森のかけら | 大五木材


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となりのトトロ』も棲む木ですから大きくなくてはなりません。樟(クスノキ)は天然の樟脳を含んでいて、防虫効果も高く、腐りにくい事から造船や彫刻などにも使われています。もし大鳥居が桧や杉であれば、樹齢400年といえどもすぐに朽ち果ててしまっていて事でしょう。また、英語ではカンファーツリーといいますが、カンファーとはカンフル剤の事で、強い刺激臭を持つ樟の枝や葉は、古来より聖なるものとして神様への捧げ物、供物などに使われてきたそうです。神社の境内などに樟が多いのもそのためです。腐朽に強い巨木で信仰の対象となる聖なる木であるということから、樟が大鳥居の材に選ばれたのでしょう。

 

宝物殿には、昭和26年に大補修された際に取り替えられた樟の旧根元材が展示されていました。これがどういう状況で水中に踏ん張ったいたのかも想像がつかないほど、壮絶な海との格闘の跡が至る所に刻み込まれています。なんだか大鳥居の足裏の角質をバリバリと剥ぎ取ったみたいなどといっては不謹慎でしょうか。近づいてよく観ると、フナ虫でしょうか無数の虫達の穿孔されています。象に群がる蟻の如き、寡黙にジッと耐える姿には尊厳すら感じられるです。

これだけの厳しい環境ですから、また数10年先には建て替えられる事になるのでしょうが、現在これだけの樟の巨木が手に入るものなのでしょうか。あの清水寺400年後の立替のために、今から植林を始めているという話を伺った事があります。400年大切に育てて、その木を使うというのです。壮大なプロジェクトです!もうそうなると建築用材などという軽々しい物ではなく、神の宿り場を人が何世代も受け継ぎながらお守りするというような感覚なんでしょうね。ここでも樟の植林が始められているようです。

これも気の長い話でありますが、結局今も昔も本物を得ようとすれば時間を掛けるしかないのです。人間などの力ではどうする事もできない、その紡がれていく時間というものが文化とか伝統を形成していくのでしょう。これから恒常化していくとみられる異常気象の中、巨大な台風や集中豪雨などの水害、降り注ぐ強い紫外線等、大鳥居も神殿も平清盛の時代には想像もしなかったであろう壮絶な環境を耐えてゆかなければなりません。しかもそれが技術の粋を集めた近代建築ではなく、ひたすらに時を刻んだ無垢の樟に託されているわけです。自然との闘いでもっとも順応し、耐え抜くのはやっぱり自然のものなんだろうと教えられます。人間の思いなどとは関係なく、樟はただ己の運命に従うばかり。その無言の佇まいこそが、すでに尊い教えのように感じられるのです




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