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『居酒屋兆治』も『駅STATION』もいずれも舞台は北海道で、寡黙な耐える男・高倉健には北の大地が似合います。ただどちらも大雪が背景というわけではなく、「雪と健さん」といえばやっぱり『網走番外地シリーズ』と『八甲田山』。タイトルを聞くだけで、極寒の名場面の数々が思い浮かんで震えそうになるほど。とりわけ、『八甲田山』についてはかつてリバイバル上映で映画館の大きなスクリーンで観たため臨場感も半端なく、本当に劇場で手足の先が寒くなるような冷感体験を味わったものです。かなり脚色、創作はあるものの、この陸軍による雪の八甲田山行軍は明治35年に実際にあった(八甲田雪中行軍遭難事件)もので、行軍に参加した青森の連隊210人中、199人が死亡するという痛ましい事件で、新田次郎氏が小説として発表しました。
健さん扮する徳島大尉と北大路欣也扮する神田大尉は、上官の無謀な命令によって冬の八甲田踏破訓練の指揮官に選ばれます。いくら馬鹿げていると分かっていても上官の声は神の声、異を唱えよう事など出来るわけもなく、両隊は八甲田山ですれ違うという行程の雪中行軍が決行。最低限の少人数で長い行程を組んだ徳島大尉に対して、自分の見栄のためだけに自分も大隊本部として同行するように隊を大編成せよと唱える大隊長役の三国連太郎の憎々しいこと!
案の定、自然は彼らに牙をむいて襲い掛かるのですが、吹雪が舞う大雪原の中をCG無しの体当たりの熱(寒)演で、芝居を通り越して気の毒に思えるほど・・・ヒートテックなんて無い時代ですから、いくら厚着をしてカイロをしこんだところで、下手をすると本当に凍傷になりかねない超危険な撮影。実際にあまりに過酷なロケに耐えきれず、現場から逃亡した役者もいたそうですし、健さん自身も軽度の凍傷になったとか。3年にも及んだ撮影はまさに八甲田山の雪中行軍を地で行く無謀なものであったのです。
完全に道を見失い、荒れ狂う吹雪の中で北大路欣也がつぶやく「天は我を見放した~!」という台詞が流行するなど映画は大ヒットを記録しました。年末に何度も繰り返し観た私の脳には、膝まである雪の中を行軍する健さんの姿が焼き付けられ、ある忘年会の後は酔い覚ましもあって、少し歩いていたら、そのシーンが蘇ってきてウォーキングハイの状態になってしまい、そのまま街から自宅まで(約6.5キロ)たっぷり1時間半ほどかけて『独り行軍』してしまったのです・・・。更に明日に続く
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