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昨日に続いてスティーブン・キングとジョン・カーペンターによる『クリスティーン』の話です。映画の赤い車はプリズマ(主人公の少年がクリスティーンと名付けます)、消防の車はランドクルーザーで、何の関連性もありませんが、普段街の中でそうそう目にすることのない全身真っ赤なボディーを見ると、私の頭の中でこの二つが結びつかづにはいられないのです。しかも闇の中でライトに照らし出されて、無機質なはずの車の赤色が妙に艶っぽく輝いて妖しい雰囲気が漂うのです。
小説、映画ではその名前からも分かるように車は女性に見立てられます。強烈な赤いボディーを舐めまわすように捉えたカメラワークは、被写体に恋した少年の眼。車がこれほど艶めかしく映された映画を私は他に知りません。さすがは変態カーペンター!そして主人公アーニーは、クリスティーンを大切にするがあまり車に恋心を覚えるのです。木フェチがいるように、車フェチがいるのも分かります。ただし問題なのは、恋した車が呪われた殺人車であったという事!クリスティーンはアーニーを独占しようとし、彼の精神も次第に蝕んでいかれるのです。
有機物である木と無機物の車を同列で比較するのは乱暴かもしれませんが、モノには心があるという点では同じこと。強い愛情で結ばれたモノに対する恋心は、初期段階の所有欲から次第にエスカレートして、独占欲、支配欲、それが高じて不信、妬み、嫉妬、憎しみへと変わっていく事があります。木フェチとしても、ほとんど知られていないマイナーな木がテレビなどで紹介されてみんなに知られてしまうと、途端に興味が失せてしまうというひん曲がった愛情を強く感じていますので・・・
モノに対する深い愛情がそのものに宿るという事について言えば、家についても何世代にもわたり長年住み続けた古民家などにはその家のひとの思いが宿っているというのが私の持論。それういうとすぐにネガティブなイメージで捉える人がいますが、決してクリスティーンのような殺人車でひとに悪さをするとか祟りがあるとかいう怖いイメージのものではなく、モノをただのモノ以上の存在にしてしまう事。キズや汚れを味わいやワビ・サビに変えていくのは、ただ時間の積み重ねでなくひとの思い。
何世代にもわたって人の暮らしを支えてきた古民家には、ただのモノ以上の不思議な力が宿ると思うのです。日本には昔から、長く生きたモノ(動植物)や長年使った道具には神が宿り、慈しみを持って接すれば幸運をもたらし、邪険に扱えば荒ぶる神となって禍をもたらすという『九十九神(つくもがみ)信仰』があります。例えば九尾の狐や唐傘小僧などで、それは妖怪として今にも伝えられますが、それはモノに対する接し方や大切さを教えた戒めであり、ものづくりに対する日本人としての心の在り方だとも思うのです。
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