森のかけら | 大五木材


当ブログに記載の商品の料金、デザインは掲載当時のものであり、
予告無く変更になる場合がございます。
現在の商品に関しまして、お電話、又はオンラインショップをご覧ください。

それこそ今まさに伐ったばかりの木というものは、水分をたっぷり含んで生々しいのでその樹皮も簡単に剥くことができます。外皮がついたまま乾かしておくと、虫にやられる危険があるためなるべく早い段階で剥くのですが、今回の『ニッケイ』については、それだけではない理由で早く皮を剥いておきたい理由がありました。うちの倉庫には『ニッケイ』の耳付き板が幾つかあって、お客さんが材を来られた時に、文字通り五感で木を味わってもらう時に活躍しています。

名前は伏せておいて、ニッケイの樹皮を少し取って手渡し、匂いをかいでもらいます。木に詳しくない方でも、ほとんどの方が「どこかで嗅いだことのある匂い」と言って、『シナモン』あるいは『ニッケイ』(あるいは、ニッケ)の名前を挙げられます。それまで高級銘木とか、大きな一枚板みたいなものに気後れして遠くに感じられていて木の世界が、途端に身近に感じていただくきっかけになるので、とても重宝しています。やはり木は、いろいろな感覚で味会わなければなりません。

そのニッケイの板は、長さが2m、幅が300㎜前後の小幅なものですが、それでもニッケイの木としたら相当な大物だと思います。ご存じの方も多いとは思いますが、ニッケイの木が匂うのは樹皮の裏部分のみで、材そのものには匂いはありません。なので、お客さんが来られるたびに、そのニッケイの樹皮を取る(実際には、皮も乾いて硬くなっているのでパキンと小さく折るようにして取ります)のですが、あまりに樹皮を取り過ぎて、そろそろ丸裸になりつつありました。

そのニッケイとて、いつまでも匂いを楽しむためだけに倉庫にあっても仕方がないので、いずれ巣立っていくことになるので(これがなかなか巣立たないので、ありがたいような困ったような・・・)、代わりのニッケイを探さねばならないと思っていたのですが、木材市場に行ってもニッケイなんて見かける事はありません。伐採したとしても、かなり早い段階でその筋の関係者に回っていくのでしょう。樹皮は生薬にもなるそうなので、材そのものよりも皮や根が金になるのでしょう。




今日のかけら・#084 【肉桂/ニッケイ】クスノキ科ニッケイ属・広葉樹・宮崎産

文章挿入 右写真挿入

近所の方から、庭の木を伐るけど要りませんか?のお電話がありました。町内の方々には、機会あるごとに『変わった庭木』や実のなる木(この辺りは宮内ミカンの産地ですのでミカンをはじめ、モモ、ウメなど植えてる方が多いのです)を伐採する時にはお声をかけて下さいとお願いしているので、ときどきこういうお電話をいただきます。それで今回伐られる木というのが、『ニッケイ(肉桂』の木。なんと、こんな身近でニッケイの木が得られるとは考えてもいませんでした

やはりアンテナは立てておくものです。今回伐られるニッケイは、数十年昔に庭に植えたニッケイですが、根元から伐るのではなく、塀を越えて伸びた枝部分なので、それほど大きなものではありません。しかも湿度の多い場所だったようで、多少腐りもありますが、『骨までしゃぶって使い切る』を身上としている材木屋としては、そんな事は気にしません。何に使うんですか?と質問されますが、いちいち事前に完全な『出口』が見えているわけではありません。とりあえず、手に入れる!

どう使うかは後で考えればいい事。持っておけばアイデアも湧いてこようというもの。どうせ自然乾燥させるわけですから、伐るのは枝だけとはいえ、かなり枝葉が伸びていたので、伐った枝葉だけでも軽トラック1車分ぐらいはありました。その中からめぼしい大きさのものだけいただきました。以前は葉っぱも全部落として持ち帰っていましたが、こういう場合はその木が何の木であるかの確認作業を自分でせねばなりませんので、必ず大切に持ち帰るようにしております。

確認作業といっても、数冊の木材図鑑を引っ張り出して、葉の特徴を照合するわけですが、葉っぱも見慣れてないと微妙は特徴の違いが分かりにくいものです。似たような葉が2枚並んでいれば、その差は分かりやすいのですが、単独の1枚見るだけでは、書いてある特徴がどれもあるような、ないような・・・。答えを探し求める木に限って判断がつきにくいもの。今回のニッケイは葉の特徴が分かりやすく、ヤブニッケイとの区別ぐらいでいけるので助かります。この話、明日に続きます。




チークについては本当に終わらせるつもりでしたが、11日も書いているとどうしても補足してしておきたい事が次から次から浮かんできて、掟破りの余話の余話をもう1日にだけ追加させていただきます。今から3年前の2011年の9月にこのブログにアップした話でしたが、TBS系列で放送いていた『飛び出せ!科学くん』という実験科学番組について少しだけ触れさせていただいて、本当の本当にこれで『長い長いチークの話』の締めとさせていただきます。

詳しくはブログ内で検索いただきたいのですが、その番組内で番組MC田中直樹氏が、日本の誇る最新鋭の深海左遷調査船「ハイパードルフィン」に乗り込んで、世界一深いとも言われる駿河湾の深海でまだ見ぬ深海魚を探すというプロジェクトで、偶然駿河湾に沈んだといわれるロシアの軍艦・ディアナ号ではないかと思われる不自然な木の塊を見つけてしまうのです。そこで、その木片を引き揚げてみてディアナ号かどうかを調査するというもので、何とその依頼らしきものが・・・

その木片の鑑定がたまたま私のところに回ってきたのですが・・・!?その経緯についても過去のブログで詳しく書いておりますが、あまりに突然でほとんど説明もないご依頼でありましたし、『鑑定』という責任の重圧もあり、結局おお断りさせていただきました。鑑定は出来ずとも、150年前に沈んだかもしれない木の木片が、海中でどのような経年変化を遂げていたのか見るだけでも見たかったなあと・・・。結局二度にわたる探索でもディアナ号を見つける事は出来ませんでした。

自然界において動植物の腐敗や分解は、微生物の力に拠るところが多いのですが、充分な光や酸素の無い深海などでは、分解できる微生物の数も少なく、その活動も抑制され、紫外線や温度などの外因の影響もあって腐りにくいので、通常の水中での腐食とはわけが違うとわけです。それでも150年経たチークの表面がどうなっているのか?またそれをひと削りすればまた元の輝きを見せてくれるのか?チークの事を書いていて、またその事を思い出し悔しさが込みあげてきたのです。

チークは耐久性があるとか収縮にも強いといつも説明しているものの、深海という過酷な環境で150年も経過すると実際にはどうなるのか(ディアナ号のものという前提の話ですが)、最強銘木のチークの『世紀越え』の勇姿を見て見たかった・・・。さすがに船の甲板という形でチークと接する機会は稀で(あくまでも私の周辺では)、主にフローリングや造作、カウンターが主な出会いですが、それらが100年後にどうのようになっているか、その姿にも思いを馳せてみるのです。




チークの項は昨日で終わりにするつもりでしたが、まだもう少し書き足したい事を思いついたので、1日だけ余談の追加です。東南アジアあたりでよく丸太を鼻で抱えて運んでいる象の映像を見る事がありますが、数こそ減ったものの今でもタイでは象が木を運んでいるそうです。そもそもは、今から100数年前に、タイの北部一帯の広大なチーク林の伐採権を得たイギリスの企業が、重たいチークを運ぶために象に運ばせるようになったのがことの起こりだと言われています

まだ小象の頃から訓練を始め、木材を運ぶ動作や林業機械の騒音などに驚かないように訓練を受けるそうですが、丸太の運搬だけではなく観光客向けのショーなどにも出演して、タイの外貨獲得にひと役買っているそうです。ところが1988年にタイ南部を甚大な集中豪雨が襲い、いくつかの村で壊滅的な被害が出、300名を超える大災害が発生したことで、政府の木材輸出政策は大きく方向転換。上流の森林破壊が原因と考えたタイ政府は、全国的な森林伐採禁止令を公布したのです

その結果、丸太を運んでいた多くの象はショーなどに転職したり、職を失う事態となってしまったようです。現在、チークの伐採は厳格に管理されているそうですが、それでも違法伐採は後を絶たず、象に過酷な労働を強いたりするなど、摘発と違法伐採のいたちごっこは続いているのだとか。何も知らない象が犯罪の片棒を担がされるというのは悲しい話です。象による木材運搬って南国情緒を想起させるものの、現地には現地の深刻な事情もあるので決して甘い幻想ではありません。

残念ながら私はタイに行ったことがないのですが、父親は何度か行っていて、そういえば自宅にチーク造りの象の置物がありました。本当は、取り扱っている木の生まれたすべての国に行って、その木が育った森や環境、歴史的な背景までも理解したうえで、木を販売できればベストなのですが、現実的には難しい事もあり、輸入商社の方やバイヤーの人から間接的に聴くというレベルに留まっていて情けないのですが、きっといつの日にか世界の森を巡りたいと思っています。




およそ10年ぶりにチークについて書いたので、思いのほか筆が進んだこともあって、すっかり大長編になってしまいましたが、本日はチーク篇の最後です。チークの特徴、性質には今までいろいろ書いてきましたが、その色合いを言葉で説明するのは非常に難しいです。産地によっても微妙に違いますし、経年変化でも随分変わってきます。チークの小口を切ると断面は黄金していることに驚きを覚える人もいると思います。それが時間が経つとあれよあれよという間に変色していきます。

空気に触れる事であっという間に色が変わる事はよく知られていますが。ゴールデンブラウン色から、空気に触れてリッチブラウン色に変わるものが最高とされ、造船などに利用されるそうです。そんなチークですが加工現場では意外にも歓迎されないのです。加工性そのものは決して悪くないのですが、材中に石灰質の成分(シリカ)を含んでいるため(表面に白い帯状に現れる)、加工機にかけたり、鉋で削ると一瞬で刃先を磨滅して刃物が使えなくなってしまうのです。

また油分が非常に多いため、サンダーで磨いてもあっという間にサンダーが目詰まりしてしまいますので、チークを加工する際は予備の刃先やらサンドペーパーの交換を頻繁に行う必要があって、加工する立場からすると決して歓迎されないのですが、それを差し引いてもやっぱりチークは素晴らしい~!倉庫の中にストックしているチークの板を動かす時に、ぐっと肩を入れるためチークに近づくと独特の匂いがします。20数年経ったチークからも色気ある香りが漂ってきます。

チーク、マホガニー、ブラック・ウォールナットが『世界三大銘木』であるとご紹介しましたが、これは私の見解ではなく世界の評価。その中で私は正直、マホガニーだけは今ひとつ良さが分かりかねる部分があるのですが(そこまでの評価を得られる理由が)チークとブラック・ウォールナットについては強く同調します。延べ11日にわたるこのチークの話で、ひとりでもチークという木に興味を持つ人が増えたとしたら、材木屋として至上の喜びであります。これにてチーク篇、完結!




オンラインショップ お問い合わせ

Archive

Calendar

2026年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
Scroll Up