森のかけら | 大五木材


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嫌な予感は的中!本日も昔のアユースのトラブルの話。天井作業用の専用リフトに乗って、天井装飾と同じ目線になるところまで上がってみると、白く塗られたアユースのモールディングのところに無数の黒穴が!!その下の額縁には穿孔された木屑が溜まり、それが溢れて下に落ちた形跡がありました。しかもその数が半端ではありません。一瞬、自分の血の気が引くのが分かりました。しかしそこではどうすることも出来ず、とりあえあず会社に戻ってすぐに施工会社とメーカーに連絡して対応策を検討することに。

どこでどうして虫が入ったのかという問題はあるものの、とりあえずどのぐらいの被害があるのかを調べなければならないので、後日施工会社によって足場が組まれ、木紛のある部分をすべて調査し、モールディングを取り外して内部を調査。その結果、驚くべきことが分かりました。穿孔跡のあるモールディングは、表面数㎜のところまで内部をすっかり食い尽くされていて、スポンジ状態になっていて、軽く持っただけで崩壊してしまうほどになっていたのです。この時ほど虫害の怖さを感じた事はありませんでした。

そのままにしておくわけにはいかないので、問題のあるモールディングはすべて取り外されました。現場の調査と同時進行で、なぜ虫が発生したのかをメーカーも調べてくれていたものの、取り急ぎ現場を復旧せねばなりません。しかし、再度同じような事があってはいけないということで、アユースで作り直すことを施工会社は拒絶。メーカーは絶対の自信があるとはいえ、事実そういう事態になっているので、さすがにアユースでというわけにもいかず、急遽セラミック製で製作することになりました。

後日その作り直したセラミック製のモールディングを納品して取り付けてもらいましたが、問題は責任の所在。虫は一体どこではいったのか?!大手の専門メーカー側は品質には十分気を配って管理していて、虫の入る余地は無いという姿勢。しかし、現場では下地に疑いのあるコンパネなどを使っておらず、施工後に現場で虫が侵入してきた形跡も無い。しかも外部と繋がる窓も無い空間なのです。弊社に入って来た段階では、割れ物ですので厳重に個別梱包されていて、中を開けてもいないので箱を破って入ってきたとも考えらず謎は深まるばかり?!




本日も『アユース』の話ですが、かつて虫に食害されて痛い目にあった経験。もう随分前の話ですが、県内の某ホテルに大手専門メーカーで作られたアユース製のモールディングを大量に納品させていただいたことがあります。アユースは前述したように幅広で反りやねじれの少ない均質で軽軟な材が比較的安価で手に入ることから、リブ(波型)やクラウンなどの特殊で緻密な細工が求められる室内装飾部材の世界では非常に重宝される木材なのです。また塗装のノリも申し分なく、理想的な素材のひとつなのです。

ただ問題は虫に食われやすい、というか立木の段階で卵を産み付けられているケースがあって、加工過程の加圧や熱でもへこたれない根性ある虫がいて、そいつらが残っていると、もう後は大量増殖した彼ら一族に内部からサクサクと、文字通り首の皮一枚まで食い尽くされていくというホラー映画のような事態に陥るのです。私が経験したのがまさにそれ、施工後数年経った頃、連絡があり、どうやら虫が出たらしいので来てほしいと。虫って、もう数年も経っているのに・・・と怪訝な気持ちで現場に向かいました。

ホテルの宴会場の天井や壁面に取り作られたリブやらクラウンやら様々な形状のアユース製のモールディングは美しいものでした。納品時にも施工作業を見ていましたが、大きなモールディングも鋸で簡単に切断できて、天井付近まで軽く持ち上げている様子を見ると、なんと施工性のよい素材なんだろうと惚れ惚れしていたものです、数年後再びその現場に来るまでは・・・。室内に入ってもすぐにはその異常に気が付きませんでした。どこに虫が?!という感じだったのですが、壁際の足元を見ると・・・

そこには赤い絨毯の上に、まるでグリム童話のヘンゼルとグレーテルが、帰り道に迷わないようにパン屑を道に置いたように、白い粉が壁伝いに点々と・・・。当時はそんな事を考える余裕もありませんでしたが、とにかくその白い粉がアユースのものであることは間違いなさそうなので、それがどこから来ているものなのかを探さねばなりません。しかしそれが目の届く壁や腰板の範囲にはなくて、穿孔跡が一切見つからないのです。もしや、宴会場の高い高い天井の壁際に張り巡らされたあのモールディングからなのか?!




域の材の事を考える場合、どうしても川上から川下までの流れを地域内で完結させてしまいがちですが、他地域の事の方がより冷静に見ることが出来るし、足りないものを補い合えばより流れはスムーズにスピーディになることも多々あります。海外から国内まで、針葉樹から広葉樹まで多岐な材を取り扱っているからこそ見えてくるものもあるし、今回の江差の群来のニュースとて木の事と関連付けて考えることもできます。最近やたら魚とご縁があるのですが、農林水産業なんで根っこは同じところなので当然の事かと納得。

5月頃になると沿岸に魚群が押し寄せることから、北海道では春を告げる魚という意味で『春告魚』とも呼ばれるニシン(鰊)ですが、それは季節的なものだけでなく、漁民にとっては経済的にも春をもたらすものでした。その「春」が実に100年以上もの間遠ざかっていてわけですから、今回の群来は江差の方にとって感激ひとしおだったのではないでしょうか。しかし考えてみれば最後の群来から104年が経過しているわけですから、当時を知る人はもう誰もいないわけで、まさに歴史的な事件。

江差をはじめ北海道の漁民の方々はこの「春」をただ漫然と待ったわけではなく、稚魚放流などの継続的な活動が実ったということです。植林から伐採、そしてその後の製材、乾燥、加工まで含めると、ひと世代では結実しない長期戦の林業に比べると、稚魚の放流から考えても成果が出るまでのスパンが短いと考えられる漁業で、100年というのは恐ろしく長い時間であり、その成長が日々目で確認できる樹に対して、見えない水面下の魚が相手という事を考えれば、それは絶望的に長くゴールの見えない日々だったのではないでしょうか。

改めて100年という時間を考えたとき、何気なく手にする米松の桁とて目込みのものであれば、それに匹敵するぐらいの時間が凝縮されています。積み重ねられた時間は、日本の木だろうがアメリカの木だろうがアフリカの木だろうが同じです。普段から自分より「はるか高齢な先輩方」ばかりを相手にしていると、ついつい100年生なんて軽口を叩いてしまいがちになるのですが、100年ぶりのニシンの群来の話を聞いて、身近な100年選手たちのことももっと深く考えようと思いました。

プレカットなどの浸透で木材業界もすっかり工業製品化が進み、プラスマイナス数ミリの精度ばかりが幅を利かすようになって、かつての木目や風合い、木味、艶などといった情緒的な表現を使う場面がすっかり少なくなってきました。そういう時代だからこそ、木を語り継ぐ事に意味もあります。いつかまたやって来ると思い続けて104年後に実った執念。もう二度と来ないのではとの疑心暗鬼との戦いであったと思います。情緒的に木が語られる時代がまた再び来るその日まで信じて種を撒き続けていきます。




永らく乾かせておいた(決して忘れていたとかではなく!)愛媛県産ケヤキ(欅)の耳付き板を奥から引っ張り出し、さあ木取りしましょうと広げてみると、耳の部分に『生き物たちの記録』がガッツリと刻まれていました。これが木材市場で買ってきた高額の板であれば、血の気が失せるところでありますが、地元の小さな丸太を挽いたもので、色や艶を残すために天然乾燥させていたもので、もともとこれで一枚板のテーブルやカウンターにするつもりではなく、割り返して使うつもりだったので意にも介さず。

まだ建築用材と家具用材しか『材の出口』を持っていなかった頃であれば、いくら安く買った材でも虫の材は頭の痛い問題であった事に変わりはないのですが、今や『虫が穿孔して出来た虫穴(ピンホール)』すらも『キャラクター』という名の個性として活かせる出口を確立しました(モザイクタイル)ので、怖いものなし!まあそれにも程があるにはあるのですが、気持ち的に虫穴に恐れおののく事は少なくなって、こういう穿孔跡すらなかなか芸術的趣きがあるじゃないかと思える余裕も出来ました。

そしたら、今度はそれすらも商品に結び付けられないかと考えてしまう自分自身に呆れますが、それぐらいの価値はありそうに思いませんか。もうそうな材としての本質でない枝葉の部分で心迷わされずに、本道の活かし方を頑張らんかい、という声も聞こえてきますが、誰もが相手にしないところにこそ実は大きなチャンスがあったりするもの。これがそうだと言うわけではありませんが、ものの見方のひとつとしてそういう視座も持っておきたいということです。木に求められるものも随分変わってきましたから。

従来からの建築資材や家具資材、土木資材、チップなど出口も大事ですし必要だと思っています。しかし弊社のような零細材木屋が生き残って行く道は、そんな華やかな道ばかりではないように思うのです。これはあくまでの1つの例えですが、ものの見方をどこまで変えられるか、ただのゴミにしか見えなかった端材が【森のかけら】に生まれ変わったように、どういう調味料をどのタイミングで振りかけるかで、出来た料理をどの場面で誰に出すかによって大化けするものがまだまだ眠っているはず

補足解説

バークビートル、樹皮下キクイムシと呼ばれる仲間ですね。幼虫が樹皮のすぐ下ーー内樹皮、形成層、未熟な木部ーーを食べます。材の深くまでピンホールを作るキクイムシより被害は少ないです。病原菌を運ぶ一部の種類を除いて、枯れかけてから(伐採してから)産卵→被害が多いです。ケヤキが倉庫に来た時には、樹皮の下で幼虫がせっせと食べていたのではないでしょうか。食痕が独特の模様になるので、磨けば個性になるかもしれませんね。
神戸大学大学院農学研究科 黒田慶子教授)※黒田先生から補足解説をいただきました。




干支にちなんで鳥の話をもうひとつ。昨年末の話ですが、会社の土場に突然カモがやって来ました。近くに池があるにはあるのですが、そこでカモの姿を見たことはなかったので、その池から来たのか、いずこからか目的地を誤って飛来したのか分かりませんが、結構長い時間滞在されていました。ちょうど雨が降っていたので、アスファルトの土場のくぼみにたまった小さな水溜りの中で心地よさそうにくつろがれていました。写真を撮ろうと近づくと、飛んで逃げないまでもトコトコ移動。

 

 

人間にもかなり馴れているようで、人を恐れているようにも見えませんでした。その後も土場の中をあちこち動き回っていたのですが、どうしてある一定の距離を越えさせてはくれませんでした。折角くつろいでいるのに、追い立てるようにするのも可哀想だと、しばらくして気が付いたら姿が見えなくなっていました。スタッフは来年の干支が、やって来たので縁起がいいと喜んでいましたが、まさにグッドタイミングでした。さすがにネギまでは背負ってはおりませんでしたが。

 

 

カモといえば、偶然ですが弊社にもカモにちなんだ商品があります。それがこちらの『ダックエンド』。イチョウ(銀杏)の木で作った11月の誕生木の出口商品です。古い本を食べる虫と知られているシミ(紙魚)という昆虫がいますが、そのシミはイチョウの独特の匂いを嫌うことから、古来からイチョウの葉が栞に使われていました。そういった慣習を元に生み出したのが、イチョウの木のブックエンド。なぜカモなのかというと、それはイチョウの名前に由来しています。

 

 

イチョウの葉の形がカモの足に似ていたことから、昔中国では鴨脚を意味する「ヤーチャオ」と呼ばれていました。鎌倉時代から南北朝時代に日本から多くの僧が中国に渡りましたが、その際に現地の「ヤーチャオ」という言葉を「イーチャウ」と聞き誤ったことから、転化してイチョウになったと言われています。つまり11月の誕生木イチョウが、名前の由来からカモとなり、材の特徴から本を守るからブックエンドになったわけです。もうすぐオンラインショップでも販売開始予定。




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