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先程、今度は「十四人の資格」ではなく、本物の映画「十三人の刺客」を観て来ました。当然、孤独のレイトショーです。3連休前の雨が降っているレイトショーの時代劇とあって、観客は私を含めて6,7人。製作者や映画館の関係者には申し訳ないですが、私には最適のコンディションです!監督は極道モノから「ヤッターマン」までジャンルを問わず「仕事は来たもん順で受ける」と公言してはばからない職人・三池崇史氏。主演はどんな役でも手を抜かない役所広司に市村正親、伊原剛志、松方弘樹、平幹二郎etc・・・。濃い顔ぶれです。
1963年に工藤栄一監督が作った超カルト時代劇のリメイクで、オリジナルでもクライマックスの集団殺陣シーンは話題となりました。大まかな筋立ては同じですが、工藤版はキャストが里見浩太郎、嵐寛寿郎、片岡千恵蔵・・・ですから、比較しようという事自体どだい間違い!工藤監督は後にテレビで「必殺シリーズ」の演出を手掛け、映画「その後の仁義なき戦い」や「『ヨコハマBJブルース」、「野獣刑事」など光と影のシャープな演出にこだわり、最後まで骨のあるタフでハードなスタイルにこだわられました。
それとは別の映画だと思って観れば、 2時間超(141分)の長編でしたが結構楽しめると思います。ただ殺陣シーンは、スパルタ戦士の300人vs1,000,000人 の戦いを描いた「300(スリーハンドレッド)」を意識しすぎて遊びすぎたか、ちょっと冗長でしたが・・・。ある目的のために人集めが行われる映画といえば、「七人の侍」というお手本がありますが、そのプロセスを細かく描いていると3時間になっちゃいますので、とりあえずかいつまんで頭数を揃えて早く面白い格闘シーンに早く行っちゃえ!というところが職人監督ならではの「こだわり」でしょう。 殺陣ばかりでなく、役所広司、市村正親、松方弘樹、平幹二郎、松本幸四郎など舞台で鍛えた俳優の「寄り」の演技にも均等に見せ場を作り、前半は久々に本格時代劇の趣きを楽しめました。
この映画を観ていてずっと気になっていたのは、ここがどこでロケされたのだろうという事。時は徳川幕府の末期で、参勤交代で訪れる街道、宿場町が舞台ですから、当然ロケは人里離れた山奥という事になります。最後のエンドロールに「山形」という言葉がたくさん出ていましたから、山形某所でしょうか。結構お金もかかったと聞き及んでいます。日本の時代劇で山の中が舞台となると、まだまだ日本でロケする場所もあると思います。ロケ地として映画撮影の誘致をするという「森の出口」も面白いかもしれません。
それで思い浮かんだのが昔読んだ1冊の本。発売当時、かなりショッキングな内容で物議を醸しました。ジョン・ウェイン、スティーヴ・マックイーン、ゲイリー・クーパー、ヘンリー・フォンダといったハリウッドのスター達には、何故かガンによる死亡原因が多い・・・その疑問を緻密な取材で独自の結論を導き出したのが、広瀬隆著『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』(文藝春秋社、1982年)です。実は多くの西部劇のロケ地となったネバダ州は、アメリカ政府によって数多くの核実験が行われていた試験場の風下にあり、死の灰がたくさん蓄積していたというのです。ハリウッドスター達はその地で数ヶ月もロケをして、死の灰を浴びていた・・・!学生時代にこれを読んだ時、衝撃を受けました。銀幕のスターと核実験という取り合わせが、いきなり夢の舞台が現実のリアルな世界に引き戻され、なんだかやりきれない切ない気持ちになったものです。
広瀬隆氏はその後も独自の切り口で、ジャナーリズムの気骨に溢れる問題作を発表されています。その考え方に賛否両論はあるでしょうが、自分の足で綿密な取材を重ね、問題提起をされる姿勢は素晴らしいです。浮き足立って人の揚げ足を取ったり、重箱の隅をつついてばかりで主義主張のない日和見的な今のメディアをこれからもバッサリ斬り込んでもらいたいと思います。『ジャーナリズムはなぜ死んだか』その答えは我々自身の中にもあるのでしょうが・・・。
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