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★今日のかけら・023 【隠岐の黒松/オキノクロマツ】 マツ科マツ属・針葉樹・日本産(島根産)
先月、厳島神社を訪れた時の事をアップしましたが、実はもう少し話に続きがあります。厳島神社の大廻廊を抜けるとそこに古刹・大願寺があります。その境内に立派なクロマツの巨木がありました。掲げてあった看板には、「口頭伝承によると伊藤博文公が明治時代に頻繁に来島され、その際に植えたもの」だと言い伝えられているとの事。樹高18m、東西の枝張9m、南北8mという立派な姿は、昭和48年に廿日市市の天然記念物に指定され、『大願寺の九本松』の名称で親しまれています。その存在を全く知らずに、不意に目の前に現われた物ですから、かなりのインパクトがありました!その異形ともいえる姿を見てすぐにイメージしたのは、天に向かって立ち上がったヤマタノオロチ。厚い鱗を身にまとったようなゴツゴツとしたその姿は、地上から立ち上がり今にも咆哮するが如き躍動感に満ち溢れています。
下から見る限り9本すべての枝がまだまだ樹勢盛んな様子です。しかし見れば見るほど異様な自然界の造形美です。1本の幹から9本に分かれているのだと思うのですが、伊藤博文公が植えられたという苗木の時の姿はいかようなものであったのでしょうか。当時はヒョロヒョロとした9本の小枝があって、それがスクスクと伸びたのでしょうか。よく9本ともが無事にここまで成長したものです。アッパレ!
クロマツはかつての大規模な松喰い虫の被害で枯死してしまい、現在市場にその材が出回ることはほとんど有りません。私自身もクロマツ体験は少なく、クロマツの魅力を伝えられるだけの能力も体験も持ち合わせていません。恐らく今後も良質のクロマツの用材が出回る可能性は低く、伐採されたとしてもおそらくそのほとんどが寺社材の類いで、かなりの高額で取引される事になり、いずれにせよ一般的には手が出ない別格のモノとなってしまう事が予想されます。
つまり、これからクロマツは幻の材となってしまう可能性が高いのです。厳島神社のある境内にはアカマツに混じってクロマツもたくさん植えられていましたが、マツはかつて日本の白砂青松の美しい海岸線にはなくてはならない景色の一部でした。枝振りも良く、長寿であり、松竹梅や門松に代表されるように縁起の良い木だから、植栽としては人気が高いのですが、今後ごく一部の床材などの銘木用材として見かけることはなくなってしまうでしょう。
【森のかけら】では、中四国地区協議会の仲間でもある島根県の原材木店の原博之さんに分けていただいた隠岐産の黒松を使わせていただいております。原さんのお店はお父さんの原義友さんは、出雲地方でも有名な黒松の目利きとして知られているお方。隠岐島の銘木・黒松を多く取り扱われてきたそうで、今でもまだ幾らかの黒松を在庫されているようです。ただ良質の材が出たとしても、需要がなかなか付いてこないのが悩みとか。小さく加工してしまうと、赤松との識別はほとんど不可能でしょうが、そこには材木屋の気概が詰まっています。
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