森のかけら | 大五木材


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くどいですが本日も『シェイプオブウォーター』の話。軍の機密機関「航空宇宙研究センター」にやって来たエリート軍人(マイケル・シャノン)の描写が思いっきりタランティーノ風で、意味ありげなアメリカンジョークや偏執狂的なところは狙っている確信犯のようにも思えました。またソ連の科学者のソ連での名前がディミトリというのは、明らかに『博士の異常な異常』へのオマージュでしょう。工作の内容を確認させるために何度も「いいか、ディミトリ」と繰り返すあたりも遊んでいらっしゃる。

『博士の異常な愛情』は、言わずと知れた巨匠・スタンリー・キューブリックの傑作SF映画で、サブタイトルは『または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(原題はDr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb)。タイトルがすべてを言い合わらしていますが、米軍の頭のいかれた反共の将軍が勝手にソ連への核攻撃を命令したことで始まる米ソの核戦争の恐怖をシニカルに描いたブラックユーモア。名優ピーター・セラーズの一人三役の怪演が素晴らしい!

その中で核戦争を回避しようとアメリカ大統領に扮するピーター・セラーズが、ソ連の大統領ディミトリに電話で必死に呼びかけます。「いいか、ディミトリ」、「分かるかい、ディミトリ」。本作では肝心のソ連首相は酔っぱらっているという設定で、ピーセラが気を揉んで名前を連呼するのですが、思えば冷戦時代の当時、アメリカにとってソ連はまさに意思の通じぬ異形なる存在であったのでしょう。結局その呼びかけも狂気の前に意味をなさなくなるのですが、『シェイプオブウォーター』でも悲劇は起こります。

ただしキューブリックの方が皮肉たっぷりに、クレイジーで形なる者たちの不条理な争いの果ての絶望を示唆しているのに対して、デル・トロは最後に異形なる者たちにも彼らが生きる舞台を用意しています。そこがこの作品に希望を与えていて、大人のメルヘンへとなっているのです。デル・トロの映画に登場するのは、『異形なるモノ』ばかりですが、その異形なるモノたちは、それゆえに逞しく優しい。故郷のアマゾン川まで無事に戻っていけたかどうかが心配。あ、もしやそこが続編への示唆だったりして?!




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