森のかけら | 大五木材


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半年ほど前にブログで「愛媛県産のカヤ(榧)」の板の事をアップさせていただきましたが、その後桟積みして風通しの良いところで天然乾燥を続けておりました。榧の木を原木から製材して、板材とするのは初めてでしたので(通常は乾燥させた板を仕入れています)、天然乾燥の期間を探っていましたが、半年以上経過したものを先日試しに削ってみましたが、想定していた期間より早く乾燥できていました。1年ぐらいは寝かせておこうと思っていましたが、既に住宅でも充分使えるレベルに乾いておりました。

これからたちまちすぐに現場で使うわけではありませんが、もしご注文があってもご要望にお応え出来る状態になりました。大きな原木を何本も加工したわけでもありませんので、揃った板もごくわずかな量です。大手の住宅会社相手に資材を納材しようと思えば、安定供給と価格競争力が絶対に避けて通れません。しかし、そこは大手製材工場から大量に生産されるマテリアルが、その精度と品質と価格を競い合う厳しい世界です。弊社はとてもそんな土俵に上れる体力も技術も持ち合わせていません。

生憎そういう経営センスも能力も落ち合わせていませんし、ご縁があって手に入った少量の材を丁寧に説明しながら細々と販売させていただく仕事が自分の性に合っています。この板を何に使おうかとか、この節をどう活かそうか、この耳の形は何かに似てないかしらと妄想を膨らませながら、材を1枚1枚値付けしたりするのがとても楽しいのです。生材で肩に食い込むほど重たかった材が驚くほどの軽さに変身して、別のモノに形を変わっていく姿を見るのも楽しみの1つなのです。

森のかけら】を全種各10個入る収納棚があるのですが、売れて空いたスペースに新たな「かけら」を収めていく時の快感もマニアック過ぎて、他人にはきっと理解できない快感なのです。そう考えると私の周辺、楽しみばかりのようですが、20数年掛けて楽しい事を仕事にしてしまったのかもしれません。根本的に好きな事なので、飽き性の私でもなんとか長続きします。嫌な事を我慢強く継続できるほど忍耐強さが無いというだけの事なのですが・・・。

さて、榧といえばその用途の代表格は碁盤将棋盤ですが、この材はそういう用途には遥かに及びません。昨年末、出雲で「最古の室町期の将棋盤」が出土されニュースになりましたが、その材は『』でした。それをして、昔は杉が将棋盤の材だったなどと断定するのは早計。榧は杉や桧ほどどこにでも分布しているわけではないので、周辺にあった木を利用しただけの事だと思います。出土された一帯が、位の高い武士が住んでいた地域だという事で、当時の武士の暮らしぶりや将棋盤のルーツを探る貴重な資料になるとの事でした。またこの将棋盤には刃物の傷が残っていて、将棋盤として使った後、まな板としても使われたと推察されています。それがたまたまの事例であるのか、よくあった事なのか定かではないようですが、『もったいないの精神』で無駄なく大切に使ったという事に変わりはありません。

近代の高級碁盤などを作る榧の材は、艶や光沢を損なわないように天然乾燥が基本ですが、一説によると厚さ一寸(約3.03cm)がきっちり乾いて将棋盤として使えるようになるには、少なくとも1年は掛かるといわれています。高級碁盤や将棋盤は、艶や光沢、石を打った時の感触や音も重要な価値を持ちますから、当然そこまでの精度が求められます。そのためには、最低一寸一年ぐらいの乾燥期間は必要ということです。ただそういう用途に使える榧の木は本当に少なくなっています。しかし、小さな榧の木にもそのエッセンスは流れており、水湿にもよく耐え腐りにくい性質があるので浴槽浴室用材など水廻りに適しています。他にも、和船の底板そろばん玉、戸板仏像の彫刻などにも使われています。脂気もあり、磨けば艶が出て、甘い香りのするこの黄白色の涼しげな木の新たな用途を探っております。

 




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