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先日、NHKの「突撃!ネイチャーⅩ」という番組を観ていたら、小笠原諸島の母島の事が取り上げられていました。『東洋のガラパゴス』と呼ばれる小笠原諸島の自然の美しさは今までにも何度も、いろいろな番組で取り上げられてきましたが、前夜の放送を後半少しだけ観ると、ちょっと切り口が違って面白かったので翌日の再放送で頭から番組を拝見。どちらかというと子供向きの自然科学番組でしたが、しっかり地に足の着いたNHKらしい内容でした。最近NHKでもこの手の内容の物が増えてありがたいですね。
くだらない番宣や浮ついた演出、未練たらしい編集まみれの民放に比べて、NHKの番組姿勢には好感が持てます。CMが無いので集中して観れるのもいいです。内容は、母島に持ち込まれた外来生物の脅威を描いたもので、代表的な動物として『グリーンアノール』という緑色の小型なトカゲと、植物の代表として沖縄原産の『アカギ』という木を取り上げていました。まずはトカゲですが、北米大陸原産で80年代に愛玩用のペットとして島に持ち込まれたようです。昼行性の性質で、昼間に活動する蝉や蝶などを片っ端から捕獲し食べてしまうようで、今や島内に100万匹以上も繁殖しているとか!もともと天敵の少なかった島の動物たちは、南国の島らしくのんびりした性質だったようで、大陸で激しい競争を生き抜いてきたグリーンアノールにしてみれば格好の餌になってしまったとの事でした。
しかし、北米フロリダ原産の彼らも、かの地ではブラジルから持ち込まれた大型のグリーンアノールの仲間によって壊滅的被害を受け、保護の対象となっているという皮肉な事態に陥っているようでした。この後、島を覆いつくす『アカギ』という木を立ち枯れさせている活動が取り上げられていました。『アカギ』という音感だけ聴いて、『イチイ』の別称かと思いましたが、イチイが大繁殖?と思ったら全然別のトウダイグサ科アカギ属の木【アカギ】の事でした。
原産地の沖縄・琉球では、「アカン」とか「アカツグ」などの別名もあるようです。アカギの名前は、樹皮が赤いことに由来しているという事ですが、その材そのものも赤いようです。材は緻密で硬く、伐るときに木屑で手が赤く染まるほど。高さはせいぜい10数m程度にしか伸びないようですが、根元は大きい物では直径1mになる物もあるとか。建築や工芸品などに使われているようですが、私は恥ずかしながらこのアカギの木、初見でした。番組では、この木が戦前に薪の材料として沖縄から島に持ち込まれてきて、実際に薪炭に利用されていたようです。それが戦後に島民が疎開して、島が無人島になると薪の需要もなくなり、生命力の強いアカギはドンドン領域を広げていきました。このアカギのそもそもの生育地は石灰岩質の土壌という事で、肥沃な土地であれば尚更生育も盛ん。年に2m近くも成長し、伐っても切り株からすぐに新たな芽が出てきて簡単には枯れない。
それで樹勢が盛んなうえに、枝葉をいっぱいに伸ばすので、森に入る光を遮り、他の木が育たないというのです。実際にその影響で倒れた木々が映っていました。小笠原の森の生態系を維持するため、そのアカギに(他の植物に影響の出にくい)薬剤を注入して立ち枯れさせ駆除させる活動をされていました。そのアカギも原産地の沖縄では戦争で多くのアカギが焼失し、200~300年物は天然記念物扱いになっているというのですから皮肉なものです。
薬剤を注入して数ヶ月もすると立ち枯れしてしまいます。勢力を失ったアカギの森は、また元の森の姿に戻っていくのでしょうが、番組では、いかに生態系のバランスを取り戻す活動とはいえ、木を枯らしたり動物を駆除する罪悪感と、外来種問題の解決の必要性をアンビバレンツな命題として締めくくっていました。駆除活動を指導されていた日本森林技術協会の方が、「アカギが悪いんじゃない。ただここはアカギの棲む場所じゃないというだけの事」と仰っていました。重みのある言葉だと思います。決して好き好んで木を枯らしている訳ではないでしょう。環境問題に立派な提言をする方は多いですが、理屈を言うは易く、実践を行うは難し。自らの意思で生まれる地を選べず、移動する事のも出来ない植物への慈愛がなくなれば、もはやそれはただの素材でしかなくなってしまいます。どれだけ想像力を持って木と接するかという事が肝要だと思うのです、勿論自戒の念も込めて。
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