森のかけら | 大五木材


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以前に映画館である映画の予告編を観て、どうしても公開までに原作を読んでみたくなったので、原作の小説を購入しました。この連休で少しでも読もうと思っていましたが、読み始めたらあまりの面白さに421ページの長編を一気に読破してしまいました。実は恥ずかしながら、この作品が第11回松本清張賞を受賞したことや作者が『直木賞』の受賞者で、本作も直木賞にノミネートされていた事などまったく知らなかったのですが、かえって予備知識がなかったのがよかったのかもしれません。ご存知の方も多いとは思いますが、山本兼一作、『火天の城』です。安土桃山時代に、天下人・織田信長が欲したのは、誰も見たこともない巨大木造建築・安土城!その命を受けた天才宮大工・岡部又右衛門!名もなき百万人もの男女が、日本史上類をみない超巨大木造建築に挑む!総工費1000億円、大通柱は樹齢2000年!・・・・

次々に出てくる映画の宣伝コピーは、木材屋の心をわしづかみにしました!内容は、このコピーが全て、織田信長が命じた安土城を築城する話です。ただこれだけの話ですが・・・これが、たまらなく面白い、面白すぎます!予告編で、織田信長=椎名桔平、岡部又右衛門=西田敏行というキャスティングを観ていましたので、無意識にそのイメージで本を読みましたが、これもピッタリはまりました。西田敏行の恰幅のいい体躯が、岡部又右衛門のイメージにピタリと合致。

いかにして安土城を築城したかという話ですが、作者の筆致が素晴らしく、まさに信長と又右衛門が対峙するその場の緊張感がビンビンと伝わってきます。城作りのこれほどのドラマが隠れていたとは驚きでした。鬼神のごとき信長が、無謀なまでの命令で建てさせたというイメージがあったのですが、決してそれだけではありませんでした。私は材木屋なので、使用された木材に興味があり読み始めたのですが、ここまで木選びや伐採、運搬、検品、加工などが忠実に、かつドラマチックに描かれた例を知りません!

特に樹齢2000年の木曽桧を廻るエピソードでは、その取材の緻密さに圧倒されます。寸法は尺貫法で語らえ、克明なデータが話に深みを持たせます。太さ一尺五寸角の長さ八間の大通柱・4本を探す事になるのですが、それがいかに物凄いサイズであることか!サイズの実感が湧かない方でも、その後の川流しの件りで巨大さが伝わると思います。他にも、『城くずし』や『蛇石はこび』、『大通柱を切る』場面などは臨場感に呼吸が乱れ、心に深く刻み込まれています。

それぞれの分野の匠たちが、命を懸けて自分の腕の限界に挑み、そこを越えていこうとする心意気が熱くつたわってきます。安土城は信長の無謀な夢はなく、日本の当時の建築レベルの最高峰の大工、左官、石工、瓦大工などの匠が、その技を思う存分に披露し競えた夢の『現場』だったのではないでしょうか。失敗すれば死という究極の選択の中で、匠たちの創造力は天を越えていき、それが奇跡的に合体していくのが安土城です。信長は次々と無理難題を突きつけてきます。拒めば、『工夫があろう、智恵なしか』と恫喝されますが、無謀と閃きは紙一重、一度は固辞する匠たちも熟慮の末新たな技法を開発していきます・・・『あの大工には負けられぬ。まだ試していない新しい焼き方がいくらでも湧いてきそうだった。土を踏むのさえ楽しくなってきた。むしろ、大きな力を授かったのは自分である気がした。』

匠人たちに更なる力を与えていくのです。建築に長けた信長の眼力は、匠人たちの技をしっかり見抜き、『天下一の匠が集まった。天下一の城がたつわい。』と賛辞を送り、『金ならいくらでもあるわい。』とお金を惜しまない、これほどの『施主』に恵まれた匠たちは、職人冥利に尽きたのではないでしょうか。また、岡部又右衛門・以俊(もちとし)親子の葛藤と心の揺れも丁寧に描写され、亡き父の姿が重なりました。映画がどこまで描き出すのか分かりませんが、とても楽しみです。

9月12日公開ということですが、公開がこれほど待ち遠しい映画も久し振りです小説に出てくる登場人物たちの言葉はどれここれも木材屋にとってありがたい格言のようで、赤鉛筆で線を引いていたら、すっかり真っ赤になってしまいました。多くの木材人、建築に携わる方に、読んで、観て欲しいと思います。最後に、一番印象に残った岡部又右衛門の台詞、『呑みこむがいい。新奇なものを建てればいろいろなことをいう者が出てくる。褒めるものばかりではない。誹(そし)る者もいる。讒言(ざんげん)もある。いちいちかかずらわっておっては、心がささくれたつ。呑みこめ。呑み込んで糞にしてひり出せ!』材木屋になって一番感銘を受けた本です、明日の力が湧き出しました!

 




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