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先日、地元で新年恒例のご祈祷という行事がありました。町内にある阿沼美神社に集まって、地区ごとに分かれてお祓いを受けるもので、毎年1月の第三に日曜日に開催される神事なのですが、これをしないと新しい年を迎えた気分がしないほどに、私もすっかりここ平田町の人間になりました。この地に住むようになってからもう30年近くになりますので、この神事もすっかり新年の風物詩として体に染みついてきました。このご祈祷の話もブログを始めてから毎年書いている気がしますが。
毎年このご祈祷の際にここに座ると、目に入るのが阿沼美神社の名前が縦書きに彫られた扁額の上に、横書きで『誠天道誠思人道』の言葉が書かれた扁額。が飾ってあり、いつもその言葉を見ては思い出す映画があります。『中庸』という古典に書かれた言葉で、原文は「誠者天之道也。誠之者、人之道也」。「誠は天の道なり。之れを誠にするは人の道なり」と訳されています。この言葉を見ると必ず思い出す映画があります。森田芳光監督、夏目漱石原作、松田優作主演の『それから』。
その映画の中で、松田優作演じる主人公・ 長井代助が、兄に金の無心に訪れた際に壁に飾ってあったこの言葉を呟くシーンがあります。30歳にもなりながら職にもつかず自由気ままな生活を送る代助が、その言葉を目で追いぼそっとつぶやきます。「誠の道は天の道なり、人に道に非ず」。漱石の原作にもあるのですが、これでは本来の意味とは真逆の解釈となります。本来の意味は、誠とは嘘偽りのない真心、つまり天の道である。その天の道を素直に受け入れて誠にするのが人の道だというもの。
それを、敢えて逆説的に主人公に語らせたのは、この物語が友人の妻に惚れて略奪するという「格調高い不倫小説」だからです。初めてこの映画を観たのは大学生の頃で、この『中庸』の言葉の意味も、後に文化とまで言われる不倫の「高尚さ」すら理解できませんでした。この言葉の意味を気にするようになったのは、実はご祈祷に参加するようになってから。当時言葉の意味はよく理解できずとも、優作の口から発せられる言葉が耳に心地よく、意味深な言葉だけは記憶していました。
今回はいつもの東京(ギフトショー)ではなく、京都で開催したということで、京都周辺に在住の方が足を運んでいただき懐かしい再会ができたのもありがたい事でした。いくらフェイスブックなどで遠く離れた方と日々通信してるとはいえ、直接会って話してこそ。そんなお久しぶりのお一人が、こちらの小森創介さん。舞台俳優にして声優、数々のテレビドラマや映画、アニメなどの吹き替えをされていて、声を聞けば「あ、この声の人なのか」と思われる方も多いはず。
小森さんは仕事の関係で全国を飛び回られていて、そのたびにあちこち引っ越しもされていたのですが、昨年からここ京都に移られていて下鴨神社近くにお住まい。恵文社でのイベントを知って、わざわざ訪ねて来てくださいました。小森さんとの出会いは、もう10年ほど昔の話になりますが、『どうぞのいす』(ひさかたチャイルド社)という1冊の絵本によって繋がりました。この絵本は絵本の世界では知る人ぞ知る大ベストセラーで作者は香山美子さん、絵は柿本幸造さん。
物語は・・・うさぎさんが作った小さないすに「どうぞのいす」という立札を立てて大きな木の下に置きました。そこにやって来たのはロバさん、持っていたどんぐりをいすの上に置いて気持ちよく眠ってしまいました。そこへ動物たちが次々とやって来て、いすの上に置いてあるどんぐりを、「どうぞならばいただこう」と食べてしまい、代わりに自分がもっていたハチミツを置いていこう。次はハチミツの代わりに・・・次は・・・という思い違いが優しい連鎖を生み出すお話。
初版は1979年ですが、時代を越えたハートウォーミングなメッセージは健在で今でも子供たちに愛され、全国の保育園や幼稚園のお遊戯会などでは定番となっています。私も自分に子供ができるまでは知りませんでしたが、ひとの事を思いやる気持ちに溢れた素晴らしい絵本で、子供が小さな頃は随分ページをめくりました。この中に登場する木の椅子は、うさぎさんが作るのですが、これがもし本当に木で作れたら面白いのにという事から始まったのが、『どうぞのいす』プロジェクト!
昨日の続きで映画宣伝の話ですが、『メガフォース』は、作品そのものがあまりにもしょぼくて、無敵兵器タック=コムという最新マシーンは、どう見たってただの軽自動車にデコレートしただけのあまりにもみすぼらしくて安っぽい、そして何よりもまったく強そうには見えないシロモノ。遠近法をどこまで無視して拡大解釈すればここまでその軽自動車を巨大で勇ましく描けるものかと思える超過剰演出。騙されたという気持ち以上に、嘘を言ってもいいんだと感じたものです。
まあ、決してポスターやチラシで謳われている「全世界が泣いた!」、「今世紀最大の~」、「前人未到の~」なんて宣伝コピーを信じていたわけではありませんが、『メガフォース』で感じた不信感・虚脱感は特別なもので、ポスター等に描かれていた画がSF大好き少年たちの心をくすぐり大いに期待させるほど格好いいものであっただけに、実際に映像とのギャップ、解離間の虚しさは大きく、裏切り、詐欺という怒りの逆ベクトルに大きく振れてしまうことになったのです。
そのガッカリ感はキッチリ数字となっても現れ、東宝東和がサマーシーズ最大の目玉と打ち出して煽りに煽って宣伝したにも関わらず、お盆前の5週間興行で打ち切りとなり、配給収入は3億8267万円。3億円もの宣伝費を計上したにも関わらず・・・。まあそういった映画配給の裏話やら苦悩、一方で逆に海千山千のベテラン宣伝マンたちでさえまさかここまで売れるとは、と予想を遥かに上回るスーパーヒットになった話などが、配収や観客数などのリアルな数字を交えて描かれた本です。
スーパーヒットの実例としては、南アフリカで製作された少数民部族の男が主演した作品、『ブッシュマン』。ほとんど期待もされずに、映画館の空いたスケジュールを埋めるために東和が送り出したこの作品は、実に23億8100万円もの配収を計上して、その年最大の成績を収めることになるのです。こういう映画宣伝の手法は、ただ物質(モノ)を売るのではなく、時間や経験を売り、それぞれの個人的な価値観で評価してもらうという意味で、非常に興味深くとても参考になるのです。
昨日までの映画のタイトルに関連しての話になりますが、ここに1冊の本があります。著者は斉藤守彦さん、1961年生まれの映画ジャーリストで数々の映画に関する著書がありますが、その斉藤さんが2013年に書かれた映画の配給会社の裏話。1970~80年代に、ワーナーやフォックスといったメジャー系に対して、ゲテモノ・キワモノから感動作まで手八丁口八丁の宣伝で戦いを挑んだ日本のインディペンデント系の配給会社の記録『映画宣伝ミラクルワールド』。
サブタイトルは、『東和・ヘラルド・松竹富士/独立系配給会社黄金時代』。冒頭のページに掲げられた「あの夏『メガフォース』を観て、怒りと失望のあまり、映画館の看板を蹴飛ばして帰った、かつての少年たちに、本書を捧ぐ・・・」という斉藤さん自身の言葉に惹きつけられて購入。本の内容は冒頭で書いた通りで、独立系の配給会社がいかに工夫して、仕入れてきたスター不在の名もなき作品や売り方の難しい作品をいかにしてヒットさせたか(あるいはコケたか)。
また、冒頭の言葉に引用された『メガフォース』とは、同世代の男子の映画ファンならば誰もが激しく共感できるであろういわくつきの1作。1983年の夏に公開されたアクション映画で、監督は前年に『キャノンボール』を大ヒットさせてハル・ニーダム。映画雑誌には、豪快に荒野を疾走する巨大な最新鋭のスーパータンクと躍動するスーパーバイク!最新メカが登場する豪快で迫力面店の格好いいSF大作、誰もがそう信じて疑いませんでした、だってそう描いてるし、そう謳っているし。
映画宣伝におけるパブリシティやアドバタイジングなんて言葉なんて知る由もない少年たちの『メガフォース』に対する期待は、無残にも打ち砕かれ大いなる失望が押し寄せ、もって行き場の無い怒りは大いなる偽りの映看板へと向けられることになるのです。パブリシティとは、観客を集めるために認知度や鑑賞意欲を高める作業。アドバタイジングとは、ポスターやチラシなどの宣伝材料や広告を作る作業。『メガフォース』においてはそのいずれもが逆効果、逆作用に働いたのです。
昔、映画のキャッチコピーは『惹句(じゃっく)』と呼ばれていて、それを考え作る人の事は『惹句師(じゃっくし)』。惹句とは用語解説によれば、「人の心をひきつける短い文句。特に広告文などで、
その中にはトンデモナイようなモノも沢山ありましたし、「愛」やら「夢」やら「哀しみ」、「青春」なんて凡庸な言葉の積み重ねで、折角の素晴らしいテーマや内容が駄目になってしまうことも多々ありました。本題を超訳して作品のテーマを暗示し成功した例としては、最近大ヒットした『アナと雪の女王』。本題は『Frozen』(凍結や凍ったの意)。『スタンド・バイ・ミー』、本題は『the body』(死体)。『遊星からの物体X』(THE THING)などなど。
または、主人公の名前だけのシンプルな本題を思い切って超訳した例として、『ランボー』の本題は『First Blood』。古くなりますが『明日に向って撃て!』(Butch Cassidy and the Sundance Kid)、『俺たちに明日はない』(Bonnie and Clyde)、キューブリックの『博士の異常な愛情』(Dr.Strangelove)など。また、トリュフォーの遺作『日曜日が待ち遠しい!』(土曜を逃げろ)や、香港映画『恋する惑星』(重慶森林/主人公たちが暮らすマンションの名前)などなど。
古い映画ばかりで恐縮ですが、そこには宣伝マンたちの目立たせて気を引いてヒットさせてやるぞという強い意志や軽妙な遊び心が感じられます。そして何よりも映画そのものに対する強くて深い愛情と尊敬の念が溢れているように感じられます。こうした邦題のネーミングも、私が商品に名前を付ける時に大いに参考にさせていただきました。駄洒落や言葉遊びのようなことをしても決して商品や素材そのものに対する愛情や敬愛の気持ちを忘れてはならない、人を不快にするものであってはならない。
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