森のかけら | 大五木材


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火縄銃を直しているんだけど樫の木ってありますか?」ちょうどテレビで『麒麟がくる』を放送していたので、NHK関係者から?などと勘繰ってしまいましたが、全然関係なくて松山市内で火縄銃の補修作業をされている方からのお問合せでした。堅牢で耐久性があって粘りがあるので、銃床に使うと言われれば納得なのですが、不意に『火縄銃』という言葉が出て来たのでビックリしました。図鑑などにはその用途に書かれているのを見たことがありませんが、『火縄銃の銃床』というのも立派なカシの出口です。

よくよく訊いてみると、火縄銃の新品を作っているというわけではなくて、昔の火縄銃を修理されているとの事。東京の美術館とか愛蔵家から修理を頼まれるそうなのですが、今は銃刀法で管理が厳しく規制されていて、当時と同じ素材で修復しないといけないそうで、その方はカシの木を求められていたのです。いくらか在庫は持ったいたもののそれが心細くなってきたので、サイトで見つけた近場の弊社に声をかけていただいたのでした。火縄銃って、歴史の教科書で種子島から伝来しましたと習った遠い存在でしたが、まさかこういう形で邂逅するとは。

火縄銃というと昔の小柄な日本人が使っていたのだから小さな銃というイメージがあったのですが、実際は銃床がパーツになっていないので長さも1500㎜必要という事で弊社の在庫では対応できず。しかも柾目の素性のよいもので乾いていないと駄目ということで、九州の樫専門店さんから分けていただきました。銃床の場合は、意匠的に好まれる虎斑(とらふ)は強度が落ちるのでNGだそうです。また材種も仕様によって、アカガシ、シラカシ、アラガシなどを適材適所に使い分けられるみたいなのですが、今回はシラガシでした。

こういう風にその方たちにとっては昔から普通にカシの木を使っていた出口であったのに、その存在自体がマイナーな事から一般的に知られていない事も沢山あると思います。特にインターネットで全国と情報が繋がるようになった昨今では、今までは知らなったような出口と不意に繋がることがあって面白い。しかもその出口が案外身近なところにあったりすると、今まで知らなかった事がモッタイなく思えてしまう。さすがに火縄銃は今後広がっていく可能性は高くないでしょうが、その木ではなければならない出口は大切!




こんなシラカシ、いくら大きくったって使い道なんかありませんよね~?40年以上も阪神タイガースひと筋に応援しているへそ曲がりの偏屈材木屋がそんな言葉をかけられて黙っておられようか~!『神が遣わしてた木の中に使えない木などあろうはずがない。誰も使えぬというのならならばわしが使ってしんぜよう!わしがやらずに誰がやる、いまやらずにいつ出来る!』いつもの展望無き無謀さに火がついてしまったのです・・・さすがに最近はその感情をどうにかコントロールできるような大人になってきましたが。

そういうわけで弊社の倉庫には、具体的には行くあてもないけど気概には溢れているカシたちが眠っています。あくまで天然乾燥で乾かそうと思っているので、彼らの出番はまだまだ先の事なのですが、先月その奥にある材を出す必要があったので、久々に表に出して持ってみましたが、全然乾いてない・・・。まだまだ時間がかかりそうです。勢いよく啖呵は切ったもののカシの出口には迷走していて、乾燥するまでに何か考えねばならないと思っていたら、またカシがご縁も引き寄せて来たみたいで・・・

それまで数年間もカシに声がかかることなどなかったのですが、それから数日の間にカシへの問い合わせがいくつかありました。まあ、たまたまの事なんでしょうが、その出口(用途)がちょっと面白かったので、同じ時期にカシの出口を考えているひとが集まったという事で強引にシンメトリィとしてまとめてみました。まず最初に声がかかたのは、カシならではの安定の出口『太鼓の撥(バチ』。これが全然関係の無い離れた地域から同時期に2個所。いずれも秋祭りに使う予定なのでまだ見積もり段階ですが、タイミングが一致。

音楽には疎いので材質の違いでどれぐらい音色が変わるのか分りませんが、太鼓の撥はについて「カシ」という材質指定で問い合わせが来ることが多いです。乾燥したカシだと厚みが30㎜前後の短かいシラカシを100枚前後はあるのでどうにか対応可能です。ただそれらはねじれや割れが多いので、せいぜい撥ぐらいにしか使えないのですが、さすがにそこまで撥の注文だけ待っていたのでは何年かかるか分らないので、撥以外の出口も考えねばと思っています。ここまではありがちなカシの出口の話でしたが・・・




200種類以上の木を扱っていれば(あくまで種類というだけで量は微々たるものですが💦)、同じ日に全然違うところから同じ木に問い合わせが来るということも確率的にはなんら不思議な事でもないのでしょうが、『ムー世代』のロマンチスト材木屋としては、「こ、こ、これはシンクロニシティ!木の神の見えざる力が発動された~!」などと勝手に盛り上がって、その邂逅を授けていただいた「かけらの神」に手を合わせて感謝しています。今回の巡り合わせは『カイヅカイブキとシラカシとサッチーネ』です!

まずは、街路樹として御馴染みのヒノキ科ビャクシン属の木、『カイヅカイブキ(貝塚息吹』。普段からその立ち姿を見ることは多いのですが、通常木材市場に出材されることは稀なのと、貴重な出口であった「和室の意匠」もほぼ壊滅状態にあって、改めてこのブログを見直してみても、6年目に触れて以来まったく取り上げてもいませんでした。以前は床の間の落とし掛けとか、田舎の大きな家の玄関の飾りなどにも使われていたのですが、出番が無くなりずっと倉庫の奥の方に幽閉状態にあったのです。

それではいかんという気持ちから、この木を使って『森のりんご』も作ってみました。それがこの『イブキのりんご』です。削るとその木肌は淡いピンク色をしていて惚れ惚れするような美しさなのですが、経年変化でその美しさはみるみる失われていき、写真のようなくすんだ赤茶色に落ち着いてしまいます。色止めが出来ればなあと切望する木の1つです。このりんごだって、仕上がった当時はそれはそれは美しゅうございました。しかしこのうつろいやすさの中にこそ、本当の美があるのかもしれません。真実の美は儚さの中にありて目の見えぬものなり。

カイヅカイブキはその立ち姿からも分るようにかなりいびつな樹形をしているので、板に挽いても平面が得にくいので、使いどころに工夫が必要になります。それが「りんご」の曲面の中では、心材の赤身と辺材の白身が混ざり合って得も言われぬ表情を醸し出してくれます。遊び心のある人にはそこがたまらない木でもあり、通好みの木とも言えます。イブキは油分も多くて、「かけら」に加工しても持つと小口がねっとりとする事があります。昔はどうにかしなければとも考えましたが、歳とともにエイジングに寛容になってきました。明日に続く・・・




一体どれぐらいの時間をかけて試し尽くしたんだろうと呆れるぐらいに、さまざまな樹種から個別の特性を引き出してきたのが日本人の暮らし。連綿と継承されてきた「トライアイル&エラー」は時代を追うごとに研ぎ澄まされて、この用途にはこの木でならなければならないというルーティンが確立されてきましたが、それは同時に日本人の情緒が生み出した「木の出口」でもあったと思います。私は木の工業的な指数にはほとんど興味がありませんが、先人たちが育み語り継いできた木の物語は大好きです。そこに木の魅力が詰まっているから。

その物語は遠い昔に大陸から日本に木が伝わって来た時に一緒に伝播した話などに基づくものもありますが、その後日本風にアレンジされてすっかり根付いたものもあります。その用途を更に細分化させてマニアックなまでに活用方法を確定させてきたのは日本人の気質。そのDNAが私にも受け継がれ【森のかけら】を作らせたのだと思います。まあそういう考え方なので、出口を探る際にもヒントにしているのは昔からの用途です。桐といえば中国の古い伝説では、空を飛ぶ竜が天から舞い降りて寝そべった姿が琴になったと言われています

そのため、琴の部位には「竜角」とか「竜尾」、「竜足」、「竜舌」、「竜甲」など竜の名前がつけられています。という事は琴の音色は竜の鳴き声か?そんな竜の鳴き声を聴いてみたいというピュアな発想で作ったのが、『カラコロ木琴』。8角形の台座に10㎜刻みで長さの違う8種類のキリの板をボンドで貼り合わせると完成です。この中に木の玉を入れてクルクル回転させると可愛い音色がします。今までにもホワイトオークヨーロッパビーチなどで作ってきましたが、それらの硬質な木に比べると軟性なキリは軽くて軟らかい音色(竜のささやき)がします。

台座はミズナラですが、これはたまたま台座に合うサイズの短材のミズナラがあったからで、決して大きな材から木取りしているわけではありません。いずれ台座も適サイズが集まったら何種類か樹種を増やそうかと考えています。ボンドで貼って簡単に作れるのでワークショップなどで好評を博しているカラコロ木琴ですが、以前からいろいろな種類の木で作ってみたいと思っていたのですが、少しずつそれ用に貯めていて端材が揃ってきたので、今後いろいろな種類のカラコロ木琴を作って、それぞれの音色の違いを楽しみたいと思っています。




ひと削りしてすっかり綺麗になったキリ(桐)ですが、今回はこれを使ったノベルティのご注文を受けており、桐材を適サイズに木取りしていきます。帯鋸でザックリ荒割して、プレーナーで削っていくのですが、ここで取り上げるのはその主となるノベルティグッズではなくて、それを作るために挽き割った残りの端材。通常ならばこのまま焼却炉の灰となるペラペラの薄板。さすがにこれからは【森のかけら】も『モザイクボード』も作れません。この段階で十分に採算は取れていますので処分しても問題はありませんが、

木材の製麺線について私はこう考えています。例え立派な材があったとしても、こちら側にアイデアがなく活かしきれなればそれはゴミであり、有効なアイデアが見いだせればそれは原料となると。それは端材についても同様で、使える原料にするのか、処分すべきゴミにしてしまうのかは、こちらがどれだけ引き出しあるいは出口を持っているか次第。このサイズだと『ストラップ』として有用ですが、現在その在庫はたっぷりとあるので、別の出口に使ってみようと思います。これを集めて丁寧に小割してサイズを揃えていきます。

それで作ったのがこちら。幅40㎜、厚み5㎜、長さは80~150㎜の8種類。小割した端材で取れるだけ取りました。ここまで短いものまで取り切ると、さすがにこれで残ったものには未練はありません。キリは非常に軟らかい木なので、建築用材としてはなかなか使いどころが少なくて、家具だと引き出し内部などに用途はあるものの、それもある程度のサイズ感が無ければ、あまりに小さな材だと使いづらい。有名な用途である下駄や琴は専門性が高すぎて弊社からは結び付かないので、軟らかい性質を活かせるキリならではの出口が見いだせるかどうか。

それでもヒントとしたのは、やっぱり。音楽はもとより楽器についてもまったく知見を持ち合わせはいませんが、昔からその素材に選ばれているぐらいだから音の響きが素晴らしいのでしょう。よく「それぞれの木の特徴を活かした出口を見つけたい」と言っていますが、それは決して斬新なものということだけでなく、昔から親しまれてきた使い道を今風にブラッシュアップさせたり、少し何かを付け足したりするということでもあります。なにしろ先人たちはもうこれ以上は出ないだろうと思われるほど材の特性を絞り出していますから。続く・・・




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