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萬翠荘シリーズ第3幕。何しろ材木屋にとって(私にとって)見所満載!今では到底使えないであろう素材がふんだんに使われていて、そのどれもが洗練されていて、素材の魅力をより輝かせているのですからたまりません!今でもワンポイントにそういう木材を使いたいとかいう話はありますが、どうしたってつけた感は否めません。それでも関心を持って使っていただくだけで十分にありがたい事なのですが・・・。【森のかけら】を販売させていただいていて、建築関係の方からよく耳にするのが「こんな木知らない」とか「こんな木、使うことなんかないだろうな」という言葉。規格型の建売住宅だと構造材から造作材まで含めても10~15種類もあれば事足りるのではないでしょうか。沢山の種類の木を使う事がいいという訳ではありませんが、知らずに過ごすなんてモッタイナイ!
時々「今の仕事が合ってるね」なんて声を掛けていただく事もあるのですが、全ての材木屋がこういう(どういう?)仕事ばかりをしているわけではありませんし、皆が世界中の木に興味津々で【森のかけら】を作っているわけでもありません。私は自分がそうしたいので、そういう風に流れを仕向けているだけ。そういう仕事があって、それに適していると思われるぐらい、その仕事が社会的に認知されてきたという事の裏返しであるのならば、それとてもありがたい事です。
さて、萬翠荘の周辺には多くの木々が植栽されていて、こちらも私にとっては貴重な記録のチャンス。いずれ『今日のかけら』でご紹介させていただき(たいという気持ちで無数にストックしているのですが、溜まる一方・・・)ます。萬翠荘の裏手には、かの夏目漱石が英語教師として松山中学校に赴任した際に、下宿していた離れを忠実に再現した『愚陀佛庵(ぐだぶつあん)』があり、萬翠荘と並んで松山観光の目玉でもあったのですが、残念ながら2010年の豪雨による土砂崩れで全壊してしまいました。
こちらが在りし日の『愚陀佛庵』。正岡子規も療養のために居候し1階に正岡子規、2階に夏目漱石が共に住んだ時期があるそうです。そこで子規は俳句を作り、漱石はここでの暮らしを基に小説『坊ちゃん』の構想を練ったとか。今はすっかり整地され見る影もありませんが、現在再建に向けて準備が進んでいるようです。再建場所の選定で激しい議論があるようですが、両人の思いが散在するこの地が安全性さえ確保できれば一番相応しいような気がします。
街の喧騒から少し離れたこういう場所で、かつての文豪たちの息遣いに静かに思いを馳せるのがよろしいんではないかと思うのですが。当時、『愚陀佛庵、全壊す!』の記事は地元では大きく取り上げられました。かなりの勢いで土砂が崩落したようで、痛々しい姿に・・・。この時は土砂崩れでしたが、戦禍や火事や落雷など木造建築物の保存・保護には多くの困難がつきまといます。だからこそそれらの困難をくぐり抜けてなお悠然と立ち続ける木造建築物は毅然と神々しくさえあるのでしょう。新たな歴史を刻むべく、愚陀佛庵の速やかなる再建を望みます。
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