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『アギーレ/神々の怒り』は、1972年に西ドイツで作られた映画ですが、諸般の事情(まだベルリンの壁崩壊前ですから)で日本での公開は80年代に入ってからでした。当時でもミニシアターでひっそりと公開されただけでしたので、私がこの映画を観たのはその後ビデオ化されてからの事。学生時代に初めて観た時は、完全にイってしまった男のクレイジーな王国づくり譚ぐらいにしか感じませんでした。私の中の『狂気』もまだ目覚めてはいなかったのです。しかしその萌芽は確実にあったようで・・・
ヘルツォークとキンスキーは密林で味をしめたのか、誇大妄想の舞台として密林が必要だったのかは分かりませんが、その狂気の行軍からおよそ10年後、再び密林へと向かいます。それが、1982年に製作された『フィツカラルド』。今度のジャングルは、南米のアマゾン川。そこに巨大なオペラハウスを建てようとひとりの男が妄想を抱く、そうそれこそ我らがキンスキー!未開の密林を切り開きゴム林を開拓し、オペラ建設の資金にしようという常軌を逸した無謀にして壮大な男の冒険が始まるのです!
今回のキンスキーは、『アギーレ/神々の怒り』とは打って変わって全身を白いスーツでまとい、銃ではなく音楽で相手をなづけていきます。現地人たちにオペラを聞かせてやりたいと望む気のいい大富豪と思ったら大間違い!純粋な狂人は、進路を激流に阻まれたため、巨大な船で山越えを決行するのです!場所はアマゾンの密林、巨大クレーンなどの重機もない中で、現地の首狩り族たちを使い、滑車だけで、人力で巨大な蒸気船が山を登って行くのです!!今ならCGで簡単に描けるでしょうがすべて実写。
その物語同様に映画作りそのものが壮大な奇行です。その馬鹿馬鹿しさ、本気さが私の中に眠れる狂気を目覚めさせました。巨大蒸気船が山を登って行く姿は涙が出てきそうになるほどの素晴らしさ!もはや二度とこんな馬鹿げた映画は作られることがないでしょう。タイトルの『フィツカラルド』とは、キンスキー演じる主人公の名前で、うまく発音出来ない原住民に対してキンスキーがつけた愛称だそうですが、やっていることは狂気の沙汰でしかないのですがが、誰からの愛されるキャラクターでもあります。更に続く・・・
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