森のかけら | 大五木材


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この雨ですっかり落ちてしまいましたが、少し前まで倉庫の裏で強烈な異臭を放っていたクリの樹白くて大きなトゲトゲの毛虫のように、長く垂れ下がったクリの尾花が満開に咲いて、傍まで行かずとも事務所の中にすらその匂いを届かせていました。この季節の風物詩的な光景とすらなってきましたが、この匂いばかりはどうにも馴染めません・・・。近づいてよく見れば、その匂いに魅かれたのかいろいろな虫がクリの樹に集まっていましたが、虫たちには好まれる匂いのようです。

そういう姿を『木は人間のためだけに生まれてきたわけではない』という思いを強く実感させられます。そのクリをはじめ植えている木々は勿論建築用材にしようと思って植えているわけではありません。人は、これは庭木に、これは街路樹に、公園樹に、観賞用に、山に植えて将来の建築用材に、などと勝手に用途を決めてその樹の運命を定義づけてしまいますが、そんな決められた運命にあがらうように樹々は美しい花を咲かせ、虫を惹きつけ、すくすくと成長し生命を謳歌します。

樹の仕事をしていても、製品の流通小売業の場合は原木に接する機会は決して多くありません。魚に例えれば、漁師が釣った魚が浜に運ばれ、魚市場で競りにかけられ、大問屋が入札で仕入れて、更にそれを小問屋に流し、それを小売店が飲食店や一般消費者に売るという図式だと思いますが、木材の世界も似ているものの、大きな違いは小売店のところに届くまでに製材所で丸太から製品に大きく姿を変えているという所。なので魚のように元の姿をマジマジと見るという機会はほとんどありません。

私も昔は丸太を見る事なんてほとんどありませんでしたが、最近は地元の木を丸太で購入して製材所で賃挽きしてもらうという流れで県産の広葉樹を集めたりもしているので、丸太にも触れる機会が増えました。よく『材木屋の建築知らず、建築屋の材木知らず』なんて言われたものですが、自分の職種に固執し過ぎるあまり、それ以外の事を知ろうとすらしなくなり意固地になってしまうと随分世間が狭くなってしまいます。丸太の事を知れば、庭の樹ですら妙に親しみを感じるもの。

正直今までは立木に対しては製品ほどの興味も関心も持てませんでした。それは自分の仕事ではない、という思いもありましたし、食わず嫌いな面もありました。ゆえに木の仕事をしていても製品にだけに興味を感じる偏った木フェチで、咲いた花の匂いに足を止める事もなかったのですが、恥ずかしながらこの歳になって少しだけ視界が広くなってきたようで、知れば知るほどに木の世界の奥深さに驚きおののき、もっと早く気づくべきであったと悔いるばかりなのであります。




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