森のかけら | 大五木材


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ディアハンター』の成功により、好きな映画が撮れる環境になったマイケル・チミノは本当に自分がやりたかった事をやってしまった、やり切ってしまったのです。完璧主義者にして天才肌の芸術家気取りのオタクな映画青年にとって、社交辞令やオトナの分別など理解できるはずもなく、湯水のように資金が投入され、当初1100万ドルでスタートした撮影は、最終的に4400万ドル(当時のレートで約80億円)にまで膨れ上がるのです。上映時間はなんと5時間30分!

当然そんな上映時間が許されるはずもなく大幅にカット。300分を超えていたフィルムは219分に削られ(後に試写での評判の悪さから149分にまで短縮され上映)話が繋がらなくなり物語は破綻。1890年代のワイオミング州を舞台にしたロシア・東欧系移民の悲劇を扱った内容もアメリカ国民の市民感情を逆なでしたともいわれ、映画は酷評でわずか1週間で上映打ち切りになり、『天国の門』という言葉が失敗作の代名詞となるほどの散々たる結果となってしまったのです。

『天国の門』にまつわるとんでも話は数知れず。馬が通れないからという理由だけで完成していたセットを壊したり、わずか数分しか映らない機関車のシーンを撮るためだけに、当時走っていた本物の機関車を調達させたりと、誰か傍に言ってきかせるまともなオトナはいなかったのかと思うのですが、アカデミーの栄光は人心をも迷わせ、あわよくば2匹目のドジョウを、という思いだったのかもしれません。途中で気づいたところで、今更引き返せるわけでもなく進むしかなかったのでしょう。

伝説はこれでは終わりません。散々たる興業成績はわずか350万ドルほど。製作費の1/10の回収すらできずに、制作会社のユナイテッド・アーティスツは遂に倒産に追い込まれてしまうのです。1本の映画が制作会社を潰してしまったのです。これによってチミノの栄光は失墜。それから長い間冷遇されることになり、後年『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』において私的には劇的に復活するものの、ハリウッドではそうは見なされなかったようで、その後大きな仕事は任されませんでした。




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