずの国からは、随分遠くに来てしまいました・・・。
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