森のかけら | 大五木材


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今日のかけら番外篇・E047ラクウショウ/落羽松】 スギ科・ヌマスギ属・針葉樹

芥川龍之介の『河童と水松』の話の時に、湿潤な場所を好む木として紹介した『ラクウショウ』について少し触れます。数年前に神戸植物園を訪れた際に初めてラクウショウを見ました。沼というか池のような場所の中から立ち上がっているその姿は、「これで大丈夫なの?」と感じるような少し異様な雰囲気。これだけ根元が水に浸かっているということは、かなり水を吸い上げていて内部には相当の水を蓄えているのでしょうか?だとしたら乾燥させたらどうなってしまうのだろうか?そもそもこの木って何かに使われているのだろうか?

さまざまな疑問が湯水のごとく湧いてきました。調べてみると、ラクウショウは北アメリカ原産で沼地などの湿気を好む落葉針葉樹です。名前の由来は以前にも書いた通り、マツによく似た葉を持つことに由来し、漢字では『落羽松』と表わされます。ラクウショウの実には油分が多く含まれていて、水の中に実が落ちると水面に油分が浮かんでくるほど。なので、材内にもたっぷりと油分を含んでいて、根元が水に浸かっていても腐らないのだそうです。水が恋しくて恋しくて、水に浸っていても大丈夫な力を身につけたのかもしれません。

原産国のアメリカでは、浅い池の中にラクウショウがズラリと並んで生えているところもあって、その姿はなかなか幻想的。水が恋しいといっても必ずしも水中とか水辺でなくとも育つようです。しかしその場合は水辺で見られるユニークな気根はあまり出てこないようです。神戸植物園ではかなりの数の気根が出ていて、それもあいまってラクショウに異様な雰囲気を醸し出していました。根っこが水中にあるため、根を地上に出して効率的に酸素を取り込もうとしているのだそうですが、どんだけ水が恋しいんや~!健気ですらあります。

その異様な気根が、ムーミンに出てくるニョロニョロのようにも見えたのですが、あれってもしかしてこれがモチーフ?と思って調べてみたら、あれはキノコの一種のようで、ラクウショウとは無関係でした。話を戻しますが、そんなラクウショウは、明治時代に日本に伝えられ各地で植林されたそうです。新宿御苑には立派なラクウショウがあるようです。大きくなると樹高が50mにもなるという巨木ですが、日本の木材市場や建築の世界でこの木をみかけることはほとんどありません。油分が多く有用ならもっと使われているはずでは?

現地では、油分が多いという性質を活かして、船舶資材はもとより、建築構造材、フェンス支柱、船の板張り、川杭、ドア、ブラインド、フローリング、屋根板、ガーデンボックス、棺、室内装飾、家具用などとしても広く使われているようです。日本では主に街路樹として植栽されていますが、用材としては認知されていないという事は、メタセコイアのように材質が軽軟なんだと思います。似たような雰囲気なら日本にはスギがあるので、あえて輸入してまでは求めないということでしょうか。それでも一度は手にしてみたい、『水にあこがれたラクウショウ』。

 




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