森のかけら | 大五木材


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20100910 鉄塊の叩かれ具合・多和圭三展①先日、久万高原町で愛媛木青協の例会が行われましたが、その晩はふるさと村のケビンに泊まり、翌日は朝から久万美術館に行きました。目当ては、今開催中の『鉄を叩く 多和圭三展』です。内容はそのタイトル通り、鉄の鉄の造形作家・多和圭三さんが、鉄のハンマーを振り下ろして鉄塊を叩いて造りあげた作品の展示会です。最近、愛媛新聞などでもよく連日取り上げられているほど注目されていますし、鉄を刻むのではなく「叩く」というシンプルな技法に惹かれました。何か掴めそうな予感がありました。

 

20100910 鉄塊の叩かれ具合・多和圭三展②入館するといきなり展示会場の傍らに、多和さんが創作に使われた鉄のハンマーが立ててありました。注意して触ってもらっても構わないという事でしたので、まずは下の小3の娘が挑戦。一番小さなハンマーでも持ち上げるのがやっとという感じでした。右端の一番大きなハンマーは、私でもオッというぐらい持ち応え充分。これを振りかざすとなると、その自重だけで体が持っていかれるのではと心配せねばならないほどの重量感がありました。あまりに重いので、壁に立て掛けなくてもそのまま立ちます。これは「創作活動」というよりもむしろ「労働作業」に近い感覚なのでは!ロビーには製作中のビデオが流れていましたが、多和さんが黙々と鉄を叩く場面が、鉄の塊のアップで延々と映し出されておりました。カンカンという高い金属音だけが聞こえてくる、修行僧の荒行のような趣きがありました。

 

20100910 鉄塊の叩かれ具合・多和圭三展③芸術と一緒にするにはあまりに失礼な例えですが、私も耳付の板を削ったり磨いたりする時に「無心の境地」になる事がしばしばあります。特に硬いアフリカ産のマメ科のような木をサンダーで荒磨きする時は、ただただひたすらにベルトサンダーを前後左右に動かすだけなのですが、もうこれを何枚も続けていると、最初は雑念もありますが、次第に手だけが勝手に動き、脳は別の事を考えるようになります。そして、次第に脳も考える事を止め、ただそこにある板だけが見えてくるのです。時間や手間の事などもうそこには在りません。自分と板だけが厳然とそこに存在し、何の感想も思考もない無の感覚、「魂ここにあらず」の状態になるのです。板に流れ落ちる汗の粒で、これ幾らになるんだろうという俗世の感覚に呼び戻されますが、一瞬でも無心の境地、というよりウッドワーク・ハイとでも呼ぶべき状態になる事があります。

 

20100910 鉄塊の叩かれ具合・多和圭三展④肉体を酷使するような単純作業を繰り返していると、誰もがそういう感覚に陥る事があるのだと思っているのですが、もしかしたら私だけでしょうか・・・。ビデオを観ていても、展示してある作品を仕上げるためには膨大な時間を要することが窺い知れます。きっとその間、雑念も砕かれ、腕は疲れても頭の中は無になっていくのではないでしょうか。なんだか無性に鉄の塊に向かってがむしゃらにハンマーを叩きたい気分になりました。

 

20100910 鉄塊の叩かれ具合・多和圭三展⑤鉄と木の相性って決して悪くないのですが、私が鉄という素材に疎いので、今までほとんど使った事がありません。木一辺倒ではなく、いろいろな素材を組み合わせる事も考えなさいと、よくアドバイスを頂くのですが、数ある自然素材の中でも「軽くて柔らかな和紙」と「硬く重たい鉄」は、それぞれが対極にあり、ちょうどその中間が木材だと思うので、バランスが悪いはずはないのです。もう少し鉄の事も勉強してみようかと思わされる展示会でした。会場内は撮影禁止なので、そのものズバリは撮れませんでしたが、叩かれたはずの傷が、重なり合って美しい別の顔を覗かせています。それが木の杢目や節などの自然の造型美とは真反対の人工物であるのに、その事を忘れさせるような自然さが不自然なほど、鉄の冷たさ以上のモノが感じられました。

 

20100910 鉄塊の叩かれ具合・多和圭三展⑥中に1作だけ木を削った作品がありました。素材はチークで、四角い箱を荒々しく削り出したようなシンプルなモノですが、素材のチークの質感が研ぎ澄まされたように表現され、この木以外には考えられないような技法で合致。改めてチークという木の持つ大人の色気と気品を感じさせられました。ここ「叩く作家」さんが選ばれた唯一の木がチークというのもいい感じです。頑なまでの鉄塊の叩き具合、叩かれ具合、一見の価値ありです!『鉄を叩く 多和圭三展』は、10月31日まで久万美術館にて開催中




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