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井上靖の小説『あすなろ物語』は、人生の壁にぶち当たりながら逞しく成長していく主人公・鮎太の姿に、アスナロの木の姿を重ね合わせ、人生の悲哀を謳い上げています。「あすは檜になろう、あすは檜になろうと一生懸命考えている木よ。でも、永久に檜にはなれないんだって! それであすなろうと言うのよ。」叶わなくとも努力し続けようとする思いがアスナロに託されているわけです。当時その言葉と、アスナロという木の名前の由来に強い感銘を受けたのをよく覚えています。
今考えれば、私が私が木の物語やその背景に興味を持つようになった原点だったと思います。ただその頃は、ヒノキという木が木材界の中でどういう位置を占めているのかなどということは分かりませんでしたが、明日こそはヒノキになろういうぐらい毎日望まれる木なのだから、さぞかし立派で凄い木なんだろうというぐらいの感覚でしかありませんでした。ましてやそう願うアスナロという木を見たことすらもなかったのですが、妄想の中ではアスナロは逞しく成長していったのです。
作品の中でこういう場面があります。鮎太の友人たちの誰もが「自分こそは檜だ」と信じて成長していこうと努力している中で、鮎太は一人「自分は檜ではない。あすなろでしかないのだ」と考えている。また、そういった態度を、「だって貴方は翌檜でさえもないじゃあありませんか。翌檜は、一生懸命に明日は檜になろうと思っているでしょう。貴方は何になろうとも思っていたらっしゃらない」と、思いを寄せている未亡人に見抜かれ非難される。今思えば何と含蓄のある言葉!
ただ当時はこういう機微を読み取る力はなく、少年時代に私にとっての『あすなろ物語』は、土蔵で祖母と暮らす鮎太の子供時代の描写と、「あすは檜になろう、あすは檜になろうと考えていても、永久に檜にはなれないんだって!」という言葉が占めていて、戦後の時代背景の混乱も、おとなになった鮎太の苦悩も、遠い遠い世界の話のように感じられたのです。文庫本の帯に書かれたコピーが、私のあすなろ物語に対する感情のすべて・・・『夢を見ても許されるのは、何歳までなんだろう。』
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