森のかけら | 大五木材


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数日前に、油を採取するために丸太に穴を開けたタイ産のアピトンの事を書きましたが、ブログアップ後にその事に関する貴重な情報がいくつか入ってきましたので本日はその事についてこの話は原木問屋の営業マンから聞いたもので実際にその場面を見たわけでもありませんし、具体的な採取方法もSNSなどでも調べましたが見当たりませんでした。なので勝手にかなり古い時代に行われたものだと(穴の周囲の樹皮の状況からもかなり年月が経過しているように感じられたので)思い込んでいました。

そしたら、タイ在住の『森のかけらアジア特使』であり『世界のふしぎな木の実図鑑』の著者でもある山東智樹さんから、大変貴重な情報をいただきました。それがこちらのアピトンの立木から実際に油を採取している写真。山東さんによると、タイの博物館に使われている写真だそうです。採取されている人の服装を見ると、そんなに大昔のようには見えません、私はてっきりもっと昔の話だと思っていたのですが、近代まで行われていた(いる)のか、あるいはただ単に採取方法を再現した写真なのかもしれませんが。

そして更に貴重なのがこちらのタイの博物館にあった採取のレプリカ。アピトンの立木に穴をくり抜き、樹脂の出をよくするためにその中で火を焚いている場面です。そうか、それで穴の中が焦げたように真っ黒になっていたのか!これで合点がいきました。いやあこれは非常に貴重な資料です。これが博物館でレプリカとなって展示されているという事は、やはり採取されていたのはかなり昔の時代ということなのかもしれません。更にこの丸太を現地で調達した材木屋さんとも繋がり、アピトン丸太の流通事情も分かるなど、1件のブログから大きな広がりとなりました。こうして愛媛にいながらにして遠くタイの丸太の現地情報が入手出来るのは本当にありがたいことです。こうやって集まった情報によって【森のかけら】により深みが出てきます。

山東智樹さんの著書『世界のふしぎな木の実図鑑』にアピトンの実の写真がありました。アピトンはフタバガキ科で、一般にラワンと呼ばれるホワイトラワンなどと同じ科に属しています。フタバガキ科の実は見の一部が羽根のような形状をしていて、回転しながら落下するのが特徴です。そのアピトンの写真がこちら。アピトンの正式名称は『ディプティロカルプス・アラッス(Dipterocarpus alatus)』。この不思議な形は飛行原理に適しているようで、この形状を模した玩具『スカイコプター』は『木のもの屋・森羅』でも取り扱っています。専用のカタパルトで空に向かって打ち上げるとクルクルと回転しながら落下していきます。落下する際に思いがけない方向に流れていってそれをキャッチするのも面白くて、一度やったら病みつきになります。

アピトンの種もそうやってより遠くへ種を飛ばして種を残していこうとしているのだと思います。また回転落下することで地面への衝撃をやわらげる効果もあうのだとか。植物の生命本能恐るべし。そんな沢山の情報が詰め込まれた山東さんの本がありがたいのは、学名がカタカナ表記でも書いてあるという事。英語に弱い私などはこれがどれほどありがたいか!「タイ・チェンマイからランバーンに向かう旧街道沿いの並木が有名」との表記がありましたが、いつか丸太になる前のアピトンの姿をこの目で見てみたい。




競争相手の少ない平地で育ったアピトンは、環境の緩さが丸太にも反映され、丸太としてはあまり良質なものは得られにくい傾向にあります。枝が多く出るので節が多くなり、上に素直に伸びる意欲が低いのか(!)ねじれていたり曲がっていたり癖も強い。その反面マレーシア産のものに比べると表面へのヤニの滲出は少ないようで、触った時の触感もアピトン独特のざらつきが少なく感じます。材となった時には忌み嫌われるヤニですが、もともとアピトンが蓄えている性質なのですから文句を言っても仕方がないのです。

こちらは、タイ産のアピトンで挽いてもらった車両材ですが、通常ならば小口から導管に沿って滲出するヤニがほとんでありません。これぐらいのサイズのアピトンだと、めちゃくちゃ重たいので両腕で抱えるように持ち上げないといきないのですが、そしたら腕やら胸にもヤニが付着して大変なのですが、ほとんどヤニがなくて助かりました。目の詰まった大径木ほどヤニが出やすい傾向にあり、マレーシア産の競争の厳しい野生育ちに比べるとタイ産の緩い環境の平地育ちは、そもそもヤニの含有も少ないのかもしれません。

タイの現地の方々はそ貪欲にそのヤニを求めていました。それがアピトンに開けられた穴の正体だったのです。最近の話ではなくずいぶん昔の話ですが、アピトンの根元にちかいところに腕が入るぐらいの大きさの穴を開けて、そこに器を置いて滲出するヤニを貯めて燃料や塗料などに利用されたのだそうです。穴の内部をよく見てみると、穴の奥の方は長年のヤニの採取作業のためか真っ黒になっていて「謎の穴」感が漂います。さすがに最近ではこういう事もないようですが、かつてはこのヤニも暮らしに欠かせない貴重なモノだったと思われます。

使い方、考え方次第では木は無駄になるものが一切ない「まるごと有用な資源」のはずで、日本人は特にそのことを理解し実践してきた民族だと思います。樹種は違えどもかぶれるリスクのある『ウルシ』を傷つけて樹液を採取して塗料に使ったり、毒性成分の含まれる『キョウチクトウ』だって強心剤などの薬用に利用していて、毒のある木も使い方ひとつ。このアピトンの油取りの穴もその実践記録として、この部分だけ製材してもらって保存しておきたかったのですが、瀬村さんに面倒くさいことを言うなと怒られそうなので自制しました(笑)。

こんなアピトンですが、最近では製材するところも少なくなってきていて、弊社にすら県外から問い合わせが来るようになりました。特別アピトンを宣伝しているわけでもなにのでどうして?と思ったら、12年ぐらい前に書いたブログを見られてとのこと。それで改めて見直してみたら、もっと沢山書いているつもりでいたのですがアピトンについているブログが思いのほか少なくてビックリ。普段目にしている機会とまったく比例していない。それぐらいアピトンが日常的な木になっていたという事ですが、その貴重さに失ってしまってから気づく愚かさよ・・・




 

頑丈で耐久性が求められるトラックの荷台材に欠かせない木が、東南アジア産の『アピトン(Apitong)』です。私にっての地元の木材業界の兄貴分である瀬村要二郎さん(瀬村製材所社長)が、昔からアピトンなどの南洋材を製材していたことから、私にとっても非常に身近な木のひとつでした。トラックなどの車両材はもとより、商業店舗の床材やビニールハウスの骨材やガーデニングなどにも使ってきました。主な産地はフィリピン、タイ、マレーシア、ボルネオ島などですが、近年アピトンの丸太価格が高騰したまま高値で張り付いています。

瀬村さんのところでも昔はマレーシアから丸太が輸入されていましたが、最近では主にタイ産の丸太が入ってきています。先日も瀬村さんの土場を覗いたら、タイ産のアピトンの丸太が並べられていました。アピトンの外樹皮は特徴があって、厚いコルク質で凸凹の小さな突起があり、鱗状の斑紋があるので、丸太の識別が苦手な私でも分かりやすい。樹皮が肉厚で樹脂が多くて表面にまで滲出しているからなのかもっしれませんが、比較的外樹皮が剥がれないまま残っている場合が多いように感じます。

その中に気になる丸太が何本かありました。丸太の一部に小さな窪みがあるのですが、それがなんとも不自然な形。原木商社の担当者から、それが現地の人たちが昔この木から油を採取するために開けた穴だと教えてもらいました。これは丸太の産出場所にも関わっていて、そもそもアピトンはフタバガキ科のディプティロカルプス(Dipterocarpus)属に属する木ですが、この属には75~80種が含まれていて、フタバガキ科の中ではサラノキ(Shorea)属についで多い大家族を形成。その生育環境もさまざまで低地の森林地帯から乾燥した丘陵、河岸、険しい尾根筋などなど。

マレーシアから産される丸太は、径級が大きくて通直な材を求めて森の奥地で伐採したものが出材されます。ジャングルでは競争が激しいた若葉は競争相手よりも高く伸びて太陽の光を得ようとするため、比較的節やねじれの少ない通直な丸太が得やすいのです。しかし近年は輸送の問題でマレーシアからの丸太の輸入が難しい、価格が高問している等の事情もあって、タイ産の丸太が入ってきています。タイでは森の奥ではなく、平坦な林地やひとの生活圏の近くに生えていることも多いのだそうです。明日に続く・・・




 

最近、パプアニューギニアの木を扱っていることもあって、パプアニューギニアの事が気になってSNSなどでも過敏に反応することが多くなり、パプアの木の魅力を深めるために少しでも多くの情報を集めたいと思っています。そしたら先日、パプアニューギニアの小さな島で火山の大噴火が起きたというニュースを目にしました。それはパプアニューギニア本島沖にある、日本の伊豆大島と同じくらいの大きさのマナムという小さな島で起きました。噴煙が高さ15キロにも及ぶ大きな噴火だったようです。

このマナム島には現在世界でもっとも活発に活動している火のひとつでもあるマナム火山があり、2004年にも大噴火を起こしています。今回の負荷では島民9,000名が本当に一時避難したそうです。この噴火の事を調べていたら、火山の噴火にはいくつかのタイプがあって、日本の福徳岡ノ場でキノコ雲状の噴火雲を生じさせ多量の軽石や火山灰を噴出させた「プリニー式噴火」や、火口内でほとんど固結した溶岩が高いガス圧で吹き飛ばされる爆発的な噴火の「ブルカノ式噴火」など。イタリアのベズビオ火山がプリニー式で、日本の桜島浅間山などがブルカノ式。

今回のマナム島の噴火はその両方の特徴を併せ持ったような噴火だったそうですが、噴火の継続的な時間は短かったようで、その後1/3ぐらいの島民は島に戻ってきているようです。マナム島の海岸には黒い砂浜が広がっていますが、それは溶岩が冷えて細かくなったものだそうです。村の一部は火砕流で覆われていて生々しい噴火の跡が残っていたりもしますが、火山口を間近で見られる場所としてマニアには聖地的な人気もあり、島民たちにとっては火山と共に生きる島なのかもしれません。

自然災害といえば、今年もカリフォルニアやイタリアなどでは記録的な森林火災が発生して膨大な量の森林が灰燼に帰してしまいやるせない気持ちになりました。樹齢何百年という大木が一瞬のうちに消失してしまう圧倒的なエネルギーを前にすれば、ひとの理屈や感情など無力であるという事をまざまざと見せつけられます。しかしそういう時によく考えることが、果たして山火事で燃え尽きてしまうのと、ひとに伐られて切り刻まれるのと、木にとってはどっちの方が幸せなのだろうか?そもそもそんな考えすら不遜なひとの思い上がりなのでしょうが。

しかしだからこそ、縁あって巡り合った木は大事にしたい。もしかしたら今ここにある木だって森林火災や火山などの危機を乗り越えてきた運命の木だったのかもしれない。そう思うと十把一絡げにM.L.Hなんて扱いは出来ない。せめてその身元ぐらいは明かして、それを使う事に意味を持たせなければパプアからの船旅が無駄になってしまう、なんて考えてしまうのです。これも身勝手な思うあがりでしかないのですが、そうやって己を奮い立てなければ自分の年齢の何倍もあるような木を切ったり削ったり出来ません。いつも、お命ありがたくいただきます!の覚悟




赤色の木の在庫が少なくなったので仕入れた赤系の木を並べてみました。アフリカ産のパドック、同じくアフリカ産のアパ、東南アジア産のカリン(花梨)、ここには映ってませんがアフリカ産のブビンガなどなど。赤い色の木がよく売れている!というわけではありません。弊社では現在300種を超える多種多様な木を取り扱っていますが(種類が多いというだけで量は全然多くないのですが💦)、量ではなく種類で勝負!という事で、それらの木をミックスした商品をいろいろ作っています。【森のかけら】を筆頭に『モザイクボード』や『モザイクタイル』などなど。

多様な木が混ざることで唯一無二の複雑な表情が生まれてオリジナルティの高い商品になっているとの自負はあるのですが、そのためには色合いのバリエーションが必須。300種超の種類があっても圧倒的に多いのは、黄白色系から茶褐色系の木です。特に針葉樹系だとかなり似通った色が多くあり、並べて見ても質感も含めてあまり差が出にくい傾向にあります。それに比べて広葉樹は色合いも多彩で、表情にもかなり個性が現れます。なので色を強く意識せずともそれなりに面白い表情にはなります。

しかしやっぱり多樹種を扱って種類フェチの材木屋の矜持として、目を引くような色鮮やかな木も取り入れたい。という事で、赤い木が欲しくなるのです。当初は山ほどあって扱いに困っていたブビンガがその役を担ってくれていましたが、徐々に在庫も減少。次に目をつけたのがブラッドウッドことサッチーネ、紫の貴婦人ことパープルハートたち。在庫はそれなりにあるものの基本の厚みが30㎜なので、30㎜に仕上げなければならない『モザイクボード』に使えるものはわずかしかありません。

13 パドックや花梨などは60㎜とか70㎜などの肉厚のものがあるのですが、今度は逆にそれだけあるものを薄くしてしまうのはモッタイナイ病が発症!それで赤色が無い無いということになり、端材を使うという戒律を破って「端材にするための木を買う」という暴挙に!しかし冷静に考えれば、どういう形であれそれに見合った価格で売れればいいわけで、自分で作った『端材の呪縛』に囚われてしまっています(笑)。しかし他人からすればどうでもいいような事が、ものづくりの根幹にあって、自分内挌闘は続く!




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