森のかけら | 大五木材


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今日のかけら 番外篇・E054  【スローネア  Sloanea   ホルトノキ科・広葉樹

本日はは久し振りにパプアニューギニア(PNG)産のM.L.Hシリーズ第5弾。アジアおよびアメリカの熱帯などにおよそ120種ほど分布するといわれるホルトノキ科の『スローネア』です。実際に目にするのは初めて。『スロアネア』とか『スロー二ア』とかも言われますが、ここでは『スローネア』に統一させてもらいます。材に挽いた時の印象としては、いかにも南洋材という感じで、この木ならではの強い個性があるというわけではありませんが、柾目の中にはリボン杢が現われおとなしくて癖は少なそう。

検数協会の検量明細では『スローネアレッド(Sloanea red』となってましたが、製材直後はまだ水分が抜けきっていないので写真のようにやや赤身を帯びています。水分が抜けてくると手前のように灰褐色のような色になってきます。レッドではないスローネアを知らないのですが、ホワイトオークやブラックチェリーなどのように樹名に色の名前がつく場合、材の色調そのものを示している以外にも、類似する木材と判別するためにつけらている(レッドに対するホワイトとか)、材ではなく木の実の色からきているケースもありますが、スローネアはこの色調が由来かも。

仲間が120種もあるということで、気乾比重は0.45~0.80と幅があるようですが、板にした直後でも乾燥後の軽さが予感できます。今回仕入れたパプアニューギニアの丸太は、初めて見るものも多いので乾燥したらどうなるかも知りたいので、一部は早めに乾燥機に入れてみました。スローネアは大きく暴れたり、ねじれや割れが出ることもなく上手く乾いてくれました。乾いた板をもってみた感覚としては、同じ南洋材のアガチス(0.52)並みでかなり軽く感じられました。乾燥機に入れてないスローネアも想像以上に乾燥スピードが速く、これだと天然乾燥でも結構乾きそうです。

とにかくパプアニューギニア(PNG)産のM.L.Hについては、その木のどういう性質でどういう特性がありどういう用途に適しているのか試行錯誤。文献に乗っているような抽象的な説明ではなく、肌感覚でその実態を知りたいのでなんでもかんでも実証。小さな板にしては削ってみたりオイルを塗ってみたり、ルーペで小口を見たりと自分なりにデータを収集しています。スローネアのように癖の少ない木は装飾的価値は低くとも、寸法安定性を求められる用途には適していますし、クラフト細工や室内看板、箱材などにも有用そうで、思わぬ拾いものになるかも?!




今日のかけら 番外篇・E053  【バカタ】  Bakata   アカリア科・広葉樹

ここで取り上げるにはもう少し先の予定だったのですが、パプアニューギニア産の木材が各地で出回るようになってきて、昔から温めていたキーワードが先に使われてしまいそうになったので、リスク管理を考えてここらで登場してもらうことにしました。若い頃に全日本検数協会が発行している『新輸入原木図鑑』を何気に読んでいたら、衝撃の樹名が飛び込んできました!私を釘付にしたその名は『バカタ(Bakata』!見たこともないバカタの木はそれからずっと私の心の中でムクムクと肥大化していったのです。 20210724 1

20210724 1 それが日本語ではないと分かってはいても、その木の背景には『天才バカボン』のパパの顔がうっすらと浮かび上がってきてしまいます。嗚呼、愛おしきバカタ!そしてその頃思い浮かんでいつかどこかで使いたいと思っていたキーワードがあります。それが本日のタイトルにもしている「そんなバカタ!?」。最適なシュチエーションとしては、バカタ材の前で値交渉をしている時に先方がとんでもない値段を言った時に驚きの表情とともに叫ぶというもの。

それから幾年月、神はまさに奇跡のような舞台を用意してくれたのです。パプアニューギニアのL.M.Hの原木の商談の最中の出来事でした。検数明細には樹種名はアルファベットで略して書いてあります。それが何の木を現わしているのか、原木商社の担当マンからその説明を聞いていた時の事。「LTはリトシアです。GOはゴルドニア。TRIはトリッチャデニアです。あ、バカタですね。SLRは・・・。」な、な、なんと~!?あまりもサラッと言い流されてしまったので20数年来待ち望んでいた千載一遇の大チャンスを逃してしまったのです(涙)。

さすがにショックで、その後も周囲には聞こえないようにマスクのなかで「そんなバカタ!?」を繰り返し繰り返し呟いていたのです。ところでこの名は主にインドで使われる呼び名のようで、市場などでは学名のトリッカデ二ア(Trichadenia philippinensisに由来する『トリッチャデニア』とか『トリカデニア』の名前で呼ばれているので、この木をバカタと呼ぶ人の方が稀ですが、弊社ではもちろんバカタの名前を優先的に使います。丸太は買ったもののまだ本格的に製材しているわけではないので、材質などについてはまた改めて。

蛇足ながら、愛すべき『天才バカボン』について。アニメとは違い漫画の『天才バカボン』の晩年は作者である赤塚不二夫の毒気が溢れ出しタッチもシュールになってストーリーは破綻。あまりのカオスっぷりに当時純真だった私はついていけなくなりましたが、今になって読み返すと長期のスランプから迷走し酒に走ってもがき苦しみながらも絞り出した鬼才の魂の叫び声が胸に響きます。アニメでは植木屋と設定されてしまったパパの職業ですが、本来はその名の通り無職(バガボンド=放浪者)で、「これでいいのだ」と人生を達観した作者同様に永遠の自由人でした。 20210724 5




現在、国内外240種の木材標本『森のかけら』を400種にすべく奮闘しているところですが、日一日と樹種数は増えていっています。商品の完成には越えなければならない課題が多くてまだもう少し時間はかかりそうですが、確実に1歩ずつ頂きに近づきつつあります。ところで『森のかけら』は35㎜角のキューブで、例えそれが100個集まったとて、木材のボリュームとしては微々たるものなのですが、都合よくそれが取れるだけの端材が数百種も集まってくるわけではありません。しかも今集めている樹種は、かなりマイナーで知名度の低い木ばかり。

そんな木を集めわけですから、こちらの都合や思惑通りにはいきません。35㎜角のキューブを得るために、長さ10数メートルもある原木を買うことだってあります。もちろんそれをすべて35㎜角のキューブに加工するわけではありません。ある程度硬質な木であれば、カウンターやテーブル、造作材などに活用して、残った端材の一部をキューブにするだけです。なので問題は、キューブを得た残りをどうするか?いや、問題の本質が逆転してしまっています。本来であれば、使用目的があって仕入れた端材でキューブを取るべきなのでしょうが、それでは永遠に目的は達せない。

400種すべての木に、絶対にこの木でなければならないという明確な出口など存在していないからです。そこで、考えなければならないのは続々と集めってきている100数種類の木たちの『本来の命題である出口探し』。といったってそんなものがすぐに見つかるわけではありません。しかし、さまざまな木が集まっている光景を見ているだけ心はものすごく満たされるのです(笑)。個別出口に関してはさぐりさぐり考えていくとして、とりあえずいつもの『ワンスペックを多樹種で作る商品』の実践。三本脚のモザイクスツールの座面だけいろいろな木で作ってみました!

とりあえずパイロット版として作ってみたのが、ゼブラウッド(アフリカ産)、ホルトノキ(愛媛産)、クリ(北海道産)、ニガキ(岐阜産)、オリオモ(P.N.G産)の5種です。脚材はすべてブラック・ウォールナット(北米産)。サイズなどの微調整をして、仕様が決まったらこれを400種の木の出口の1つにしてみたいと考えています。まだ名称は決まっていませんが、「座面は400種の中からお好きなものを選べます」と言ってみたい!しかしそうなると常に400種の在庫を置いておかねばならないという別の問題が起きてくるか・・・多樹種の悩み尽きまじ。




今日のかけら番外篇・E052【オリオモ】Oriomo   ツバキ科・広葉樹

魅惑のパプアニューギニア産材第3弾。本日ご紹介するのは、ツバキ科の広葉樹『オリオモ(Oriomo)』。初顔です。いろいろな文献を調べてみましたがほとんど資料がありません・・・。これもいわゆるM.L.Hの木として日本に輸入されて、「樹種は問わない」という事で名前も明記されずに流通されている木の1つです。自らの手でこの木の特性や可能性を切り拓いていかねばなりません。30余年の材木屋としての経験と自分の感性が頼り。とりあえず板には挽いてもらったので、乾燥工場に送って乾かしてもらうことにしました。

乾燥についても手探りで、どれぐらいの温度でどれぐらいの期間乾かせばいいのか試行錯誤の繰り返し。乾燥についてはいつも愛媛ドライウッド(株)さんに持ち込んでいるのですが、石井和典工場長がほぼデータの無い新顔の木材でも厭わずにトライしてくれるので非常に助かっています。強制乾燥によってどれぐらい収縮や反り、ねじれ、割れが発生するのかまったく分からず、リスクも高いのでそれぞれの樹種を少しずつ抜き出して試しています。持ち込んでからおよそ半月ほど経って、オリオモが大五木材に帰還しました。

わずかな手がかりとして、ある文献に気乾比重0.64というデータがありましたので、それほどたくはないだろうとの見当はつけていましたが怖いのは割れや反り、ねじれ。乾燥する際には最上部に重しを乗せる圧締乾燥をしていますが果たして!?わずか1本の丸太のしかもその一部をもってして、その木のすべてが分かったような事を言うつもりはありませんが、とにかく机上のデータではなく、実体験、体感した生の記録を残していくことこそが、生きた教材、触れる教材『森のかけら』の作り手としての使命だと考えています。

乾燥による表面割れ、反り、ねじれはほとんど見受けられませんでした。生材の時の見た目では、かなり割れて戻ってくるだろうと覚悟していたので拍子抜けするほど。削ってみると本来の色がハッキリ確認できましが、私の印象ではアカテツ科のモアビに近い見た目。一部柾目に挽いた中に面白い虎杢が全身に現れていますが、これもたまたまなのかこれが特徴的なものなのかは不明。Oriomo redwoodと記してある文献もありましたが、その名の通り心材は灰赤褐色で辺材はやや淡い色調モザイクボードにしろ色味の濃い木は大歓迎なのでこういう木はありがたい。これからは塗装もしてみて実際に使ってみながらデータを収取していこうと思っています。




本日はパプアニューギニア(P.N.G)産の2種類のニューフェイスを仕分け。【森のかけら400】に向けて意図的に、今まで扱った事の無い木を集めてはいるのですが、日々初見の木に出会えるのは楽しいものです。恐らく【森のかけら】を作っていなかったら知ることも出会うこともなかったと思います。今回はこの木がある現場で使えるかどうかを調べるために、買っている原木のそれぞれ一部を1mほど製材して板にしてもらいました。手前が『クリプトカリヤ』、奥が『キソケトン』。

いずれも名前だけは知ってましたが実際に触るのは初めて。高級銘木とかいうわけではありませんが、初めて見る木はどんな木だっていつもドキドキなのです。ほとんどデータが無い木なので、実際に触って削って重さや質感を確認。それぞれの木については、この体験をもとに後日『今日のかけら』にて解説しますが、なかなかこれといった特徴が見当たらないのが難しいところ。たぶんこれも慣れだと思うので、毎日南洋材ばかり見ていたら、わずかな差でも違いが見えてくるのかもしれませんが、経験値が低いので苦戦中。

それでも弊社で再割製材直後は、まだ表面が瑞々しくて匂いもあるので個体として認識できるものの、水分が抜けていくと途端に表情から水っ気が失せて、どれも似たような灰褐色になって個性が埋没してしまいます。そこで大切になってくるのが、割り返したらすぐに小口にマジックで名前を書き込むこと。これを怠けてしまうと常陽な手がかりを失うことになり、そうして『かけらの迷宮』に堕ちていった木も数知れず。今回は再割直後は結構違いがハッキリしていたのに、夕方になるとどっちがどっちか見分けがつかない。

実は今回P.N.G産のM.L.Mの原木を10種以上買っているのですが、どれもこれもほぼ初物なので製材した板になった状態ですぐに小口に名前を書いておかないと大変なことになります。1種類ずつ順番に挽いてもらって、すぐに整理して名前を書いていますが、1本の丸太が孫悟空の分身の術並みに未知の木が大増殖!少しでも油断すると正体不明の木が溢れることになります。まだ未乾燥の木材に書くのでマジックもすぐにダメになる。ビーバー材木屋には大量のマジックが必須アイテムなのです。




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