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アスナロの分布域での立ち位置がどういうものなのかよく分からないのですが、各地の市場を巡っても、「アスナロ」の名前を冠した製品を見たことがないので、まとまって量が出てこないのか、材質の問題なのか、あるいはあえて「アスナロ」と冠して売る事で、ヒノキよりも劣っているとされ安値になることを警戒して、ヒノキに混在させているのか、どうだか分かりませんが、統計的な山地での分布量に反して、木材業界でアスナロを見かけることは少ないように実感しています。
【森のかけら】の『アスナロ』については、蛇の道は蛇という事で、少量であればどうにでもなるのですが(!)、そことてまとめてとなると無理なようで、東北などでのアスナロの流通がどうなっているのか興味あるところです。ただしそれほど業界での取引が盛んではないという事は、アスナロ個体としての出口が定まっていないことだと思います。ヒノキに似た性質でヒノキよりも優れている部分があれば、そもそも「明日はヒノキになろう」なんて名前もついていないでしょうから。
本日は、その名前の由来について。「あすなろ物語」では『明日はヒノキになろう、なろうと願うのだけど、ヒノキにはなれない木』として、名前の由来をご紹介しました。このエピソードはあまりにも有名で、世間でもそれがアスナロの由来として一般的に語られていますが、実はそれには2点ほど間違いがあります。まず、小説の舞台で登場するアスナロは、作者・井上靖氏の故郷である伊豆地方での、イヌマキの木に対する方言名の事で、アスナロの木では無かったという点。
だからといって小説「あすなろ物語」の素晴らしさが微塵も揺らぐことはないのですが、ここでも地方における木の名前の呼び名の違いが出て来ていて面白いです。次に、その名前の由来について。まずは、先日ご紹介したようにアスナロにはいろいろな呼び名があって、その中のひとつに『アスヒ』というものがあります。漢字では『翌檜』とも表わされ、叙情的で個人的にはとても好きな表現です。アスナロは『木曽五木』の1つですが、そこでもアスヒと呼ばれることもあるとか。
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