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昨日の続きで、サンプルの本体が無くなってサンプルが用をなさなくなるという話です。存在意義を失ったサンプルの末路は悲しいものです・・・もはやそこに存在すること自体が罪でもあるかのような冷たい視線を浴び、最後は焼却炉の灰となる、塵となる。そんな非情な現実に耐えられなくなって考案したのが、様々な種類のカットサンプルから円形に切り出して磨いた「円(まる)い森」という商品でした。コースター?いえいえ、コースターではなく「円い森」です!
もちろんコースターにも使えますが、わざわざ自ら用途の可能性を狭めるようなネーミングをつける必要はありません。コースターに見える人にはコースターでしょうが、それ以外のものに見える方にはそれが円い森の真の姿です。当初は厚みすら薄くするのがもったいなくて、裏面にある反り止めの溝(バックシール)が無くなるギリギリの厚み(およそ12㎜)で作っていましたが、さすがに素材先行でバランスも悪く使いづらかったので、その後厚みは7㎜まで薄くしました。
カットサンプルと言っても、数10種類のフローリングのそれがあるわけですから、単純な円形のものでも種類が増えるだけで何だか面白いと思ったのは私だけではなかったようで、お陰で焼却炉の灰となってしまうはずだったサンプルたちが随分とその命を救われました。それですっかり気をよくして、シンドラーのリストのような気分で次々とサンプルたちを救ったことで、事務所には世界各地の「かつてのサンプル」たちが溢れ返ることになってしまったのです・・・。
加工して姿かたちを変えて「脱出」させることが目的ではなく、あくまでも次の目標、使命を与えことが目的でしたので、誰の手にも届かず事務所の片隅で眠ってしまったのでは、焼却炉が事務所に変わっただけの事。それはわが本意ではありません。しかし、本来の意味での必要が無くなった樹種を素材とするため、多くの種類を均等に揃えることも難しく、木のテクスチャーを学ぶための素材としては物足りなさ感が出てしまい、思った以上に用途が広がりませんでした。
これに限らず弊社のクラフト商品のコンセプトが、いまそこにある素材を無駄にするのがモッタイナイので、それを余すことなく骨までしゃぶりたいという、骨の髄まで貧乏人根性が染み込んだ発想なものですから、素材の切れ目が縁の切れ目という現実があります。それは材木屋としての視点として変えるつもりはないのですが、どうしても素材供給面での不安もつきまとうので、端材(サンプル)ベースからの脱却もはかり、堂々と本丸から踏み込む商品開発も来年の課題。
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