森のかけら | 大五木材


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今日は植物は植物でも樹木ではなくて草花の話。年末から年始にかけて何度もその名前を耳にしていて気になっていて、いつかきちんと調べようと思っていたのが、地中海地域から中国西部にかけてに自生し、コイナス属又はナス科マンドラゴラ属に属する『マンドレイク(Mandrake)』。『マンドラゴラ(Mandragora)』とも呼ばれるそうですが、ここではマンドレイクとさせていただきます。草花、薬草などに詳しい方には馴染みのある名前なのかもしれませんが私はよく知りませんでした。

何が気になったのかというと、マンドレイクを引き抜くと人のような叫び声をあげて、その声を聞いた者は死んでしまうという伝説!てっきりそういう伝説上の植物かと思っていたら実在するようで、しかもなかなか花が咲かないマンドレイクが(年末か年始?に)淡路島の植物園で花を咲かせたということで話題になっていて、そのニュースを何度か見たのです。花自体は紫色の小さな可愛いものですが、興味はそこではなくて伝説の実証。この植物園では過去にマンドレイクの植え替えをした事があるとか!

え~っ、そんな事して大丈夫だったのかしら!?なにしろ中世ヨーロッパでは、死にたくないのでしっかりと蝋で耳栓をして、マンドレイクと犬の尻尾をロープで結び、遠くに餌を投げて、犬が駆け出すことでマンドレイクを引き抜くという、手の込んだ採集方法をとっていたというのです。それでもマンドレイクの叫び声が耳に入った犬は死んでしまうのですが、そうやって犬一匹の命を差し出してまでも手に入れたかったマンドレイクは、『魔女の薬草』として重宝されてきたのです。

マンドレイクの根には数種類のアルカロイドが含まれていて、古くから鎮痛薬鎮痛剤などの薬草として使われてきました。しかし毒性が強いことから使い方によっては幻覚幻聴などを伴い、場合によっては死に至る危険な植物でもありました。そのため中世ヨーロッパの魔女や魔法使いたちは、しばしば黒魔術錬金術などにも用いられてきました。つまり魔女や魔法使いたちにとって貴重なマンドレイクは、乱獲から守らなければならない秘薬であったのです。そこから伝説は生まれました。明日に続く・・・




まだまだモミジバフウの話です。一時期、【森のかけら】においてモミジバフウが欠品してしまい、慌てたことが信じられないくらいに今は大五木材にはモミジバフウが溢れています。この木の多くが街路樹公園木、校庭木などのため、木材市場に出回ることはほとんどなくて、植栽されたそれらの木が事情で伐採される時にたまたま入手するという形でしか手に入らないので、入る時と入らない時のギャップが激しいのです。【森のかけら】にリストアップしているために供給責任があるので、ある時には少しでも確保しておきたいのです。

それらモミジバフウに限った話ではなくて、街路樹や公園、校庭木については、ご縁があった時には無謀と思えるぐらいのボリュームでもいただいておかないと、次いつ出会えるか分かりませんので、ついつい必要以上に無理してでも確保するようにしています。以前はその出口が【森のかけら】と『モザイクボード』が主でしたので、それだと出ていく量はわずか。結果的に街路樹ばかりが溜まってしまうというバランスの悪い樹種が偏った在庫になっていたのですが、新たな出口開拓でそれも徐々に解消されています。

世の中に使えない木なんて1本もなくて、使えない頭があるだけで、すこしひねりを利かせたり、物語性を付加したり、背景や育ちを掘り起こせば、その木ならではの必然性は必ずあるもの。モミジバフウの中にも形がいびつなモノや大きな節があるもの、虫害を受けたものなど一見すると利用価値の無さそうなものもありますが、削ってグラインダーで耳を磨けば飾り台に変身して、こんなものがと思われるかもしれませんが、雰囲気があって面白いと既に数十枚が売れました。

用途が無いのではなく、用途に気づかないだけと自己猛省。そして当然白カビに覆われたモミジバフウにもそれなりの出口はあるのです。例えば完熟モミジバフウの小口を切断してみれば、そこにはこんな魅力的は表情が隠されているのです。地味で利用価値が無いと思われているモミジバフウの中に潜む『もうひとつのモミジバフウ』、しかしこれが世に出ることはほとんどなく、世にも知られることがありません。私自身まだまだ頭が固すぎる、もっとウルトラC的出口を探さねば~!




私のずさんな管理ですっかり赤カビに侵されてしまったモミジバフウの板。赤カビが繁殖していたのは数枚で、ほとんどが白カビでしたので、全体から見れば被害はごくわずか。折角寒伐りしても後の管理がこれでは無意味なので、いくら一度に大量に入って来たとはいえ、次回の戒めにせねばなりません。湿ったところに長い間放置しているとカビが繁殖して、そしてやがて材としての価値は無くなってしまいます。とにかく製材後はなるべく速く桟積みして、乾燥させることが肝心。あまりにも数が多くてつい油断してしまいました。

白いカビは見た目にはかなりやばそうに見えますが、実際は表面に薄いカビの膜が覆っているような感じで、意外に簡単に除去できます。しかし内部にまで害が及んでいる可能性もあるので、とりあえずそのうちの数枚をプレーナーで軽く削ってみることにしました。そしたらその中の数枚に面白い化学変化を起こしているものがあったのです。それがこちら!それはまるで腐りかけのバナナのよう、いやこれは例えが悪かった。完熟バナナのよう・・・分かりづらいので例えは止めますが材全体が灰褐色に染まり妖しい筋が!?

まさに僥倖!いや、棚からぼた餅!地味でパンチのなかったモミジバフウに思わぬ形で箔がつきました。まあこれをどういう風に解釈するかはひと次第でしょうが、私にとっては嬉しい誤算。なるべく着色はせずに木本来の地の色で勝負したい私としては、こういう形で色がついたり表情が深まることについては寛大なのです。これは面白い~!こういうものを面白がっていただく人は周辺に結構いらっしゃいますので、店舗をはじめいろいろな用途に使っていただけそうです。一枚一枚検品しているからこその出会い。

転んでもただでは起きないというか、この30年近い材木屋の仕事の中で自分なりの物差しが確立できて、いろいろなタイプの大小の『出口』を発見できた証拠でもあります。なんて自分の都合のいいように超ポジティブに考えられるような逞しさ、ずる賢さも身に着けたようです。あれほど恐れた虫害や腐りについても心が寛容になりつつあるのは年齢のせいかもしれませんが。まあこうして結果的に『完熟モミジバフウ』を手に入れることが出来たのです。後はこれがうまい具合に乾いてくれることを待つのみ。




話が脱線しますが、雨風にも晒していた最後の1車分はかなりのダメージがあって、若い頃の私であれば手を付けることもなく廃棄していたかもしれませんが、この四半世紀の大五木材での日々が私を果敢なチャレンジャーに成長させてくれました。明らかに木が腐っている匂いを放つ数枚の板からは、写真のような毒々しい色合いのキノコ(?!)が顔を出していました。キノコの知識はまったくないものの、敬愛する動物研究家の實吉 達郎先生の本で植物に関する毒の怖さを目にしているのでついつい過剰反応!

きっと誤ってこれを食すると映画『マタンゴ』のような姿に・・・!さすがに例えが古かったとは思うのですが、若い学生たちと木の話をする時には、よく映画や小説、歌謡曲などのタイトルなどを、分かりやすかろう、イメージしやすかろうと思って引用するのですが、若い子の映画離れ、小説離れは驚くばかり。いや最近の映画や小説については私よりもずっと観たり読んだりしているんだろうと思いますが、私たちが若いころ知っていた映画や小説、つまり古典(せめて古典的と言おう)には興味が無いようです。

若い人がどうこうと言うよりは、私の方が時代錯誤で例えそのものが古すぎるだけなのかもしれません。もっと最近の映画や小説、テレビドラマなどにも関心を示さねばならないのかもとも思うのですが、特定の固有名詞で木が登場することが少ないように感じるのは、以前にもブログで書いた通り。昔の方が固有名詞として木が必然的に使われていたように思います。木や草花など自然を愛でる日本人の感覚や距離感そのものが変わってきているようにも感じます。季節感を感じることの少ない時代ですから。

さて、これがマタンゴに変身するキノコかどうかは分かりませんが、数枚がすっかり張り付いて剥がそうとしてもビクともしない板を強引に引き剥がしてみると、材面があってはならないような色のカビが繁殖していました!材木屋でありながら、湿った木材の天敵であるカビに対する知識も希薄で恥ずかしいのですが、比較的簡単に除去できる白カビに比べると赤カビは厄介だという事は経験則で学びました。さすがにこれだけカビに侵されてしまうと削っても内部にまでその影響が及んでいると思われます。しかし、そんな中・・・




モミジバフウの板の中から突如現れた拾い物の話の前に、一体どういう風に使っているのかについて。それほど大きな丸太ではなかったものの、雰囲気のある広葉樹として形のいいものや節の少ないものはそのまま棚板やら看板材として使います。問題はそれらよりもずっと小さくて節が大きかったり、乾燥工程で大きくねじれたり暴れたりしてしまった材の始末について。昔であれば私も『建築材か家具材』という物差ししか持っていなかったので、『欠品』あるいは『不良品』扱いして顔を曇らせていたところです。

あれから数十年、伊達に馬齢を重ねてきたわけではありません!むしろそういう板の方が出口探しに燃えるぐらいで、モミジバフウもこうして耳のギリギリまで使い切ります。大きな出口は持っておりませんが、多様な樹種を沢山揃えて、物語を紡いでひとつのシリーズ商品化させるという「技術」を会得してからというもの、本当の事を言えばこの皮とて焼却炉の灰とするのは抵抗があるところなのです。全部を自分一人でするわけではありませんので、どこかで明確な線引きが必要なため泣く泣くここが素材と廃棄とのボーダー。

普通の材木屋と比べるとかなりボーダーラインが低いと思われます。樹皮の裏側付近は虫たちの縄張りで、野菜などで例えると切って捨てる部分です。しかしそこはモッタイナイを社是とする弊社においては、虫食いがあってもカットすれば使えると判断すればより小さなモノの原料として活用します。乾燥に費やされた時間は、上質も杢の部分も虫に穿孔された部分も同じです。使える限りは使えるようにアイデアを絞りださねば、寝床を奪ってしまった虫たちにも申し訳ないことですから。

まあ、ただのケチとも言いますが・・・。とにかく樹皮を巻き込むギリギリまでは使うようにしているのですが、耳部分に味わいのある広葉樹ならでは。そうして再割りしていたらモミジバフウからも脂壺から溢れ出た『ヤニ』を発見。今年何百とモミジバフウの板を割ってきましたが、こういうヤニ(ヤニでいいのか?樹液?)は初めて見ました。こうして自分で小さくカットしたりしているといろいろな発見や出会いがあります。世に木の図鑑は数あれど、実際に自分で加工までした人が書かれている本は貴重、特に広葉樹は。




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