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今年の秋、ほとんど話題になることもなく小さな扱いで、ある記事が新聞等に掲載されました。またひとつ『森の出口』が細まっていくという内容のもの。 記事の内容は、マッチ業界最大手の兼松日産農林が、2017年3月末をもってマッチの製造販売事業から撤退するという。兼松日産農林は1939年にマッチ事業に参入し、戦後の復興期には国内で10カ所以上の工場を運営していたが、使い捨てライターや自動点火コンロなどの普及により需要は縮小し、現在は1工場のみ。
それが兵庫県淡路島にある淡路工場で、それでも国内の4割のシェアを誇っているものの、設備の老朽化で安定的な供給が難しくなっているためマッチ事業からの撤退を決断されたとのこと。製品の商標権と製造設備の一部は、マッチやライター、紙おしぼりが主力の日東社(兵庫県姫路市)に譲渡されるそうで、「桃」や「燕」などの商標で知られるマッチの製造販売は日東社が引き継ぐことなので、マッチ製造そのものがなくなるわけではないものの、業界的にはかなり厳しい状況のよう。
マッチ、正確に言えばマッチ棒(軸木)も立派な『森の出口』の1つであり、軽軟な白木の貴重な活用手段のひとつでした。今回の件で改めてマッチ業界の現状を知って、用途は違えども同じ木を扱う人間として他人事とは思えない気分になりました。記事を拾うと、工場は神戸を拠点に「マッチ王」と呼ばれた滝川弁三の清燧(せいすい)社が、1905(明治38)年に設立。明治大正期の総合商社・鈴木商店のマッチ会社と合併するなどし、兼松日産農林が39(昭和14)年に継承。
かつては国内に10数カ所の工場が稼働していたが、今は淡路工場に1ラインを残すのみとなっていた。工場の自動マッチ製造機は1960年代に機械化が進んだものの、設置から約50年が経過し、装置を製造した機械メーカーは既に無く、修理部品も手に入らないため従業員が自作して凌いでいたが、昨年末に故障が頻発し製造能力が極端に低下したという。汎用性が低いという意味では大型の製材機械にも相通じる話。それらの理由から前身の企業から数えて112年の歴史は閉じられることに。
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